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ポニーテールの勇者様  作者: 相葉和
40/206

040 大発見

「大発見だよ、アドル!この星は地球より小さいのよ!」


わたしはこの大発見で、感動に震えていた。


「ああ、うん。そうなんだね」

「そうなんだね、じゃないよ!凄い発見だと思わない!?」

「ごめん、オレはユリの星のことを知らないので、そこまで感動できない・・・」


まあ、それもそうか。

ああ、とりあえずこの星の大きさを測ってみたい!


たしか昔、地球の大きさを調べた人がいたよね。

太陽や星の光でできた影の長さと都市の距離を比較して云々、みたいな方法で地球の大きさを測ったとかなんとか?

ざっくりしか知らないので、測り方は全く分からない。

そもそも、基準とする距離がわからないとダメだ。


距離といえば、この星の長さの単位は『ローグ』だと船で聞いていた。

一ローグは約二十センチぐらいだったような?


「アドル、コーラルからドルッケンまで、何ローグくらいか分かる?」

「そうだな・・・大体、百八十万ローグぐらいかな」


アドルが地図を見ながら答える。

百八十万ローグ、つまり三百六十キロメートルぐらいか。

ケアンズからエアーズロックまでは千五百から二千キロぐらいあった気がする。

とすると、この星の縮尺は、地球の五分の一から六分の一ってところだろうか。


馬車の速度と目的地への移動具合・・・全てが合致した。


「謎は全て解けました。やはりこの星は地球より小さい!」

「・・・もしかして、最初から距離を聞いてくれていたら、話はもっと早かったんじゃないかな?」

「・・・はい。その通りです」


なんで気がつかなかった、わたし!



二日目。

予定通りの時間に町を出発し、次の中継地点に向かう。

昼休憩で馬車を止めている時に、魔獣出現の報告があがった。

報告を受けて、アドルが全員に号令をかける。


「戦えるものは前に!それ以外は馬車の中に待機!」

「ユリよ。ユリも妾と共にアドル達の補助に回ろう」

「分かった!」


わたしも魔獣退治のバックアップにまわる事にする。

パーティーで言えば後衛の位置だ。

エスカもわたしの隣で魔道具を構えている。

例の銃のような魔道具だ。

前衛は十五人。

馬車を守るように半円状に展開している。


「来たぞ!ブルクロスが三頭だ!」


目を凝らしてみると、大型犬のような獣が近づいてくるのが見える。

ブルクロスと呼ばれた獣は、全長は大型犬と同じくらいの大きさで黒い体毛に覆われ、三つ目でこちらの様子を見ながら、唸り声を上げている。


「土煙と一緒に巻き上げる石つぶてに気をつけろ!目を守れ!」


アドルが顔を布で覆う。

わたしも同じように布で顔を守る。

ブルクロスは魔力で土煙を上げる事が出来るらしい。


「ユリよ、水を展開するのじゃ。地面に広く展開して、土煙を抑え込むのじゃ」

「はいっ!」


わたしは魔力を、伸ばした人差し指と中指に集中する。

手には水の魔石を握っている。

無くてもいいが、まだ修練の低いわたしは、効率よく水の魔法を使うための媒体にする。

これは船でたくさん練習してきた、水の精霊の魔力を使った術だ。

周囲と地面に薄く広く、水の膜を張る。相手が土埃や砂のようなものを使う場合は効果が高い。


この星の普通の人は魔道具を使って魔術を行使するのが普通だが、わたしはわたしの中に水の精霊の核を半分取り込んでいるため、わたし自身が魔石のようなものらしい。

殺傷能力の高い遠隔攻撃はまだ出来ないが、今回はこれで役に立ったと思う。


ブルクロスが攻めあぐねているように見える。

思ったような攻撃が出来ずに戸惑っているのかもしれない。


「突撃!」

「おおー!」


アドルの号令がかかる。

同時にエスカが魔道具の銃を放つ。

エスカの攻撃は見事に魔獣に当たり、それを合図にするかのように、アドル達は武器を持ってブルクロスに突撃した。


勝敗は一方的に決した。

普段の狩りのセオリーが通じず、出足を挫かれたブルクロスはアドル達にあっけなく倒された。


「ユリよ、見事じゃ」

「ありがとうディーネちゃん!」


ディーネの首に抱きつき、喜びを分かち合う。


「ユリ、助かった。おかげで思ったよりも苦労せずに倒せたよ」

「あたしもユリの改良案のおかげで狙撃の魔道具の性能が上がったんだよ。ありがとね!」


エスカはどうやら銃の砲身部分の内側に螺旋の溝を作って安定性を高めたらしい。

実際、エスカの初撃はブルクロスの体にしっかりヒットしていた。

たいした怪我人も無く、わたしたちの大勝利だった。


アドル達はブルクロスの死体を検分し、その後、その死体を抱えて馬車のほうに戻ってきた。


「このブルクロスはどうするの?」

「ユリ、食べてみるかい?」

「絶対イヤ」


アドルがイタズラっぽく笑う。

いつぞやの『ニューロック人は魔獣を食べる疑惑事件』の事をネタにしているのだろう。

人が悪い。


「こいつは解体して、魔石を取り出す。ブルクロスは土の属性を多く含む良質な魔石が採れるんだ。他にも売れる素材があるのでもらっておく」

「解体ね・・・」


魚は捌けるけど、動物を捌いた事は無い。

スーパーの店売り状態になっているブロック肉より前の段階はちょっと遠慮したい。


「まあ、現れたのがエンガチョではなくてよかったよ。あれはキツイからな」


アドルの発言に、私はバッとアドルに肉薄して、アドルの肩を両手で掴み、アドルに顔を近づけた。


「・・・ユリ、その、近」

「エンガチョって何!?教えて!!」


わたしは、『星の翼』号で目を覚ました日に、ミライに『エンガチョ』と言われた事を思い出していた。


曰く、エンガチョとは中型の魔獣で、口から汚物を吐いて攻撃してくるらしい。


転じて、何かばっちいものや、ばっちいものを吐いた人を『エンガチョみたいだ』と言う事があるそうだ。


なるほど、そう言うことか・・・

まあ、ショックはショックだね。魔獣に喩えられていたとは・・・

リバースしたわたしが悪いんだけど。


私は脱力して、はあ、とため息をつき、頭を垂れた。


私の様子を怪訝に見ていたアドルだったが、そろそろブルクロスの解体作業を始めると言うので、わたしはアドルから離れた。


・・・今更だけど、顔を近づけ過ぎたことに恥ずかしくなってきたわ。


「アドル、わたしはちょっと疲れちゃったから、馬車に戻ってるね」


恥ずかしさを隠すため、そして解体現場から逃げるために、わたしはさっさと馬車に引っ込んだ。

エスカも解体には興味がないのか、もしくはわたしと同じで解体を見たくないのか、先に馬車の中に戻っていた。


「しかし、ユリの魔術は便利だねー。魔道具もなしにあんな事ができるなんて、わたしもディーネちゃんと契約したくなったよ」

「ユリは特殊なのじゃ。其方が同じような事ができるとは限らないのじゃ」

「そっかー。残念!」


ブルクロスの解体作業を終えて戻ってきたアドル達が馬車に乗り、二日目の宿泊地を目指して再び馬車は走り出した。

その後の道中は特にトラブルにも遭う事なく、無事に宿に到着した。



二日目の宿泊先に着き、食堂で夕食を取りながら談笑する。

食事はしないが、ディーネも食堂には一緒に来ている。

エスカとディーネは割と気が合うようだ。


・・・あれ、そういえばアドルの姿が見えない。


「アドルがいないみたいだけど、もう夕食は食べたのかしら?」

「解体したブルクロスから取れた素材を売りに行ったのじゃ」


魔石以外にもブルクロスには売れる素材があると言っていた。

買取屋で交渉が終わったら食事に来るそうだ。


「なるほどね。高く売れ・・・」

「あーん?なんだこの鳥は?珍しいな。嬢ちゃんのか?」


高く売れるといいね、と言いかけたところで、唐突に知らない男に割り込まれた。

この宿の宿泊客だろうか。

ちょっとガラは悪そうだ。


「これは最近大陸で見つかった、ハシビロコウという新種の鳥です。かわいいでしょ?」

「かわいい?目つき悪すぎだろ」


そこがいいんじゃない!

この良さが分からないなんて、人生の半分は損してると思う。


「よし。買おう。幾らだ?」

「はい?」


いきなり何を言い出すのだこの男は。

失礼にも程がある。


「だから、買ってやるって言ってるんだ。俺はこの町で店を開いてる。動物も扱ってる」


・・・地元の人だったのか。

ここには食事に来たのだろうか。

飲み屋も兼ねてそうだし、よく見れば宿泊客とは思えない人達が結構いた。

食堂は宿泊客以外にも開放しているようだ。

それはさておき、この男への対応だ。


「この子は売り物ではありません。わたし達はまだ食事中ですし、すみませんがお引き取りください」

「悪いな。買うと決めたら買うんだ。この町で一番でかい店を持っている俺に逆らうなら、お前ら全員、今日は宿無しになってもらってもいいんだぜ?」


どうやら町の有力者っぽい?

宿の人も、この町の住人っぽい人も、こっちを見ないか、遠巻きにして見ている。

わたしはめんどくさい手合いに絡まれてしまったようだ。


さてどうしよう?

穏便に済ませるなら、またニムゲームでも申し込むか?

わたしがそんな事を考えていると、エスカが立ち上がって啖呵を切った。


残念ながら、エスカは穏便にすませる気が無かった。


「あたしらは旅のもんだ。ディーネは大切な仲間だ。売らねえっつったら売らねえんだ。文句があるなら表に出やがれ!」

「おもしれえ。後悔するんじゃねえぞ」



宿に迷惑がかからないように外に出られたのはいいけど、案の定というか、男は用心棒っぽい男を四人ほど連れていた。


エスカが男達の正面に立って腕を組み、受けて立つ姿勢を取る。


「素直に鳥を売れば痛い目を見る事もなかっただろうがよ。鳥は諦めな」

「ふん。痛い目を見るのはあんたらの方よ・・・あれ?」


エスカがキョロキョロして、腰あたりをポンポン叩いてる。

そして真っ青な顔でわたしの方を振り返る。


「魔道具・・・忘れちゃった・・・」

「えー!?」


0時に次話投稿します。

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