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ポニーテールの勇者様  作者: 相葉和
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036 ルルの覚悟

頭目との賭けに勝ったわたしは、エスカの開放を要求した。

すこしゴネられるかもしれない、と思ったけど、そんなことはなく、頭目はすぐにエスカを開放して、店内に連れてきてくれていた。


「いやー、すまなかったね。助かったよ!」


ニパッと笑う丸眼鏡の女性、エスカは、酒場の奥の従業員休憩所のような所で縛られ、監禁されていたらしい。

既に拘束は解かれている。


監禁中のエスカは、特に乱暴なことをされることもなかったそうだ。

なお、エスカのほっぺたが赤みを差しているが、叩かれたりした訳ではなく、さっきまで床に顔をつけて寝ていた跡らしい。

お気楽なのか大物なのか分からない。


「ルルにも心配かけたね。ゴメンね」

「エスカさーん。ううう・・・」


エスカにしがみつき、ずっと泣いているルルに、困り顔と照れ臭い顔の中間をしながら、エスカはポンポンとルルの背中を優しく叩いている。


そんなわたし達の様子に、頭目は虫でも払うように手を振って、エスカの開放をはっきりと宣言した。


「俺の負けだからな。約束だ。エスカを連れていきな。お代はいらねえよ」

「ありがとう、頭目さん、あなた、意外といい人よね」

「意外とは余計だ。俺はいい奴なんだと。だが次は負けねえからな!」


頭目がニヤリと笑って、わたし達を送り出す。

ふふっ。次は三山崩しで潰して差し上げますよ。

わたし達は気の良いゴロツキ達の酒場を後にした。


なお、その後のライラ島では、頭目達が手を組み、正式に職業斡旋センター的な施設が開設されて、島の人材活用に大いに貢献したという。



「とにかくエスカ、本当に無事でよかったよ」

「手間かけさせちゃってゴメンね。で、この人とこのでかい鳥は?」


わたしとディーネを指さす。


「えーと、まあ、新しい仲間だよ。事実上、エスカを助けてくれたのはこの人だ。詳しい事は後で説明する」

「えー、別に今だっていいじゃん。気になるし」

「そう言われてもなあ・・・」


アドルがチラッとルルの姿を見る。

部外者がいては話しにくい、と暗に言っているのだ。


エスカが助け出された時には大いに喜んだルルだが、今はあまり元気がない。

エスカがこの地を離れてしまうことを知っているからだろう。


エスカだけは、一人、脳天気な口調で、ルルに声をかけている。


「ルルにだったら話しても大丈夫だよ。ねえ?」

「はい、いや、でも私は・・・それに、これからもうエスカさんは行ってしまうのですから、わたしはもうお側にはいられませんし・・・」

「?」


ルルの返事に、エスカが首を傾げる。

あれ、手紙を読んでない?


「エスカ、ニューロックに向かうから一緒に来いって連絡したよな?」

「あの手紙なら読んだよ。だからあんたがここにいても別に驚いていない」


ではなぜ首を傾げる?


エスカがルルに質問する。


「ルル、出かけるから荷物を準備してって言ったよね?」

「はい、ここに持ってきました」


ルルは大事に抱えていたお出かけバッグを差し出して中を見せて、エスカの着替えや道具などが入っていることを見せる。


それを見てエスカが首を振る。


「あたしのじゃない。ルルのだよ」

「はい!?」


ルルが目をまんまるくして仰天の声を上げる。


「一緒に行くから、準備しとけって、そう言ったんだよ」

「「「はい!?」」」


今度はエスカを除く全員で唱和した。


「エスカ。その事、エリザやホークスは知ってるのかい?」

「いや、伝えてないけど、大丈夫かなって・・・」

「いや、大丈夫じゃないだろ」


ひとまずわたし達は町の通りの喫茶店に場所を変え、テラス席でお茶を飲みながら、ルルの今後についてどうするかを相談する事にした。

どうやらエスカはアーガスのメンバーの誰にも相談せず、ルルを無断で連れてこようとしたらしい。


「いいかいエスカ、オレ達がやろうとしている事は安直に口外できないし、無関係な人に強要も出来ないんだ。なにより秘密を守れないと、どこから情報が漏れてみんなが危険な目に遭うかも分からない」

「危険な目に遭うのはこれから先もずっとじゃん?」

「そういう意味ではなく、内通とか、裏切りとか・・・」


アドルの言うこともわかる。

でもそれを言ったら今のクルーの中にも同じ事が言えるんじゃないのかな?


「ねえ。今船にいるクルーは、絶対に内通したり裏切ったりしないの?」

「しないよ」


言い切られた!?


「えーとそれは、例えば魔道具でクルーに制約をかけたりとか、そういう事?」

「そんなバル・・・酷い事はしないよ」


バルゴみたいな、と言いかけたらしいが、一応公共の場なので自粛したようだ。


「・・・船に乗っているのは、みんな、奴のせいで故郷を追いやられたり、親や大事な人が殺された人達なんだ。だからみんな、覚悟を決めて乗っている。裏切ったりしない」

「一応聞くね。絶対に?」

「絶対に、だ。一応オレも言うけど、理論上の絶対じゃない。お互いを信じている事が前提の、絶対なんだ。もしも裏切り行為があれば、それは敵に洗脳や支配された時だ。そうなる前になるべく自害する事をみんなも覚悟している」

「分かったわ。ごめんね、疑うような事を言って。わたしも信じるね」


ルルは何やら重たい話に萎縮してしまったようだ。

かなりの覚悟がなければ連れていけない事は理解したのだろう。


「・・・ルルなら大丈夫。あたしが必ず面倒を見るし、もしも何かあれば・・・わたしがルルを殺すし、あたしも責任取る」


エスカがアドルに真剣な面持ちを向ける。

ルルも真剣な眼差しでアドルを見ている。

覚悟を決めているのはルルも同じだ、という意思表示に見えた。


「お前一人の問題じゃないと言っているんだ、みんなが・・・」

「じゃあ行かない!」

「じゃあ行きます!」


エスカとルルが同時に真逆の事を叫んだ。


「ルル!?」

「私も覚悟を決めます。必ず秘密を守ります。エスカさんのために生きると決めたんです。だから連れて行ってください!私が信用できないと思うならば、今ここで私を殺してください!」


ルルは命をかけてでも、本気でエスカについていく覚悟を決めたようだ。


「・・・ルルさん、覚悟は立派だよ。だが、ここには二度と帰れないかもしれないんだよ?」

「私は孤児です。この島に未練なんてありません。むしろ辛い記憶ばかりです。エスカさんのお陰で私は救われたのです。私はエスカさんの為なら何でもします!」


ルルはそう宣言して、エスカに微笑んだ。

エスカの眼鏡越しにみえる目は、すこし涙ぐんでいるようにも見える。


「ルル、そこまであたしを・・・」

「エスカさん、私は悪い事はまだ出来ないけど、きっと覚えます!だから連れて行ってください!」


どこの箱入りお姫様だよ!

わたしたちは泥棒じゃないよ!

いや、国を奪おうとしている泥棒とも言えるかな?

いやいや、先に泥棒をしたのは向こうだ。

ちなみにわたしはお髭のガンマンが好きだ。


「・・・わかった。エリザに相談してみるよ」

「アドル!」

「アドルう、やっぱお前、いいやつだな!あたしは信じてたよ!」

「ただし、オレ達は、悪い奴らじゃない。そこは間違えないようにね」


ルルは涙を浮かべて頷いた。



「ん、いいよ」

「軽っ!」


船に戻り、エリザに相談したところ、一秒で採用が決定した。


「エスカの助手も必要だしね。なにしろエスカはズボラだから、エスカの身の回りの世話をしてくれるならむしろ助かる。とはいえ、船内のクルーとして扱うから、クルーが汚した服の洗濯や、船内の掃除も頼む。それがお前の仕事だ」

「はい!」


ルルは、船内の掃除・洗濯担当、兼、エスカの助手として正式に採用された。


とりあえず半舷上陸二日目は、ルルの荷物と、エスカが他に回収しておきたい荷物を取りにいくのを手伝うため、エスカの半壊した家と船を往復した。

たいした休暇らしい休暇も取れずに、ライラ島での上陸は終わった。


0時に次話投稿します。

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