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ポニーテールの勇者様  作者: 相葉和
33/206

033 エスカを探しに

アドルが敬称の事で悶々としている中、ディーネが島の様子について気になる事を言った。


「皆、活力が低いように見えるのじゃ」


ディーネが路地に首を向け、その方向を見ろと促す。


確かに、活気が感じられない。

地べたに座ったり寝転んだりしている大人、子供。

あまり品揃えの良く無い店舗。

やる気のなさそうな店主。


酒場っぽい所では、ガラの悪そうな連中がたむろしている。

なんだか怪我をしているようだが、喧嘩でもしたのだろうか。


「星降りの儀式が行えない影響が出てるんじゃないかな」

「あ、王様がやるやつね」


星降りの儀式が出来ないと、星の生命力が枯れてしまうのだ。

王都付近では感じなかったが、地方の領地では目に見えて悪天候や、農作物の被害が出ているのかもしれない。


「それについては、妾も責任を感じているのじゃ」


ディーネちゃんが頭を軽く伏せる。

まあ、精霊の御力を閉ざして引きこもっていたからね。

無理もないけど。

むしろ英断だ。


ちなみにディーネちゃんは魔獣と間違えられないように、首の周りに真っ赤なチョーカーと、チョーカーにぶら下がるように、パステルピンクのポシェットのような箱をつけている。


箱の中には手綱として使える紐が入っており、いざという時には『飼い鳥です!ちゃんと手綱も握っていますので安全です!』というアピールができるようになっている。


この鳥は何かと聞かれたら?

『最近見つかった(この星では)新種の鳥、名前はハシビロコウです』で押し通す。

嘘は吐いていない。


「一応、この姿になってからは、細々と妾の魔力を放出しているのじゃ。気休めにしかならぬだろうが」


それでもやらないよりはマシなのだろう。

やっぱり水の精霊さんは優しい精霊さんだ。


・・・それにしても、まだエスカの住処には着かないのだろうか。


「アドル、まだ着かないの?」

「あと一刻時くらいかな?」

「えー」


港を出てから、かれこれ二時間ほど歩いている。

『一刻時』はだいたい一時間ぐらいだと聞いている。

ちなみに『十刻』で『一刻時』となるそうだ。


・・・はあ、後一時間くらいもかかるのか。そろそろ足が痛い。


港のそばの、小さな商店や飲食店が集まっている町を抜けた後は、特にお店もなく、淡々と坂道を歩いている。

極端に大きくないとはいえ、ここは島だ。

山頂方面に向かって、なだらかに上る田舎道を歩き通しであった。

とりあえず頑張って歩く。


・・・お宅訪問のついでに観光ができると気軽なノリで引き受けたのに、これでは訓練だよ・・・


「運動不足のユリにはちょうど良いのじゃ」

「失礼ね。エクササイズや柔軟はいつもやってるんんだから」

「たぶんあそこに見える建物だと思うんだけど・・・」


わたし達の不毛な話を遮って、アドルが前方を指さした。

まだ距離はあるが、高台に、全体的に白い建物が見える。

割と大きめの建物で、外壁は綺麗だが、窓付近や壁の辺りはやや黒ずんでいるように見える。


・・・少し様子が変な気がする。


「なあ、ユリよ。何か匂うのじゃ」

「わたしじゃ無いよ?」

「何を言っておるのだ其方は。あの建物じゃ。なにか燃えた後のようでは無いか?」


よく見ると、窓付近の黒い部分は塗装ではなく、煤けた後と言われればそう見える。

窓も割れてる?

まだ少し遠いのではっきりとは分からない。


「ユリ、きっと何があったんだ!エスカが心配だ。急ぐぞ!」


走り出すアドルに慌ててついて行こうとするが、歩き疲れていて、とてもついて行けない。


「ユリよ、乗れ!」

「えっ!?」


ディーネちゃんが身体を少し巨大化させた。

ダチョウより大きいぐらいだろうか。

そして腰を下げる。


背中に乗れと?本当に乗れるの?


「乗り方はミライと研究済みじゃ。コツを教えるのではよ来い」


研究って、それミライちゃんと遊んでただけだよね?

いつのまに・・・まあいいけど。


わたしは手綱をチョーカーに引っ掛けて固定し、ディーネちゃんの腰の辺りにまたがる。


・・・ものすごく不安定なんですけど。


ハシビロコウは本来、ダチョウのように人が頑張れば乗れるような鳥では無い。

そもそもダチョウだって乗るのは難しい。

不安定で当然だ。


ミライは軽いし、ちょっと歩く程度ならば良いかもしれないが、これで走られたり飛ばれたりしたら絶対落ちる。怖い。


「ユリよ、魔力で妾と身体を固定するのじゃ」

「あ、なるほど!」


体を魔力で保定するイメージをして、魔力をディーネちゃんに流す。

ディーネちゃんからも、わたしを引きつけるような魔力を感じる。

一気に安定感が増した。


「では行くのじゃ!」


ディーネは翼をバサッと大きく広げると、足を軽く曲げる。

そして、建物を目がけて、一気に走り出した。


「あがががが・・・・」


揺れる揺れる。揺れまくる。

油断すると舌を噛みそうだ。


でもわたしは今、ハシビロコウに乗って走ってる!

超嬉しい!


世界広しといえど、ハシビロコウの背中に乗って走ったのはわたしが初めてではないだろうか。

超感動だ。


それに、そこそこ巨大化しているせいか、速い。

ダチョウ並みに速いかもしれない。


でもハシビロコウってそういう鳥だっけ?

まあ、みてくれがハシビロコウなだけで、中身は別物だけど。

しかしだ。


「ねえディーネちゃん」

「何かの?」


爆走するディーネに一応、疑問をぶつける。

舌は噛まないように気をつけて、ディーネに質問する。


「走るのは構わないけど、飛ばないの?」

「ユリを乗せて飛ぶにはまだ不安があっての。それにな・・・」

「それに?」

「ちょっと、高いところにはまだ慣れないのじゃ」


高所恐怖症の鳥?

まあ、水の精霊だし、水中か、せいぜいたまに水際の陸地にいるぐらいしか無かっただろうしね。

生まれて初めての飛行で、高いところが苦手だと気がついたのかもしれない。


スタートは遅れたが、建物の近くでアドルに追いついた。


「はあい、アドル!」

「はあ、はあ・・・それ、ずるい・・・はあ、はあ・・・」

「そんなことより、エスカさんを探さなきゃ。ありがとうディーネちゃん!」


ディーネちゃんから降りて、建物内に入る。

二階建ての建屋のようだ。

入口の扉は外側に向けて開いているが、蝶番が外れかけている。

部屋の中は焦げ臭い。

やはり何か異常事態が起きた後だ。


「燃えた、というか、爆発した感じ?」

「なんか凄惨たる光景ね・・・」


一階は研究室だったのだろうか。

広い間取りで、壁には戸棚や本棚だったと思われるものが並び、部屋の中央には大きめの机がある。

ただし、机は中央から真っ二つに割れている。

家具や瓶などは四散、あるいは粉砕されて、見るも無惨な光景だ。


慎重に建屋内に入り、人がいないか調べてみたが、とりえず一階に人はいないようだ。

二階はどうだろうか。


「エスカー!」

「エスカさーん!いませんか!」


わたしとアドルは、二階に聞こえるように、一階の階段から上に向かって声を掛けた。

すると、二階から声が聞こえた。


「エスカさんならいませーん。見ての通り、今は大変なことになっているので、お引取りくださーい」


エスカはいない、という事は、喋っている人はエスカではない人だろう。たぶん。


「アドル、今の声、誰だか分かる?」

「わからない。エスカではない」


アドルが声の主に向かって、階下から声をかける。


「オレ達はエスカの知り合いだ!エスカを迎えに来たんだ!」


すると、二階でガタガタと音がして、階段の方に近づく足音が聞こえてきた。


「どちらさまですか?エスカさんの知り合いなんですか?」


女の人が、階段の上からヒョイっと顔を出した。


お昼に次話投稿します。

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