五話 私は魔竜王を狙撃しました
五話 私は魔竜王を狙撃しました
風呂場にいる要には、魔竜王がずっと喋っている声が聞こえる。
まだ部屋にはエスパーダがいる。得とのやり取りを聞いて、どういう状況かは分かっていると思う。でも要は心配だ。
小さな爆発音がした後、得の悲鳴が上がった。
「私のスマホがーっ!」
どうやらエスパーダがスナイパーライフルで、得のスマホを破壊したようだ。
縛られながら要は気分が高揚した。それと並行して、エスパーダが別のスマホに撮影されないかと心配になる。
さらに部屋のほうからプラスティックや何かが燃えた異臭がして、要は火が広がらないかという心配を優先した。
「会、也、あんた達のスマホ出しなさいよ!」
「最新のだから壊されたくない」
「姉ちゃんの給料じゃ自分のしか出さないだろ」
また不満が吹き出している。
「あんた達、逆らうの?」
「映像の手柄とスマホの危機回避だったら、スマホの危機回避を選ぶ」
一度効いた脅しも効かないようだ。
一発の弾丸が劇的に空気を変えた。要は心の中でガッツポーズをした。
しかし得はこう言った。
「まずは小人を捕まえてから、ゆっくり撮れば良いのよ。そうすればスマホは壊されないわ」
その後、忙しなく動き回る音だけが聞こえてきた。