表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

六話 彼のスマホが盗られそうです

六話 彼のスマホが盗られそうです


 風呂場に得が入ってきた。


「先輩、私のスマホ、弁償してくださいよ」


 今まで要が聞いた得のどの声よりも低かった。


「俺は何もしていない」


 そう言うと顔を踏まれた。得は靴を脱いでいたのでそれほど痛くはないが、精神的にダメージが来る。


「小人が壊したんでしよ。先輩が飼っている小人が」


 飼っていると言われ、要はカチンと来た。エスパーダはペットではない。その表情の硬さが足を通じて伝わったのか、得は訝しがる顔をする。


「何? 怒ってるの?」


 得は足をどけた。


「当たり前だ。人の家に来て、縛って、訳のわからないことを言って……。怒らないほうがおかしい」


 要は怒っている本当の理由を伏せた。まだエスパーダとの親密な関係はバレていないのだ。こちらから情報を出すべきではない。


「先輩は小人のことを知ってたはずよ。それに私達が来ることを知ってた気がする」


 想のことは知らないはずだが、得は核心に近付いている。


「私達の対応に迷いがなかった。だいたいアポなしで突撃すると、人は驚いて冷静な対応が取れないもんなの。そこを撮るのが面白いのに」


「最低だな」


「再生回数を伸ばすのには人の生の感情が良いのよ。普段の仮面を外した生の表情が」


「それでなんでうちに」


「小人を目の前にしたマリの可愛い驚き顔に、ファンはいいねを押してくれる。なのに私のスマホが燃えちゃった。弟達は自分のスマホ可愛さに、撮影に使おうとしないし」


「俺は燃やしてない。園田さん達に縛られてるんだから」


「だから先輩のスマホを使うの。割っても、燃やしても罪悪感ないもん」


 スーツのポケットからスマホを取り出し、後ろ手に縛られた要の手に近付けて指紋認証も突破、さらに自分の指紋も登録している。


「先輩、ゲームやってるんだ。異界大戦」


 アプリのラインナップだけでも見られると恥ずかしい。


「写真は……っと」


 要はエスパーダの写真を消すのを忘れていたことを思い出し、動こうと試みる。しかし無駄な努力だった。それどころか得に何かあると悟られてしまった。ニヤリと笑っている。


 得がスマホの画面に親指でタッチしようとすると、鮮血が飛び散り、スマホが風呂場の床に落ちた。


「いった……」


 得の親指の付け根にかすかに金属製の塊が飛び出ていた。エスパーダが撃った弾丸だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ