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ポニーテールの勇者様  作者: 相葉和
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064 勇者の象徴

建国の準備が始まり、三日が過ぎようとしていた。

私の建国の挨拶はまだ完成には至っておらず、エスカと一緒に魔道具の作成を手伝ったり、館で合流したミライと一緒に魔力操作の練習をしたり、ノーラと試合をしたりして、合間に少しずつ考える事にした。

・・・気分転換している時間のほうが長いけど。


今日はミライと一緒に、館の中庭で魔力の練習をしていた。

一息ついたところで、ミライに質問された。


「ユリお姉ちゃん、勇者のお仕事って何をするの?」

「うーん、よく聞くのは、みんなに勇気を与える事と、悪い奴を倒す事がお仕事かな」

「この髪型が勇者の印なんでしょ?」


ミライが太守の館に来てからは、ミライも髪型をポニーテールにしていた。

金髪がフリフリしている様子はとても可愛らしい。


なお、ミライだけではなく、アーガスの女性クルーや、館の使用人の女性の間でも、ポニーテールが流行り始めている。

髪の毛の長い男性でもポニーテールにする人が出始めたが、剣を持っているとまるでお侍さんのように見えた。


エリザは短めの髪なのでポニーテールには出来ないが、エリザが言うには『ポニーテールは国の象徴となり、いずれ勇者の印のようなものになるかもしれない』と言っていた。

髪型ひとつで大層な事である。


「髪型は人それぞれ自由だよ。想いを込めるのも人それぞれだけど、この髪型にしなくてはいけない、なんてことは絶対に無いからね」


ふと、私が殴り飛ばしたハゲ上司のことを思い出した。

物理的に難しい人もいるもんね。


念のため、『国民全員がポニーテールにしなくてはならない。ポニーテールで無いものは非国民である』なんて事にはならないように、後でカーク達に釘を刺しておくことにした。


「ミライはユリお姉ちゃんとお揃いにしたいから、この髪型が好きなの!」

「そうなのね。わたしも嬉しいわ」


・・・あれ?皆に髪型を強制するなんて事は論外だけど、わたしがポニーテール以外の髪型にするのは、なんとなく駄目じゃない?

まあ、他の髪型にするつもりはないからいいんだけど。


そもそもこの髪型は、そろばんをする時、太極拳部で練習をする時、仕事をする時、朝寝坊して髪をまとめるのがめんどくさい時など、短時間で合理的に邪魔にならないように纏められるので、好んでしているのだった。

チャームポイントだと考えた事も無かった。


欠点としては、頭をブンと振った時に隣にいた人にポニーテールがパシっとぶつかって文句を言われる時があるのと、纏める時に髪を引っ張り過ぎると時間経過と共に頭痛がしてくる事ぐらいだろうか。


「ユリ!」


その時、アドルが中庭にやってきてわたしを呼んだ。

私に用事があるのだろうか。


「ユリ、ごめん。ちょっと付き合ってくれないか?」

「アドル、まだユリお姉ちゃんと付き合ってないの?」

「ちょっ!ミライちゃん!?そういう意味ではなくてね・・・」


ミライちゃんは相変わらずアドルを呼び捨てだ。

アドルは苦笑いを浮かべている。


「そんなだらしがないアドルにユリお姉ちゃんは任せられないの」

「勘弁してください、ミライちゃん・・・」


・・・もしかしてミライは、わたしがアドルに取られる感じが嫌なのかな?

だから、アドルに辛辣なのかもしれない。

大好きな姉が、家に彼氏や結婚相手を連れてきた時の妹の感情、みたいなやつかな?

ふふっ、なんかかわいい。


でも、このままだとアドルがかわいそうなので、助け舟を出す事にした。


「それで、アドル。わたしに何か用なの?」

「ああ、ユリ(助かった・・・)。カークさんが呼んでる。ディーネも一緒に来てくれ」

「分かったわ。ミライちゃんも一緒で大丈夫かな?」

「んー、そうだな。一緒でも構わないかな」


ミライも同席してよいならば、おそらく軍議ではないのだろう。


わたしはミライとディーネと一緒に、カークの待つ応接室に向かう事にした。



「カークさん、ノーラお姉ちゃん、ごきげんようなの!」

「やあ、ミライちゃん。ごきげんよう」

「ミライ殿、ごきげんよう」


ミライはこの館でもすっかり馴染み、皆から可愛がられていた。

ノーラも優しい顔でミライの頭を撫でている。


ミライの挨拶にほっこりしたところで、カークが話を始めた。


「エリザから聞いたが、ユリはロップヤードの爺さんに会いたいそうだな」

「ロップヤードの爺さん、ですか?」


説明によると、ロップヤードは、ニューロックの北東にある島の事だそうだ。

地球の地理でいえば、ニュージーランドに該当する?

いや、ケアンズ付近から北東ならば違うか。

それに、ニュージーランドはオーストラリアの隣りだけど、そこそこ距離があったはずだ。

この星が地球のミニチュアサイズとはいえ、船でちょっと行ってくるというような場所ではなかったように思う。

まあ、私は地球の地理をしっかり覚えている訳ではないし、答え合わせはやめよう。


ん?答え合わせ?


「その爺さんというのは、もしかしてあの最終問題の?」

「そうだ。その爺さんだ」


叡智を持ち、この星の成り立ちについても知っているという、お爺さんの事だと理解した。

その人に会って、この星のことについて聞きたいと思っていた。

このミニサイズの地球が一体何なのか、わたしは知りたい。


「その爺さんと話をするならば、今がちょうどいいかもしれん。こちらの準備はユリ無しでも進められるからな」


なんかいらない子みたいな言い方が引っかかるが、そんなつもりで言っている訳ではない事は理解している。


「領地の船を出すので、行って話をしてみるといい。ついでに問題の答え合わせもしてきてくれ。俺も回答が分からなくてずっとモヤモヤしているからな。それに、もしも御仁の協力が得られるならば、建国に大いに弾みがつく」


必要ならば、お爺さんに建国の話をしても良い、と言われた。


「分かりました。お言葉に甘えて行ってみたいと思います」


ロップヤードには、アドルとノーラも同行してくれるらしい。

わりと安全な島だそうだが、魔獣がいない訳ではないそうなので、護衛に付いてきてくれるとの事だ。

メンバーも決まったし、あとは行程、と思ったところで、ミライがビシッと手を上げた。


「はい!ミライも行きたいです!」

「ミライちゃん!?」


ミライがカークとわたしを交互に見る。

連れて行ってほしいと目が強く語っていた。


「ふむ。アドル殿、ノーラ、どうだ?」

「オレは構いません」

「ミライ殿は師匠の大切な妹分です。必ず私がお守ります」

「よろしい、許可する。ミライちゃん、一緒に行っておいで。ただしお父さんの許可もちゃんと取りなさい」

「わかりました!」


決めるのはやっ!

まあ、危険は少ないらしいからいいか。

ノーラとアドルもいるし、ミライちゃんはニューロックに着いてからほとんどお留守番状態だったし。

ちょっとした旅行気分で楽しんでもらおう。


ちなみに体調不良から復活したルルは、エスカの助手として嬉々として働いている。

エスカのやる気に圧倒されることなく、エスカの手伝いができることを存分に満喫しているようで何よりだ。


「三日ほどで戻ってくるといい。朗報を待っている」


カークからもらった期間は三日間(延長あり)。

わたし達は明日の朝一番で、ロップヤードに行く事になった。


わたしが地球に帰れるのかどうかを知るためにも、この世界の歴史や成り立ちについて必ず聞いてこなきゃ。


「ところでカークさん。ロップヤードには、ウサギはいますか?」

「ウサギ?魔獣か何かか?」

「えーと、耳が長い動物で、小さくてモフモフしています。もしかしたら耳は垂れているかもしれません」

「いや、そんな動物は聞いたことがないな」


語感的にウサギがいそうな気がしたが、やっぱり関係なさそうだった。

ちょっと残念だ。


それはともかく、カークにもう一つ言うことがあった。


「あとすみません、カークさん。最近、このわたしの髪型が流行っていると思うのですが・・・」

「ああ。『ポニーテール』と言ったな。館内では既にその髪型にしている者をよく見かけるな。動きの邪魔にもならないし、長髪の騎士にも好評だ。兜に穴を開けてそこから髪を出す案も出ていると聞いた」


そこまで!?

髪を引っ掴まれる危険とか考えなくていいのかな?


「その髪型ですけど、念のためですが、強要するようなことはしないでくださいね。考えすぎかもしれないですけど、『ポニーテールにしていないやつは非国民だ』みたいな風潮にはならないようにしてください」

「ふむ・・・まあそうだな。国章にユリ殿の横顔と髪型を意匠したとは言え、これはあくまでユリ殿の容姿だからな。ユリ殿がそう言うのであれば、髪型を真似をするのは構わないが、変な風潮が出ないようには取り計らうことにしよう」

「ありがとうございます、カークさん」


これで一安心だ。

無理して同じ髪型にしようとする必要なんて無いし。


その時、副官のスポークがカークに進言した。


「太守。そうなると、例の販売計画は一度白紙にしたほうがよろしいのでは?」

「ああ・・・そうだな。考え直すとしようか」

「例の販売計画ってなんですか?」


わたしが聞くと、カークが言いにくそうに説明した。

なんでも、建国宣言と国章の公開に合わせて、ポニーテールの付け髪を大量に作って販売しようとしていたらしい。


「それではポニーテール化の強要を助長するような事になるじゃないですか!ダメですよそんなの!」

「いや、まあ、そこまで考えていたわけではないのだがな。国章と同じ髪型にしたいという人の為にと思ってな・・・」

「却下です」

「うむ。白紙にすることにしよう」


危うく、全国民がポニーテール化されるところだった。

先に言っておいてよかった・・・


0時に次話投稿します。

じわじわとですが、見てくださる方が増えてきたように思います。

レビュー、ブックマーク、評価、誤字指摘などいただけると大変励みになります。

よろしくお願いいたしますm(_ _)m

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