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ポニーテールの勇者様  作者: 相葉和
34/206

034 エスカとルル

0時に次話投稿します。

凄惨な状況になっているエスカの建屋の二階には女の人がいた。

アドルも面識は無さそうだ。


アドルがエスカの知り合いだと聞いた女の人は、ゆっくりと階段を降りてきた。


「私はルルといいます。エスカさんの身の回りのお世話と、研究のお手伝いをしていました」


彼女は、エスカが雇っていた住み込みのアルバイトらしい。

エスカがこのライラ島に来て、この建屋で魔道具の研究を始めた頃に、何をしているかが気になって覗き込んだところ、声をかけられてその場で雇われたそうだ。


ルルの仕事は、基本的には、エスカの魔道具作りのお手伝いと、食事の準備や衣類の洗濯、エスカに頼まれたものの買い出し、エスカの予定の確認などを行っていたらしい。

助手、兼、家政婦さんといった所か。


そして、事件があったのは昨日。

客同士のいざこざの末に爆発が起き、気絶したエスカは客に連れ去られたという。


いざこざで爆発?

気にはなるが、とりあえずこちらも自己紹介をして、要件を伝える。

ルルは見たこともない喋る鳥にびっくりしていたが、新種の鳥であるということを簡単に説明して流す。


「そうですか、エスカさんを迎えに・・・そういえば、近々出かけるので外出の準備をしておいてくれと頼まれていました」

「はい、エスカには事前に手紙で伝えていましたので」

「手紙・・・そういえば届いていましたね。私が受け取って、エスカさんに渡した覚えがあります。なるほどそうでしたか」


寂しそうにルルが頷く。

しかし、連れ去られたとはどういう事だろう。


「実は、エスカさんは、あまり良くないお客様に、武器製作の依頼を受けていたのです」


島では今、ゴロツキのチーム同士が、この島の利権を巡って対立しているらしい。


先日、ゴロツキのチームのリーダーが、エスカに武器を作ってくれと頼みに来た。

エスカが様々な魔道具を作って、それを売って生計を立てている事をどこかで聞いたらしい。

ゴロツキのリーダーは、とりあえず前金を置いて帰っていったが、エスカは武器を作らず、放置したそうだ。


そしてその翌日、今度はもう一方のゴロツキのチームのリーダーがやってきて、同じく武器を作れと依頼して、前金を置いていったという。

しかし、エスカはやっぱりこちらの依頼も放置した。


そして昨日、片方のチームが、武器ができているかを確認しに来たのだが、タイミングが悪い事に、もう一方のチームも同時に来てしまい、ここで鉢合わせてしまったそうだ。


相手がエスカに武器製作を依頼していた事に腹を立てた両陣営は、ここで乱闘を始めたらしい。


どっちもどっちだろうに・・・

そういうのは勝手に他所でやっていただきたい。


「私は二階に避難するようにと、エスカさんに言われました。私は言いつけに従って、二階に行って隠れました。一階では怒声と、物が割れる音、何かが投げられるような音が聞こえました」


実に迷惑な客だ。それで客が怒りに任せてドンパチして、火災になったのかな?


「すると、エスカさんが『いい加減にしろこの馬鹿ども!』と叫ぶと、一階で爆発が起きました。二階にも響く、すごい衝撃でした。たぶんエスカさんが爆発する魔道具を発動したのです」


・・・爆破の犯人、エスカさんだったよ!


「おそらく、怪我人はいたかも知れませんが、死んだ人はいなかったようです。ただ、その後、エスカさんはその人達に連れ去られていきました。どちらの陣営が連れて行ったかは分かりません」


落とし前をつけるか、武器を作らせる気なのだろう。

前金を支払っているにも関わらず、武器はできていない上、死にかけたとあってはエスカさんが拉致られる理由も分かる。


「アドル・・・」

「分かっている。助けに行かないと。問題はどこにいるかだ」


居場所がわからなければ助けに行けない。

身代金目的の誘拐ではないだろうから『助けて欲しければ、ここに来い』といった置き手紙もない。


「あのー、多分ですけど・・・」


ルルが、遠慮がちに手を挙げて意見を言う。


「町に、彼らが普段からたむろしている酒場があります。そこに行けば何か分かるかも知れません」


あ、そういえば。

町の酒場にガラの悪そうな連中がいて、中には怪我をしていた人がいた。

もしかして爆発に巻き込まれた人?


「とりあえず行ってみるか。何か分かるかも知れない。ユリ、町に戻ろう」

「うん。急いで行ってみよう」

「あの、私もついて行かせてください!」


ルルが懇願する。

ゴロツキの顔はルルが知っているかも知れないし、島の案内役にも良いだろう。

アドルも承諾する。



町へ戻る道中で、ルルが身の上話をしてくれた。

ルルはこの島の孤児だったらしい。


「両親は知りません。物覚えがついた頃には、孤児の仲間たちと一緒に、物をもらったり、お店の食べ残しを恵んでもらったりして生きてきました。成長してからは、動物を狩ったり、日雇いの仕事で食いつないでいました。ですからたまたまとはいえ、エスカさんに雇ってもらえたのはすごく嬉しかったのです。なのに、こんな事になってしまって・・・」


ルルはエスカにとても恩義を感じているという。

年はまだ若そうだ。十五、六ぐらいだろうか。


「あの、アドルさん。もしもエスカさんを無事に助けられたら、その後、エスカさんはこの島を離れてしまうのですよね?」

「ええと、まあ・・・」


エスカを迎えに来たのだから当然そうなるのだが、なんか言い出しにくい。

エスカがいなくなれば、ルルは貴重なバイト先を失う。


しかし、アドルの回答を聞く前に、慌ててエスカが取り繕う。


「いえ、私はいいんです。エスカさんが無事ならそれでいいんです。ずっとこの島にいるとは思っていませんでしたし」


ルルはエスカに頼まれていた、お出かけの準備が入っているバッグを大事そうに抱えている。


「ですから、エスカさんを無事に助け出して、今までのお礼を言って、ちゃんと送り出したいのです」

「ルルさん・・・」


なんかルルさんが気の毒だ。

ルルも一緒に連れて行けないかな?とアドルに視線を送るが、それを察したアドルは首を横に振った。


まあ、わたしたちは王に楯突こうとしている集団だ。

一般の人を巻き込むわけには行かない。

エスカもそれを分かっていて、ルルを誘わなかったのだろう。

わたしもどうこう言えるような立場ではないし。


それぞれが色々モヤモヤと考えながら、わたし達は町に戻ってきた。

帰りはほぼ下り坂だったので、多少は楽だった。


「アレじゃな」

「あれね」


ゴロツキっぽいのが酒場と思われる建屋の入り口でだべっている。

さて、どうやって聞き出そうか、と思っていたら、アドルがさっさとゴロツキ達のところに行き、話し掛けていた。


「すまない、ここに、エスカというやつがいると聞いたんだけど、あってるかな?」

「あー?何だお前?知らねえ顔だな」

「エスカに頼んでいた魔道具がまだ出来てないみたいなんだよ。だから直接聞きたくてね」

「あー、ちょっと待ってろ」


え?もしかしてここにいるの?ビンゴ?

ゴロツキは店に入って何かを確認しに行った。


「ねえアドル、ここにエスカはいると思う?」

「わからないけど、何かは知ってそうだ」

「酒場の中に、何人もの人の気配はするのじゃ。エスカかどうかは分からぬがな」


酒場の中には複数のゴロツキ達がいるということか。

仮にエスカがここいるとしても、無事に助け出せるだろうか・・・

なんとか穏便に話が付けられると良いんだけど。


それから少し経つと、ゴロツキの男が戻って来て、酒場の中を親指で指した。


「中に入れ。お頭達が話をしたいとさ」


お頭、達?

複数形?


ちょっとした疑問は湧いたが、わたし達は男に案内され、酒場の中に入っていった。


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