七話 私はマリを狙ってます
七話 私はマリを狙ってます
「何なのよ、これ……」
予想外のことに頭が追いついていないようだ。一般的な会社員の家で手を狙撃されるなんて、動画配信者が住人をふん縛るよりもありえないようだった。
「先輩、私に何したのよ?」
「俺は何もしていない」
要は声に優越感を込める。
「宿守要!」
また得は要の顔を踏もうとした。
弾丸が太腿に撃ち込まれる。
「うっ」
得は尻もちをついた。
風呂場では痛みにうめく得の声だけが響いている。
要はエスパーダが頼もしくもあり、恐ろしくもあった。本気になれば人間を狙撃で殺せるのだ。今は手足を撃つだけで、手加減をしているようだ。このまま得が改心してくれれば、逃がしてはくれるだろう。
「園田さん、逃げたほうが良い。動画も撮れないし、ここにいても無益だと思う」
「先輩、勝ったつもり? 私には弟がいるわ。脳筋だけど、私を守ってくれる最高の弟よ」
「来ないじゃないか」
なぜだか分からないが、会や也は来ない。だからエスパーダが遠慮なく得を狙えているのだろう。
「来るもん! 連絡さえ取れれば……」
落ちているスマホに目を向けるが、それは要の物だ。
その時、スマホが鳴った。画面が目に入り、要は驚いた。電話の相手は、今得を狙っているはずのエスパーダだった。