八話 電話で圧をかけます
八話 電話で圧をかけます
「電話に出るんだ」
要は得に言った。
「ふんっ!」
得はスマホを取って、操作した。電話に出るのを拒否したようだ。
「助けを求められても困るのよ。うっ」
弾丸が二の腕に当たった。得はまたスマホを落とす。
そしてまた電話が鳴る。
「出るんだ。また撃たれるぞ」
でないと要のスマホも無事では済まなくなる。
「分かったわよ」
得はスマホを取って、操作した。そしてタイルの床に転がす。
「もしもし」
エスパーダの声がした。今度は切らなかったようだ。
「誰?」
当然の問い。
「あんたが捜している小人族よ」
エスパーダは得に名乗る気はないらしい。
「なんで小人が電話を……」
「小人族だってスマホを持ってるの。そして会社に勤めて給料もらってるの。あんた達のせいで遅刻してるんだからね」
「だからって攻撃することないでしょ」
「私の住まいを荒らすやつを殺して何が悪い」
「野蛮だわ」
「それが最後の言葉?」
「会! 也!」
得は必死に名前を呼んだ。今までの射撃で、エスパーダが本気で自分を殺すと思っているのだろう。要もただの脅しか、本気か分からないくらいだ。
しかし二人は来ない。
「どうして来ないのよ!」
「知り合いに頼んで、偽のメッセージを送ってもらったの。知ってる女の名前を騙ったから、二人とも鼻息荒くして出て行ったわよ」
「あいつら……」
得は歯噛みしている。知り合いは想のことだろう。そして女性になりすますことが出来たのは都のおかげだ。
「二度と来ないと約束するなら、この場は見逃すわ」
「突っぱねたら?」
「死ぬだけよ」
あっさりとした返答に得は本気だと感じたようで、震え出した。
「返事は?」
「分かったわよ。帰れば良いんでしょ」
血を垂らしながら、立ち上がる。
「それと私のこと話したら、殺すわよ。住所はバレてんだからね」
そう言った後、電話から住所が聞こえてきた。都に教えてもらった得の住所と同じだった。
「くそ、覚えてろよ」
捨て台詞を残して、得は逃げていった。
魔竜王を撃退したのだ。
しかし要は素直に喜べなかった。結束バンドで縛られたままだったから。