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ポニーテールの勇者様  作者: 相葉和
92/206

092 サラの願い

アキムは自らの命を代償に巨大火の玉を消し去ってくれた。

ニューロックの危機も消え去ったが、代わりにアキムを失った悲しみだけが残った。


・・・私にもっと力があれば。

何が勇者よ。

まるで力が及ばなかったじゃない。

アキム様にもまだたくさん教わりたかった事があったのに。

もっと麻雀も打ちたかったのに・・・


わたしの力不足でアキムを失った事が悔しくてたまらなかった。


だが、そんな後悔や感傷に浸れる時間はすぐに無くなった。


「ユリよ!最悪じゃ!」

「グスッ・・・どうしたの、ディーネちゃ・・・」


顔を上げ、ディーネに向き直った瞬間、血の気が引いた。

ディーネの言わんとしていることはすぐに分かった。


視線の先、ディーネの向く北の空に、再びあの巨大な火の玉が飛来してくるのが見えた。


「なんでよ!さっきので終わりじゃなないの!?そんな・・・」


もう送還の魔道具はない。

アキムもいない。

どう考えても今度は防ぎようが無かった。


「もしや、グレースの旗艦にある魔道具がまだ生きているせいかもしれぬ。しかし船は既に海の底じゃ。探して破壊せねばなるまい」

「でもその間に火の玉がニューロックに!」

「無論わかっておるのじゃ。しかしこの場合、先に魔道具を止める事が先ではないかの。被害を最小限に止めるために」


ディーネのいう事は正しい。

更なる追撃を止めたほうが被害は広がらない。

ただ、一発でも喰らえば甚大な被害は出るだろう。

もしかしたら、二発目など不要なほどに致命的なダメージになるかもしれない。


「わかったよディーネちゃん。今すぐ海に潜って壊しに行こう」

「待ちなさい」

「サラちゃん?」


再びサラに止められた。

さっきはアキムを追おうとした時に、今回は海に潜ろうとした時に、再びサラに立ち塞がれた。


「サラちゃん、今度は何よ!今度ばかりは・・・」

「ユリ。私を支配なさい」

「許さ・・・はい?」


サラの唐突な提案に一瞬思考が停止してしまった。


「だから力を貸すって言ってんのよ。私を取り込みなさい」

「えと、だったら普通に協力してくれれば・・・」

「私はユリに負けていない。だからユリには協力しない。だけど支配されたら命令には従わなきゃいけない。仕方ないから力を貸すのよ」


・・・ああ、そういえばめんどくさい子だったっけ。


「それに、アキムが言ってたわ。ユリは自らの魔力の核が無いから親和性が高いって。今も水の精霊の核を取り込んでいるのでしょう?」

「ええ。そのお陰で魔力が使えているわね」

「私を取り込む事で、さらに強大な力が使えると思うわ。失敗したらユリの身体が耐えきれずに身体が弾け飛ぶかもしれないけど、多分大丈夫でしょう」


何それ怖いんですけど!


「・・・ユリ、今はもうこれしか手がないのよ。お願い。アキムの死を無駄にしないで」


サラは泣き顔と笑い顔の中間くらいの表情で私を見ていた。


・・・そうだね。

アキム様の死を無駄にしたくないのはわたしも同じだ。


「分かったよ、サラちゃん。真の名を教えて」



アドルはニューロック艦隊旗艦の艦橋から空を見上げていた。

上空を飛来した巨大な火の玉が突然消失したと思ったら、再び北の空に火の玉の出現し、艦橋にいたクルー全員はその光景に戦慄していた。


「ユリかアキム様が大魔術か何かで対抗しているのかもしれない。どのみちオレ達ではあの火の玉はどうにもできない。だから信じるしかない」


アドルが艦橋のクルーにそう声をかけた。

クルー達も神妙にうなづくが、全員顔色は悪かった。


「アドルさんは心配ではないのですか?」


アドルは顔色の悪いクルーの一人に声をかけられた。


「もちろん心配だよ。あんなものがニューロックに直撃したらとんでもない被害になるだろう。だけど・・・」

「いやいや、ニューロックの心配はもちろんですが、勇者殿の事です。アドルさんの恋人なのでしょう?」

「なっ!えっ!?違う違う!」

「誤魔化さなくても良いのですよ。ですのでアドルさん。行ってください。こちらは大丈夫です。勇者殿の元に行ってあげてください」


アドルが艦橋を見回すと、クルー全員が同意の顔で頷いていた。


「しかし・・・」

「ふむ、アドル殿。では私から艦長命令だ。

勇者殿の元に駆けつけなさい」


旗艦の艦長がアドルにそう言って笑顔を向けた。


「こんな時に艦長命令なんて言い方、ずるいですよ・・・」


アドルは頭を掻きながら、艦長の命令を承諾した。

そして艦橋を飛び出し、格納庫からラプターに乗ると、ニューロックを目指して飛び立った。



「ふー。取り込み完了!サラちゃん、どう?私の声、聞こえる?」

(ええ。良好よ。なるほど、こんな感じなのね)


わたしはサラから真の名を聞き、王都でディーネを取り込んだ時と同じようにサラを取り込んだ。


・・・身体が弾け飛ばなくて良かったよ。


(さ。とっととグレースの旗艦にある魔道具を潰すわよ)

「うん、わかった。えっと、ディーネちゃん。まずはグレースの旗艦が沈んだ場所を探そう」

「ユリがサラを取り込んでいる間に海中を走査してもう探しておいたのじゃ。サラちゃんの魔力も借りられれば、海流を操作して敵の旗艦を海上に押し上げる事ができよう。かなりの時間短縮になるのじゃ」


わたしはその提案に頷くと、ディーネの羽根に触れ、魔力のパスをディーネに繋いだ。

そしてディーネは海に向かって魔力を放出した。


「ほほう。これは凄いのじゃ」


私からディーネに流しこんでいる魔力量は相当なものらしい。

水の精霊の魔力も破格なのに、さらに大精霊の力がもうひとつ増えたのだから当然だろう。


やがて海面が揺れ出し、大きく波を打ちながら、グレースの旗艦が目の前に引き摺り出された。

二度の沈没で船体の損壊をさらに増やしている旗艦は、まるで幽霊船のような風貌だった。


「ユリよ、魔道具は艦橋じゃ。そこに禍々しい魔道具の反応がある。間違いないじゃろう」

(ユリ、そいつを破壊するわよ。風の刃を使いなさい)

「分かった!」


かつてわたしが水の精霊を取り込んだ時は、まだ魔力の使い方がよく分からなかった。

だけど今は魔力の使い方の研鑽を重ね、魔力の使い方が分かっている。

風の精霊の御力を使うのは初めてだけど、すぐに風の精霊の核を感じ取れたし、感覚だけで使い方も分かった。


・・・さて、艦橋といっても、艦橋のどこに魔道具があるか分からないから、いっそ細切れにするかな。


「風の刃!」


わたしは右手を伸ばして掌を艦橋に向けた。

そして掌の前に、薄く大きく広がる刃を何十層も出現させた。


某バトル漫画で、主人公の親友の『地球人の中では最強』と言われている頭ツルツルの人が使う『気のカッター』を多重に展開したイメージだ。

イメージ通りに魔術が展開できたことを確認し、全ての刃を艦橋に向けて放った。


風の刃は次々と艦橋を切り刻み、その都度大きな破壊音と共に、爆発を引き起こした。

そして、とりわけ大きな爆発音が響くと、ディーネが言った。


「ユリよ、魔道具を破壊したようじゃ。こちらはもう良いじゃろう」

「分かった。ありがとうディーネちゃん」


・・・よし、次は火の玉だ。


北の空を見ると、巨大な火の玉は先ほどよりも大きく見えていた。

まだニューロックよりも離れているが、だいぶ近づいてきてはいるようだ。


(ユリ、なるべくニューロックから離れている所で迎撃するわ。火の玉に向かって飛びなさい)

「分かった、ラプターで向かうね!」

(は?あなたは風の精霊を取り込んでいるのよ。自力で飛びなさいよ)

「え!わたし飛べるの?」

(体の周りに気流を起こして、風と一体になりなさい。そうすれば風に乗って飛べるわ。全く、いちいち世話がやけるわね)


・・・サラちゃん、調子を取り戻してきたかな?

そのほうがサラちゃんぽくていいけどね。


わたしは身体の外側に風を纏って飛ぶイメージで魔力を放出すると、フワッと身体が浮いた。

後は魔力のコントロールで飛び先を調整すれば良さそうだ。


「おお、飛べるわ!わたしは自由ね!」

(私は不自由になったけどね。後で依代をよこしなさいよ!)


もしかして新しい依代が欲しかったのが真の狙いだったりして?

実はディーネちゃんの依代がちょっと羨ましかったとか?


サラの性格ならありえそうだなとか思いながら、わたしは飛行魔術のコツを掴むと、火の玉に向かって真っ直ぐ飛び立った。


「アキム様のためにも、絶対潰す!」



じわじわとですが、見てくださる方が増えてきたように思います。

レビュー、ブックマーク、評価、誤字指摘などいただけると大変励みになります。

よろしくお願いいたしますm(_ _)m

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