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ポニーテールの勇者様  作者: 相葉和
11/206

011 対話

痛い・・・ものすごく痛い・・・

血がたくさん出てる・・・


青い美女から放たれた光は、わたしの腹部を貫通したっぽい。

致命傷だ。

大きく開いた腹部の傷から、水の中に血を撒き散らしている。


胃を逆流してきた血が「コフッ」と口からも漏れる。

撃たれた場所を手で押さえるが、手の隙間から水中に血が散乱するばかりで、止め処なく血が溢れていく。


助かる傷じゃないよね・・・

やはり水の精霊は凶暴化していたの?

バルゴの言い分のほうが正しかったの?


「・・・いや、死にたく・・・ないよ・・・」


声を振り絞る。いま出せる限界の声量で振り絞る。

しかしその声はか細く、水の中に消えていく。


なんでこんな目に?

わたしは温泉でゆっくりしてるはずよ?

異世界なんかに来る予定は無かったんだよ?

ハゲ上司を殴った報いなのかな・・・

ダメだ、もう何も考えられないや・・・


その時、声がかけられた。

落ち着いた、やさしい声だ。


「何、死にたくない?、ならばそう言わぬと分からぬではないか」


再び美女から放たれる光がわたしを包み込み、そして、みるみるうちに傷が癒えていく。

痛みもひいていく。


「うそ・・・なにこれ、何が起きてるの?」


まるで怪我など無かったかのように綺麗に傷が消えた。

幻術の類では無い証拠に、シャツには穴が空いている。

驚きに目を見張っていると、突然、光の繭が消え失せ、わたしは再び水の中に放り出された。


(ちょっ!やっぱり殺す気なの!?)


しかし、そう思ったのも束の間、わたしは水の流れに押されるようにして、水の中から、元いた部屋の床に放り出された。

そして、青い美女が水の中から現れると、水面を滑るようにこちらに近づく。


目をパチクリさせて美女を見ると・・・相変わらず怪訝そうな顔でわたしを睨んでいる。


わたしは立ち上がり、とりあえず助けてくれた事のお礼を言う。


「えーと、あの、ありがとうございます」

「そなたは誰じゃ?」


お礼に反応される事なく、美女に疑問をぶつけられた。


あれ、そう言えば会話ができてる?

突然通じるようになったの?


言語理解の魔道具を見てみると、淡く光を放っている。

魔力が充填された?いつ?

あ、もしかしてさっきの攻撃・・・


わたしへの攻撃の余波で、言語理解の魔道具に、魔力が飛び火したと考えると、一応しっくり来る。

言葉が通じなければそのまま死んでいた訳で、結果オーライだけど、危なかった・・・


「そなたは誰なのじゃ?」

イライラを隠さず、美女に再度問われる。


「はいっ!わたしは千登勢由里。俄に信じられないかもしれませんが、異世界から召喚されてこの星に連れてこられました!」

「ふむ、そうか」


即信じた!?

話が早くて助かるけど。

こちらからも質問をする。


「えーと、あなたは、水の精霊さんで間違いありませんか?」

「いかにも、妾は水の精霊じゃ」


やはり水の精霊だったか。無事に・・・とは言い難いけど、会えて良かった。


しかし水の精霊は未だに怪訝な顔を崩していない。

ここからは交渉タイムだ。

水の精霊にわたしが怪しい者ではない事を理解してもらい、水の精霊をここから解放する方法を聞かなければならない。


「あのー」

「そなたは異世界人と言ったな。どうやってこの星に来たのじゃ?どうやってこの部屋に入った?私になんの用じゃ?」


・・・質問の先を越されてしまった。とりあえず一つずつ回答していこう。


「はい、この星に来たのは私の意志ではなく、この国の王に、召喚魔術を使われて、無理やり召喚されました」

「召喚魔術とな。なるほど。その術を知る者が居たとはな」


召喚魔術の存在はご存知だったらしい。

理解が早いのはそのためか。

とりあえず次の質問に答える事にする。


「この部屋に入れた理由ですけど、水の精霊さんの結界が『この星の人間は全て通さない』という仕組みだそうで、この星の人間ではないわたしは入る事が出来ました」

「ふむ。其方は異世界人で間違いないのであろう。先ほど傷を治療した時に、この星の者ならば誰でも持っているはずの魔力の核を全く感じなかったからの。全く、小賢しい真似を」


怪訝そうな顔が一層深くなった。

機嫌を損ねた!?マズイかもしれない。

とっとと次の質問に答える。


「最後の質問ですが、あなたに会いに来た理由は、あなたを解放する為に来ました。アドルという者の依頼です」


最後の質問に答えると、水の精霊はピクっと一瞬、体を震わせ、柔らかい表情を見せた。


「・・・そうか。あのアドルか。懐かしいの。生きていてくれたか」


水の精霊は、喜びを噛み締めるかのように優しい笑顔で俯き、組んだ腕の手に力をこめて、しばらくの間、沈黙した。

とりあえず機嫌は直ってくれたらしい?わたしは安堵の息を吐く。


「・・・異世界の者よ。ユリと言ったか」

「はいっ!」


唐突に名前を呼ばれ、反射的に返事をする。


「妾がここで結界を張っている理由は聞いておるか?」

「はい、一応、アドルさんから聞いてます」


アドルから聞いた事を伝えると、水の精霊は真面目な表情になり、話し始めた。


「うむ。其方がいう通りじゃ。妾は先王と信頼関係を築いておった。使役の魔道具など無くとも、妾は先王に喜んで協力していたし、先王も妾に良くしてくれた。ここに妾の居場所を作ってくれて、色々な話をした。あの頃はとても楽しかったのじゃ」


しかし、バルゴの謀反によって先王と王族は一掃され、水の精霊の身も危なくなったため、結界を張って引きこもる事にしたそうだ。


「妾は人の所業に絶望した。こんな星なんぞ滅んでしまえと、本気で思ったのじゃ。だから誰も入れず、声すら届かぬ結界を張ったのじゃ。人の声など聞いてやるものか、この戯け供め、と思ってな」


・・・遮音結界になってた理由、想像通りだったよ。


「しかし、突然其方が来た。どうやって入ったかは分からぬが、こんな所に入れる以上、人ではないのだろう、と思ったのじゃ」


イレギュラーな存在でなければ入れませんものね。分かります。


「なので、とりあえず水の中に呼び込んでみる事にしたのじゃ」


ちょっと乱暴じゃございませんか!?


「しかし、其方は何も喋らず、水中呼吸の魔術も使わぬ。じゃから、こやつはきっとここに身を投げに来たのだと思ったのじゃ」

「それでわたしを撃ったのですか!?」

「一応、意志確認はしたであろう?その上で、其方は撃て、と身振りしたであろう?」


うう・・・ジェスチャーの腕前が生死に関わる事になるとは思わなかったよ・・・


「望み通り、死なせてやろうと撃ってみれば、突然、其方は死にたくないなどと言い出した」

「うう・・・この、言語理解の魔道具が魔力切れを起こしていたので、話が通じなかったのですよ。それを説明したかったのですよ」


水の精霊によく見えるように、言語理解の魔道具を掌に乗せて差し出す。


「なるほどの。事情は分かった。次からはむやみに死に急がぬようにな」


いやいや、最初から死にたいなんて思ってないから!


「・・・それに、アドルが其方に想いを託したのであろう?」


そうだ、アドルさんと水の精霊の関係!


「あの、アドルさんて、どんな方なのですか?」


妙にお国の事情に詳しいアドル。

先王を殺めたバルゴを打倒したいという想い。

なんとなく想像はついているけれど、しっかり答えを聞いておきたい。


「ふむ。アドルはな・・・街の道具屋の息子よ」



・・・超普通の人じゃん。それは全く想像してなかったよ。



0時/12時に次話投稿します。

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