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俺の誕生日

 三月十九日、俺の誕生日当日となり俺は静瑠っちとクローウィスのお店へと訪れていた。一目惚れした時計は残念ながらもう品切れとなり、もう販売は終了してしまったらしいが、もう一つ気になっていた時計がまだ残っていたからそれを見ていた。

 それは一万三千円というちょっと値段オーバーしてしまい、その隣のは九千五百円の時計がある。

 どちらかというと気に入った方を店員に言いたい。しかしながらこの前のを聞いちゃったら、俺は生かされているだけで十分だと安い方を店員に言おうとした。

 そしたら洋服と靴を見ていた静瑠っちが一番高い方を店員に言い出し、息子の誕生日なんでと静瑠っちが選んだ洋服と一緒に会計を済ませる。


 試着室で静瑠っちが選んだ服と靴に履き替え時計をつけてみた。洋服も靴も結構な値段だったよなとカーテンを開けるとパシャパシャと撮る静瑠っちである。


「やっぱりいいねえ」

「洋服と靴は払うよ」

「今日は特別なんだから甘えなさい。さて次行こうか」


 ちょっと照れくさいなとお店を出て静瑠っちが予約してくれたレストランへと向かう。

 静瑠っちが言ってくれた言葉がなんか恥ずかしかった。息子の誕生日。どうして息子の誕生日と言ったのかよくわからなくても嬉しい。


 地下にあるレストランで本来ならば夜営業らしいのだが、静瑠っちが話をつけ昼間から営業をしてくれているんだそうだ。どんなレストランなのかなと到着し中へと入るとジャズが流れているレストランだった。

 そこには陽介たちや唄に父さん。それから父さんの隣で車椅子に乗っている人。

 

「母さん、もう大丈夫なのか」

「心配かけちゃってごめんね、奏ちゃん」

「よかったっよかったっ」


 俺は思わず母さんにハグをし無事でよかったと何度も伝えると母さんの温かい手が俺の背中にきた。


「奏ちゃん、お誕生日おめでとう」

「ありがとう、母さん」


 ハッピーバースデーの曲が流れケーキが登場し蝋燭の火を消すと、クラッカーの音が響きながらおめでとうと祝福してくれる。久々に楽しい誕生日だと料理を食べその場でボードーゲームで遊んだり、未佳と一緒にピアノで弾き唄が歌う。


 楽しいけれど頭がよぎるのは音神が言った言葉だ。俺の誕生日に何かが起き静瑠っちがどちらを選ぶか。ここで呑気にピアノ弾いていていいものなのかは正直いうとわからない。でも今は楽しい時間を無駄にはしたくねえなと笑顔をだす。


 弾いていたらすみませんという言葉にみんながお店の扉を眺め、店員が扉を開けても誰もいなかった。さては地上の人かと店員が上へと確認したけれど一向に戻って来ない。


「やられたみたいだね」

「そうだな。お前たちはここで待っていなさい。音美、子供たちを頼む」


 異変を感じた静瑠っちと父さんが上へと行き俺らは装備して待機していた。なかなか戻って来ない静瑠っちと父さんで、母さんはまだ療養中でもあるから残ってもらい地上へと出る。

 見た光景は階級五と階級四が一般人を食い散らかしていて、静瑠っちと父さんは階級一に挑んでいた。俺たちは階級五と階級四を倒していると、車椅子に乗った男子がやめてと叫んでいる。

 俺はその子がやられないように音を込めた。


「高音砕一線!」


 俺は宙に浮き階級五を真っ二つにして大丈夫かと男子に聞くと、男子は好意に満ち溢れた笑顔になり俺の腕を掴む。手がとても冷え切っており、鼓動が早鐘をし逃げろという警報が頭に流れ込んだ。


「助けてくれてありがとう、兄さん」

「何を言ってるんだ……。俺は……」

「奏汰、その子から離れるんだ!」


 静瑠っちが言うも抜け出せない状況に陥り、離せよと威嚇するも嫌だよと笑顔で返させられる。離れろってぶんぶんと振っていると陽介の得意技が聞こえた。


「低音氷百花!」


 地面が氷になりちっと舌打ちしたその子は音霊に担がれ避難し車椅子に座る。


「あーあ。兄弟の邪魔されちゃった。父さんがプレゼントはやっぱり僕でしょって言うからお外に出たのに残念だよ。父さん、どうすれば兄さんは僕のところに戻ってくれるの?」

「そうだな。じゃあこうしようか」


 音神が何をするのかわかってしまい唄逃げろと言おうとしたら、すでに唄は音神の手の内に入ってしまう。その一方俺のことを兄さんと言っている男子は母さんにナイフを突きつけられていた。


「やっぱり俺の音は見抜いていたのかよ、音美」

「当たり前でしょ。あれは全て嘘よ。奏汰が憎いわけない!奏汰は私の自慢の息子。唄を離してもらえるかしら?」

「そうは言ってもお前も俺の息子を人質にしてる。お互い様じゃないか?」


 どう言う展開になっているのか読めていない状況に音霊がルエマガヅと俺を捕まえようとして避け倒して行く。


「音霊、後で餌はたんまりあげるからいなくなれ」


 階級五と四が消えるも階級一はまだ残っていた。


「さあどうする、奏汰。本当の弟を助けるか偽りの妹を助けるか、どちらを選ぶ?もし唄を選ぶって言うならその場で唄を殺し音霊に食わせる。もし弟を選ぶなら唄は解放して静瑠、会いたい人に会わせてやる」


 俺の選択肢によって静瑠っちがどちらを選ぶのかってそう言うことかよ。俺はどっちを選べばいいんだと動揺してしまう。迷っていると音神が切り札を出してきやがった。


「そうそう、言い忘れていた。唄を選ぶなら旋律も死ぬ運命になる。それは避けたいだろ?」

「何を言ってるんだよ。父さんが死ぬ?」

「静瑠に教えてもらってないのか?可哀想な俺の息子だ。奏汰を返してほしいと言った時、旋律が生意気なこと言うから音を忍ばせてもらった。夜になると一時停止し過去を思い出す夢をな。もうすぐ陽が暮れる。早くしないと旋律が停止し音霊に食われるぞ。大好きな偽りパパを助けたいなら弟を選べ」


 みんなの顔色をみると知っているような顔立ちで、俺だけが知らなかったということなのか。静瑠っちは時々隠し事をするけれど、タイミングで教えてくれる。でもこんな大事なことを教えてくれないだなんてあんまりだ。

 だけど俺は音神の言いなりにはなりたくはねえ。でも決め弟に近づき、母さんが持っているナイフを奪った。それにより唄は解放し陽介が唄の盾となる。


「父さんやったよ!」

「やればできる子だ。撤収しよう。奏汰、奏人を推してあげてくれ」

「待てよ」


 まだ終わっちゃいねえだろと音神を睨んでいるとクククと笑いながら怒んなよと言われた。

 夜になり父さんは普通にいられることで、ほら行くぞと俺の周りに音霊がガードし、向こう側に行かせないようになってしまう。


「奏ちゃん!」

「……じゃあな」


 俺は奏人と言う弟が乗っている車椅子を押そうと手押しハンドルを掴み、行こうとしたら父さんが待ってもらいたいと言った。今更なんて言われても俺は逃げられないんだよとハンドルを強く握る。


「音神、今連れて行けばどうなるかわかってるはずだ。あの時会議の内容を聞いていたなら奏汰をこっちに戻せ。今ならなんとか誤魔化せる。それでも奏汰の命を無駄にするのか?」

「せっかく音を解いたのが間違いだったようだな。奏人の気持ちも知らないくせに何様のつもりだ?そうか、まだお前は奏汰が実の息子だと思っているから邪魔をしようとしているんだな。だったらこうするまでだ」


 音神が指を鳴らすとお母さんと唄が叫び出し、後ろを振り向くと母さんの姿がない。近くにいた父さんや唄に陽介が血を浴びていた。


「母さん……母さん!」


 嫌だ。失いたくなかったのにと行こうとするも、ダメダと音霊が俺を止めてくる。母さんは何も悪くねえのになんでだよと音神の服を掴んだ。母さんは殺さないって約束したじゃねえかよ。


「どうした奏汰。お前は本当の家族を選んだまでだろ?偽りの家族をどうするかは俺の勝手だ。さっ早く帰って再会させたい人もいる。行くぞ」


 俺の腕をとりそのまま連れて行かれそうになったから俺は抵抗した。

 やっぱり音神と合わねえと離してくれそうにもないから、思いっきり音神の腕を噛む。すると俺の腕を離してくれて俺は音霊を殴り唄や陽介たちのところに戻った。

 噛んだところを押さえながら悪い子だと音霊が一気に増える。


「反抗期になるとは思わなかった。しつけがまるでなっていないようだな。まあいい。奏人を屋敷まで連れてってあげてくれ、あい


 スッと現れたのは美人な女性で行きましょうと哀と言う女性が、奏人を連れて姿が消えていった。いなくなったことで音神が音霊に指示を出し襲いかかってくる。

 唄は母さんの死に今戦える状況じゃねえよと唄を庇いながら音霊を倒していき、音神は母さんにほんの少し音を残していた。そうとしか言い切れないと泣くのは後だと音霊を斬って、斬ってと繰り返していると音神はのうのうと俺たちを眺めている。

 戦う気ねえなら俺たちの前から現れるんじゃねえよという怒りを音霊にぶつけていく。


「挽回のチャンスをやる、奏汰。俺の元に来い。そうすりゃあ他の者は殺さない。さあどうする?早くしないと次々と奏汰が失いたくない人が死ぬぞ」

「絶対にお前のところには戻らねえよ!バーカ!」

「そうか。なら全員死ね」


 まずい音神の音に今みんなかかっているんだと、どうすりゃあいいと音霊を斬って、ふとじいちゃんが言っていた音を思い出す。


鈴音守人護りんおんしゅじんご!」


 鈴の音が鳴り響きそれによって音霊が全部消え音神も耳を痛めながらいなくなってくれた。その音を唱えたせいで激しい頭痛に襲われみんなが俺を呼んでいるも視界が真っ暗になる。

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