表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポニーテールの勇者様  作者: 相葉和
26/206

026 再会

「・・・エンガチョじゃないもん」


ユリは毛布に包まり、不貞腐れていた。


『エンガチョ』はともかく、ミライは掃除道具を取りにすっ飛んで行っただけで、すぐに道具を持って戻ってきた。

そして、体の動かない由里に代わって、ミライが由里の粗相の始末をしてくれているため、由里は罪悪感にも囚われていた。


「いい加減、元気出すの」

「ごめんねミライちゃん。ミライちゃんは何も悪くないのに・・・」

「ミライは元気だし、掃除は得意なの!」

「わたし、お姉ちゃん失格だよ、ううう・・・」


(ユリ、来たのじゃ)

「来た?誰が?」

(挨拶に来たのじゃ。妾達を助けてくれた人たちじゃ)


何人かの足音が聞こえる。

精霊さんはソワソワしているような感じがする。

とりあえず横になったまま、扉側に体と顔を向ける。


扉を開け、複数の男女が入ってくる。

そこには知ってる顔もあった。

ミライの父親のドルフだ。

それと、知らない男女、そして、この顔はもしかして・・・


「アドル!?」

「やあ、ユリ。また会えて嬉しいよ」


生きてた。生きててくれた!

アドル生きてたよ!

良かった!


(いかにもアドルじゃ。この船で妾達を助けてくれたのじゃよ)

「船?ここ、船の中なの?」


さっきからフワフワ揺れている感じがしていたのは、体調面だけではなく、実際に揺れていたのか。


「ああ、ここは船の中。オレ達、反バルゴ組織、『アーガス』の旗艦、『星の翼』号の中だ。まだ出来たばかりの船なんだぜ」

「ほえー。すごいね」


全貌を見ていないので、ありきたりの感想しか言えないが、これだけ客室が立派ならば、かなり大きい船なのだろう。


「私たちも挨拶させてもらっていいかな?」


グラマーなお姉さんがニッコリする。

隣には大柄な男の人がいる。

どちらも知らない人だ。


「アタシはこの船の船長でもあり、一応、『アーガス』のリーダーのエリザだ。よろしく頼むよ、未来の勇者さん」

「よろしくお願いします。あの、助けてくださったそうで、ありがとうございます。それと勇者はやめてください・・・」


勇者呼ばわりされて酷い目に遭っているのだ。今は特に勇者なんて呼ばれたくはない。

わたしは軽く目を伏せた。


「分かった。ユリって呼ぶよ。よろしくな。船の中にはこいつら以外にもまだメンバーがたくさんいるが、皆持ち場を離れられないし、どうせ一度に覚えられないだろ?追々紹介するよ」


姐さんな感じのエリザさん。

頼りになりそうな人だ。


続いて、姉さんの隣にいる大柄な男の人が自己紹介をする。


「オレの名前はホークス。副長だ。よろしく頼む。そんな暗い顔するな。美人が台無しだぞ?」

「ほう、アタシの目の前で女を口説くとは、いい度胸してるじゃねえかホークス」

「やめろってエリザ、そんなんじゃねえだろ。アドルに怒られちまうよ」

「なっ!?おいホークスてめえ!」


ホークスとエリザの関係はなんとなく分かった気がする。

アドルは顔を真っ赤にして怒ってる。


ふふっエリザとホークスは仲良しさんだね。

アドルもそんなに怒らなくていいのに。


「ユリお姉ちゃん、顔が赤いの。モテモテなの?」

「やっ、何でもないわよっ。何でも!」

「ユリさん、娘を助けてくれたんだってね。本当にありがとう」


ドルフがミライの頭に掌を乗せ、優しくなでて、そしてわたしに頭を下げた。


「ちょっと、やめて下さいよ、頭を下げないといけないのはわたしです。ミライちゃんを危ない目にあわせたのはわたしのせいなんです。いや、危ない目どころか、実際に危なかったし。わたしの方こそ、申し訳ございません!」


頭を下げたいのに下げられないわたしは、とりあえず目を瞑って謝意を伝える。

エリザがパンッと手を叩き、空気を変える。


「お二人とも、そこまでよ。どちらも謝った。ミライちゃんは元気。ユリも生きてた。ならばどちらも気に止むことはないでしょう。だから後はわたし達に協力しなさい!」

「エリザ、またお前は強引な・・・」


ホークスの顔が引き攣る。

アドルは軽く笑っている。


いいノリだね。

こういう空気は好きだし、気持ちが救われる。


「まだ目的地まで長いんだし、動ける人は動く。動けない人は大人しく回復する。いいね!」

「はーいエリザお姉さん!」


ミライが手を上げて、元気よく返事をする。


エリザがミライの上げた方を握り、腰を落としてミライと視点の高さを合わせる。


「ミライちゃんが一番しっかりしてるね。ユリの看病、しっかり頼むわよ!」

「任せてください、エリザお姉さん!」

「お父様、ミライちゃんを養子にいただきたいのですが、後ほどお話よろしいでしょうか?」

「断る。断固として」


客室が笑い声に包まれた。

しかし、目的地まで長いって、今どこに向かっているのだろう。


「あのーすみません、目的地ってどこなんですか?あと、ミライちゃん達も一緒で構わないのですか?」

「そうだね、とりあえず、ユリを乗せたところから話をしようか」


わたしは、ナーズでの戦いの後から、現在の状況になった経緯をエリザさん達から聞いた。


わたしは槍で刺されたミライを見て精神が暴走し、水の精霊の力を借りて兵士を倒した後、ミライに癒しをかけたところで力尽き、完全に意識を失った。

ここまでは水の精霊に聞いた話だ。


その後、ドルフに、倒れているわたしとミライが発見され、どちらも生きていることは確認できたが、家の周りで激しく争った後と、大量の血のシミにドン引きし、どのみち父娘揃って、叛逆の罪で王国に殺されると思ったと言う。


・・・やっぱりわたし、迷惑かけまくりだ。


その後、すぐに家を訪れる者があり、早くも兵士が来たかと思ったら、アドル達だったという。


アドル達はナーズでユリを探しながら、警備兵達の動きも監視していたところ、警備隊長が向かったというドルフの家を突き止めたらしい。ただし、アドル達が来た時には既に戦いが終わった後だったが。


「もっと早く辿り着けていれば良かったんだけど。ごめん」

「ううん、いいの。アドルが来てくれただけで嬉しい。無事でいてくれて本当に嬉しいの」

(ほう、ユリ、なんか甘いのう)

「少し黙ってて(超小声)」


アドル達はドルフに、アドル達が現王に敵対する者である事を伝え、ユリの引き渡しを要求したが、なかなか信用しないドルフに手を焼いた。

早くしないと王国側の増援が来るかもしれない状況であり、アドルは必死の説明を続け、最終的に、ドルフが『どうせ反逆罪で殺されるなら、俺達も一緒に連れていけ』と言い、その条件を呑んだという。


「ドルフさん、お仕事とか投げてきてしまって良かったのですか?やっぱりわたしが・・・本当にごめ・・・」

「ユリさん、謝るのは無しと言ったでしょう。そこまでですよ。俺が娘のために決めた事です。それに今の国のやり方に不満があるのは俺も一緒ですから」


結果的にミライ達を保護できたことは、ミライを救う為に暴走したユリの望みでもあったが、ドルフにもそう言ってもらえて良かった。


そして、増援の警備兵が到着する前に、ミライの家の海側に船を回し、全員を乗せて出発したという。

それが約ニ週間前の事だそうだ。


その後、コンテナ船を装う星の翼号は、目立たぬようにコンテナ船らしい航行速度で、途中で何度か陸に立ち寄り、補給や修復、現地のメンバーと情報交換したり、増員をしながら、目的地に向かっている途中との事だった。


「目的地は、アタシの故郷、ニューロックよ」

「ああ、魔獣を食べる人達が住んでるっていう所ね」

「ユリ!それどこ情報よ!食べないわよ!」


エリザさんが剣幕で吼えた。

地雷踏んじゃった!?

わたしは情報源のドルフに目を向けるが、凄い勢いで顔ごと目を逸らされた。


ちょっと!ここは助けなさいよ!



0時に次話投稿します。


3/24 体裁等、修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ