049 新しい武器
発掘作業も残すところあと三日となった。
ここからは武器の量産体制に入らなければならない。
「しかし、ラファルズを作るための魔石が少なく済むおかげで、魔石が余りそうなんだよね。せっかくだから他にも武器を作ろうか」
「他の武器ですか?」
作業小屋で黙々と魔石回路のモジュール作りの手伝いをしているわたしに、エスカが唐突に提案をしてきた。
ちなみにラファルズとは、今回開発したファルズの改良版の名前である。ファルズと区別をつけるために、新しい名前が付けられた。
ちなみに最初は開発者名をつけて『ユリファルズ』と名付けられそうになったので、断固拒否した。
語呂も悪いし。
「飛び道具以外にも、剣、盾、あと何か便利なものが欲しいかな」
「最後はなんか漠然としてますね・・・」
ふむ。剣か。
剣も刀も、実戦で使うような話は、時代劇やファンタジーのお話の中でしか見た事がない。
『日本刀は斬るためのもの、西洋剣は切れ味は悪いけど、丈夫なのでぶっ叩くもの』という話を聞いた事はあるけど、実際のところは知らない。
そういえば、昔のパソコンゲームの某ダンジョンRPGに出てくる、ものすごくかっこいい名前の武器が、実は剣ではなく、フードプロセッサーの刃をイメージしていたと聞いた時には笑ってしまった。
それはさておき。
王都の城でバルゴや警備兵達が腰からぶら下げていたのは剣だったと思う。
西洋剣かどうかはともかく、剣も魔道具なのだろうか。
「この世界の剣はどんな感じなのですか?」
「普通の剣だよ」
いやいや、普通がわからないのですが・・・
「えーと、例えば、切れ味が良くてスパっと切れるとか、そんなに切れ味は良くないので刺すか、叩きつけるようにしてぶった切るとか、そういうのはどんな感じでしょう?」
「両方あると思うから、使う人次第かなあ?」
・・・あまり参考にならなかった。
まあ、どちらの場合もあるって事ね。
「剣は魔道具ではないのですか?」
「魔道具の剣もあるにはあるね」
魔力で切れ味を良くしたり、重さを軽くしたりするらしい。
ただ、そういう剣は高いらしく、わざわざお高い武器を使うよりも、身体強化の魔道具などで自分の筋力を高めるほうが一般的なのだそうだ。
「ユリの世界の剣はどうなの?」
「わたしの世界では剣を日常で使わないですからね。せいぜい『漫画』や『アニメ』の架空のお話で・・・」
あ、そうか。
ここってファンタジックな世界じゃん。
であれば、アレが作れるかも?
わたしはあれこれと考えを巡らせて、魔法剣っぽいものを連想した。
「レーザーブレ・・・いや、ライトセイ・・・いやいや、ビームサー・・・」
「うふふっ。ユーリちゃん」
あ、わたし、エスカにロックオンされた?
考えに没頭するあまり、連想したものが独り言で口から自然に溢れ出てしまったのを聞かれてしまったようだ。
とりあえず『レーザー剣』改め『魔力剣』について、ざっくり説明する。
わたしだって本物を見た事があるわけではない。
もともと、アニメや映画の中だけの話だ。
「つまり、刀身自体は無くて、魔力で作った刃を出現させて、剣のように振るうのか。なるほど、その発想は無かった!」
「どう?出来そう?」
わたしが書いたしょぼい説明書きの絵を見て、エスカが唸る。
「まず、握りの中に魔石回路を仕込む。魔力を流す入り口だ。刃を形成する肝になる部分は、特に純度の高い魔石を使って、魔力の物質化と強度を高める。これも魔石回路で出来ると思う。
形成した刃の安定化は別の魔石回路にやらせよう。安定化は魔石回路を繰り返し読み出す事で可能だ。モジュール化様々だね。これが無ければたぶん構想が思いつかなかったよ。んで、衝撃もしくは切れ味を高める効果を持たせるんだけど、切れ味より衝撃の方が簡単かな・・・」
「凄い。やっぱりエスカって天才ね。あっという間に思いつくんだもの」
エスカは考えを口に出しながら、手早く設計図を書いていく。
「ただ、品質が良くて純度の高い魔石、これが問題だ。そんなに高品質の魔石はなかなか手に入らない。昨日発掘された魔石の中にも、そこまでのものはない」
「これだけあってダメなんだ・・・」
精製し終えて積んである魔石を眺める。
ラファルズのような割と単純な機能には使えても、高度な魔術の安定化には物足りないらしい。
「この辺の品質で作ったとしても、刃がぶれたり、突然消えたりして危ないかもね。刃の長さをかなり短くすれば行けるかな?まあそういう武器もありか。意表は突ける」
「ねえ、品質が良くて純度の高い魔石に必要な属性ってなに?」
「そうだね。この機能なら、土か水の属性がいいかな」
「そう、水でもいいのね」
私はニヤッと笑った。
「いいけど・・・あ!まさか!」
「ふふっ。たぶん、エスカの想像通りよ」
わたしは大きめの魔石を手に取り、雑多な魔力を飛ばす精製作業をする。
ただし、雑多な魔力を弾き飛ばす時に、わたしの魔力が魔石の中に残ってしまうぐらいにちょっと強めに魔力を流して弾き飛ばし作業を行った。
全ての雑多な魔力を強めに飛ばし終えて、代わりにわたしの水属性の魔力が入り込んでしまった魔石は、かなり濃い青色の魔石に仕上がった。
「これ、使える?」
「すげえ、高純度の水の魔石だ・・・使えるよ、ユリ!」
それからわたしとディーネちゃんは、試作に必要な数だけ、高品質で高純度の水の魔石を作成した。
その間にエスカが魔石回路と、剣の握り部分の設計図を書く。
握り部分の設計図を元に、素材加工の魔道具で握りを形成する。
そして、エスカが書いた魔石回路の設計図を元に魔石回路を作っていき、夕方には試作一号機が完成した。
「今度はエスカさんが先に試してみる?」
「そうだね。やってみよう」
エスカが剣の握りを手に取り、刃が飛び出す方向を天井に向ける。
「いくよ!てい!」
エスカが魔力を流す。
シュッと青色の魔力の刃が握りから飛び出した。
長さは一メートルほどだろうか。
そして刃は、そのまま握りから飛び出して、天井に突き刺さり、消えた。
「あはは・・・形成した刃を握りに固定する機能をつけ忘れていたよ」
「・・・わたしに向けていなくて本当に良かったわ」
刃が飛び出す方向がわたしに向けられていたら、わたしが串刺しになっていたところだ。
想像するだけで怖い。
後になってから心臓がバクバクした。
確かに試作にバグはつきものだから仕方がない。
しかし軽い命の危機を感じた時、改めてわたしは武器を作っているのだと実感した。
・・・盾も作ろう。そうしよう。
あ、でもその前に。
「ねえ、エスカさん。今の失敗、必ずしも失敗ではないんじゃない?」
「ん?ユリ、どういう事?」
「剣と見せかけた飛び道具になってたわよ」
「あ!そうか!」
普通の『魔力剣』としての用途に加えて、刃先を飛ばすという機能も持ち合わせれば、敵の意表をつく事ができるのではないか、と思ったのだ。
手元に切替スイッチをつけて、『剣モード』と『飛び道具モード』を切り替えるような感じで使い分けられると、面白いかもしれない。
「うん。ユリの発想、いいね。ただやっぱり味方に対する誤射が怖いから、今回は見送ろうかな。ちゃんとした『魔力剣』にしておこう」
「うん。安全第一。わたしも賛成!」
とりあえず魔力刃が飛ばないようにバグ修正を行った。
そして、魔力剣と同様に、魔力で盾を構築する構想も伝え、夕食の前には、魔力剣の完成版と、魔力盾の試作品が出来上がった。
わたしも魔力剣を握り、魔力の刃を出して振ったり、試し斬りというか、試し叩きをしてみる。
「どうかな、ユリ。魔力剣の仕上がりは」
「使い勝手も、威力もいいと思うわ。魔力だからほとんど重さもないし、わたしにも使えそう。斬るというより、衝撃を与えるって点も素敵ね。うっかり自分を切らずに済むし」
しかし、どうしても気になる点があった。
「ただ一つだけ、気になる事があるの。こだわりとも言うわね」
「何でもいいから言ってみて。やれる事はやっておきたい!」
わたしは魔力剣の握りに魔力を流し、刃を具現化する。
一度消して、もう一度具現化する。
今度はそのまま魔力剣を振るう。
振るう。
振るう。
・・・やっぱり違う。
わたしはエスカに向き直り、問題点を伝える。
「魔力の刃を出している時に『ブーン』ていう音が、それから剣を振った時に『ブォン』という音が無いのよ!」
「それ本当に必要な事なの!?」
わたしの要望は却下された。
お昼に次話投稿します。
じわじわとですが、見てくださる方が増えてきたように思います。
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