三話 彼は魔竜王を騙します
三話 彼は魔竜王を騙します
要は固まったことで、得も調子を取り戻した。
「そうよ。小人よ。私、この目で見たんだから」
「あー、あれね」
想が送ってきた物が役に立つはずだ。要が部屋に戻ろうとすると三人がゾロゾロと上がってきた。
「ちょっと。勝手に入ってこないでくれ」
それには返答せず、スマホを要に向けている。早く見せて、誤解してもらったほうが良いかもしれない。要は部屋のテーブルにある物を持ってきた。
フィギュアだ。それもパジャマを着たエスパーダの。3Dプリンターを使って想が作った物で、売り物のフィギュアよりは品質が劣っていたが、あの時は画面越しだったからバレないだろう。
「小人ってこれのこと?」
要はわざとスマホにエスパーダのフィギュアを近付ける。
「嘘だろ」
「ガセかよ」
「違うもん! ちゃんと見たもん」
魔竜王がモメ出した。
「だいたいこんなキャラ見たことないじゃん! パチモンだよ」
「パチモンをわざわざ作るわけがない。ガセで決まりだ」
「まったく……」
弟の一人が持っていたスマホを操作して、得に渡した。撮影は終わりらしい。
要は勝った。後は帰ってもらうだけだ。声をかけようと一歩近付いた時、得が言った。
「あんた達、私が嘘ついたことあった?」
文句を言っていた弟達が萎縮し、空気が変わった。予想外だった。