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祓音師

 母さんや父さん、それから妹と一緒に暮らしている夢を見た。父さんはヴァイオリンを弾き、母さんはフルートを吹いて、俺はピアノを弾き、妹は歌を歌っている夢。

 それがずっと続いてくれると信じていたのに、俺を囲んでいるのは変なバケモンたちがダゲヅミとずっと言っている。どう言う意味だよとパイプを持ち倒していくもその声が耳から離れない。

 やめろ、やめてくれと耳を塞ぎバケモンが俺の上に乗っかって来たが、遥遠くから聞こえる声が俺の耳に入っていく。


「目を覚ましてお兄ちゃん!」


 その言葉に俺ははっと飛び起きると病室であって、そばにはさっきの子がいた。俺が目覚めたことでよかったと、安心して椅子に座る。

 俺は確か母さんを探している最中にスーツの連中が俺をつけていた。そいつらに逃げていたらバケモンとその子と出会い、バケモンを倒して、そこから先が全く覚えてねえ。頭打ったとかじゃねえし、まだ座っているだけでも頭がクラクラしてきた。


「そう言えば名前なんつうの?」

はるか

「無事でよかったよ。んで俺はどうして病室にいるんだ」


 遥が喋る前に左右がラインに繋がったサングラスをかけた男が現る。数秒、俺はその人物に会ったことがあるような感じで、固まっていたら、サングラスを外してくれた。なんと店長だったのだ。


「店長!?なんでここにいるんすか!」

「いやーまあね。話せば長くなるよ。その前に見事だったね。あの階級を一人でしかも一回殴っただけで消えるとはさすがだ」

「えっと店長、話についていけてません」

「そりゃあそうだ」


 あはははと笑い出す店長についていけず、俺と遥は顔を見せ合い困っていると、咳払いして店長が俺に名刺をくれた。

 葉言静瑠はこと しずる階級上一級祓音師ふつおんし

 聞いたことがねえ職業だけどなと店長の顔を見る。店長は逆座りをして見舞いで買ってきたようなシュークリームを食べながら俺と遥に教えてくれた。


「実は言うと奏汰を監視するためにわざわざコンビニを造って様子を伺っていたってわけよ」

「意味わかんないっす」

「そりゃあ今まで平凡に暮らして来た奏汰にはわからないことがたくさんあるだろうね。だから順に追って説明してあげよう」


 どっから出してきたのかスケッチブックが出てきてそれを見せながら説明してくれる。

 俺を監視していたのはたった一つ、ある人物の息子であるため見張っていたらしい。

 ある人物とは音の災いを齎す神のような存在であり、音がある限りその人物は消えることもないそうだ。祓音師同士ではこう呼んでいる。


 音神災人おとがみさいと


 音神はある人の音色が気に入り、その人も音神に惹かれ合ったことで誕生したのが俺らしい。

 しかし実母は音神に恐れ育ての母、つまり今の母さんに託しその後、実母の行方がわからずじまいとなってしまったそうだ。

 本来ならば音神の子でもあるため上の者は殺すことを指示したにも関わらず、母さんは音神にはさせないと強い意志があったらしい。万が一、人に襲いかかるようなことがあれば即処分することを条件に俺は育てられていた。

 それで母さんと父さんの間に妹が誕生したことで、妹を傷つけるようなことが起きたら母さんの責任でもあることもあり、引き離すことになったらしい。

 離婚したわけは俺を育てるための責任と引き取った覚悟で母さんに引き取られたんだ。


「それで最近はずっと大人しかった音神が動き出したという情報を得てね。見張りが強化したこともあったせいなのか、音神も負けぬまいと奏汰に近づこうとしていた」

「なんでいきなり俺に近づこうとしたんすか?」

「僕たちの憶測にしか過ぎないけど、力が弱まっているからじゃないかという結論が出た。そんで息子に分け与えた力を奪おうとしているんじゃないかな」

「俺そんな力ないんだけど」

「実際に倒せているじゃん。それが音神が持っている力だよ。化け物がなんて言っていたか覚えてる?」

「ナルグ?」

「はっきりと覚えてるね。そう、化け物が言う言葉は全て逆さま。つまり来るなということだよ。自分の力より遥かに超えているその力の存在を知っているからそう言ったのかもしれない」

「あれじゃあ倒せる力があるのにどうして?」

 

 遥が店長に質問をするといい質問だねと言いながら返答がやって来る。


「音神が生み出したのがきっかけによりそれがウイルスのように広まった。嫌悪、怒り、悲しみ、恐れ、様々な負の感情で生まれ化け物が生まれてくる。それがずっと住み着いたり身体に纏わりついていたりしているんだよ。それを音で察しし目に見える者を音撃者おとげきしゃと呼ぶ。奏汰はもちろんのこと、遥も生まれつき耳がよく目に見えていたことで今回遥が対象となった。音神は見える者を排除するため化け物を利用し操っているってことかな」

 

 実の父親が俺を狙ってくるのは理解したけど、他の人たちの命を奪うだなんてあんまりだ。そうだった。肝心なのを聞いてない。


「店長、母さんは見つかったの?」

「それが音神に捕まった可能性が高いんじゃないかとこちらでは認識している。音美おとみをつけていた隊員と連絡が取れなくなったからね」


 母さんが捕まっただなんて嘘だろ。俺のせいでどれだけの人が死ぬだなんて絶対に嫌だ。


「さてと音撃者である遥と奏汰はうちが経営している祓音学園に転入してもらい、祓音師として一般市民を守るんだ」

「そんな。俺はまだしも遥はまだガキだぞ。さっきまでって遥?」


 遥は下を向きズボンをぎゅっと握っている手に雫が垂れているも、店長の顔をしっかりと見て遥の決意を聞く。


「僕はお父さんも、お母さんも、じいちゃんも、ばあちゃんも、あの家にいた化け物に食べられちゃった。僕がしっかりしていれば父さんたちは助かった。もうこんな思いはしたくないよ。人の役に立ちたい!」


 バケモンに家族を奪われたショックと悔いがあり、さっき言われたことで俺が憎いとも言えるのかな。店長は気づいてあげられなくてごめんと遥を包むと、遥は思いっきり泣き父さん、母さんと呟いた。普通の生活を奪われた遥にとってはとても辛い。

 俺も聞いた時、いや俺は随分前から知っていたことを封印した。

 

 俺が寝付けられなくて母さんに絵本を読んでもらおうとリビングに入る前。父さんと母さんが話しているのを聞いた。俺は父さんと母さんの子ではないことを自ら封印をし、父さんと母さんの息子として振る舞っていたこと。



 今更、はいそうですかって納得できる話じゃねえけど、これが現実なんだと改めて感じ取った。

 俺がどんな父親と母親の間に生まれたのかはわからねえ。でも俺の父親と母親は旋律と音美だ。どんなに否定されようとも育ててくれたのはあの二人に変わりはない。

 母さんを救うためにも俺は祓音師となって一般人も母さんも、祓音師たちも絶対に守り抜く。それが俺の道だと思うから。


「店長、いや葉言さん。俺、音神災人を止めてみせる。それに他の奴らにどんなに否定されようとも俺の親は旋律と音美の息子だ。俺は俺なりにやらせてもらいます」

「わかった。一つ、葉言さんじゃなくて静瑠っちって呼んで」


 年上の方にそんな呼び方でいいんすかと引いているも、店長はグッジョブというサインを出しているからいいのだろう。


 念のため診察を受け大丈夫そうだから退院していいとお医者様から言われ、車に乗り祓音学園へと出発した。夜でもあり遥はいろんなことがあったから俺の隣で寝てしまう。風邪引かないようにとマフラーを巻いてあげた。 

 

「静瑠っち。俺は処罰とか受けなくて学校生活を送っていいのか?俺がいるせいでいろんな人に迷惑をかけているような気がしてさ」

「そこは気にせず学園生活や任務に励めばいい。上からの指示は今のところ祓音師として動けと言われてるからね。まあ上は仲間にしておけば好都合とか思ってるんじゃない。それにその間に僕らがいるから上にガーガーと烏のようにうるさく言われようとも守るから安心して」


 感謝を述べていると到着したらしくでかい門が開いて俺は遥を起こしてあげる。

 車が停止し降りて洒落た建物がたくさんあり俺は妄想した。建物の中は暖房が効いて、暖かい布団で眠れるんだろうな。こんなところで住めるのかとわくわくし静瑠っちについて行った。

 洒落た建物から外れた場所に到着し何ここと幽霊とか出そうなボロボロの民家。ここに住めとかじゃねえよなと静瑠っちをみると、入って入ってとハイテンションでいる。カチンと来た俺は静瑠っちの顔面を殴ったつもりだった。けれど顔面の目の前で拳が止まる。

 なんでと頭が混乱しているとびっくりしたと胸に手を当てていながら笑っていた。


「僕の顔面を殴るだなんて百年早いよ。僕は常に音を施しているからね」

「音?」

「それは明日の授業で話すとしようか。それに遥がもの凄く眠たそうな顔をしてる。今日は我慢してよ。緊急で奏汰と遥を連れて来たことでまだ手続きができてないからさ。さあ入った入った」

 イラッとするも遥がうとうとしていて仕方ねえなと頭を掻きながら民家へと入る。げっ埃まみれだし蜘蛛の巣張ってるしと、靴を脱いで奥へと進んだ部屋に布団が引かれてあるらしい。

 ったくと襖を開けるとここだけが綺麗にされており、まあいいんじゃねえと遥を寝かしつけた。俺は気に食わねえ埃や蜘蛛の巣等を軽く掃除し就寝する。


 

 やれやれ奏汰は誰に似たんだかと掃除している姿をみて、僕は本部へと戻り明日からは忙しくなりそうだ。

 音神災人の息子である奏汰を殺したい奴らは多くいるだろう。ほとんどの人は音神によって殺されたから息子に手をかける人もいる。

 あれは正直驚いたな。父親は旋律で母親は音美だと発言した際、無線で聞いていただろう旋律は小さな声ですまなかったと言っていた。

 さあ今はどんな気持ちなのかなと旋律が使っている部屋にノックもせず入ってみる。相変わらず外の景色好きだねとソファーに座った。

「ノックはしろ、静瑠」

「別にいいじゃん。ちゃーんと連れて来たよ。僕は店長として接してたけど、あの子はいい子に育ってるし、音神と違って子供を見捨てなかった。上にも報告しておいてよ。絶対に音神のようにはさせないってね」

「報告しておく。もう奏汰は寝たか?」

「いや、おりゃあって聞こえるっしょ。埃や蜘蛛の巣をとってる。綺麗好きなところ旋律に似てるよ」

 あぁとずっと外を見ていてここからは過去の思い出を振り返る時間ですもんねとそっと立ち上がり扉を閉める。

 さて僕の生徒にはなんて説明しようかと背伸びをしながら僕も家へと帰り就寝することにした。

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