十話 会社に電話しました
十話 会社に電話しました
それからエスパーダに結束バンドを切ってもらい、晴れて自由の身になれた要だったが、やることがいっぱいあった。
まずは要のスマホに付いている得の血の処理。水気を使うわけにもいかずに作業は難航した。
そしてタイルに落ちた血を洗い落としである。流すだけでは血の臭いが残るため、洗剤を使って臭いをごまかした。
最後に血のついた物から別のスーツに着替える。
「なんだか犯罪の処理をしてるみたいだ。こっちは被害者なのに」
ボヤいたが、エスパーダは聞いておらず、電話を掛けている。
「すいません。緊急事態で人間と戦ってました。一応撃退したのでこれから出勤します。詳しい話は出社してからで……、はい、はい、じゃあ」
電話を切った後、思いっきりため息をついた。
「会社?」
「うん、課長。人間に見つけられるかどうかの話って小人族の鉄板の話題だから、聞きたがって困るわ」
小人族にも鉄板の話とかあるなんて初めて知った。それよりも要も遅刻の連絡をしなくてはならない。
リアルに動画配信者に襲われたと言われても信じる確率は低い。それにエスパーダのことを話題にして、別の人がここに来ないとも限らない。
「すいません、ボヤを出してしまいまして……」
あながち遠くない言い訳を口にした。




