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始まりの音

 どれだけの子供が家族の絆は壊れないと信じているのだろう。しかし二割の親は子供の思いを捨てる。

 一割は子供を育てられないから児童保護施設へと連れて行くか放置するかのどちらか。もう一割は離婚によってどちらかに引き取られるパターンだ。


 俺の親はそうはしないと信じながら家族とクラシックを聴きに音楽ホールに来ていた。

 一個年下の妹ははしゃぎ、早くと喜びながら両親の手を引っ張り席へと向かう。チケットの番号を見ながら俺も席へと座った。


 父が音楽関係をしているものだからこういう場所によく連れてってくれる。楽しみと始まり、始まる音色が聞こえ演奏者や指揮者が来て演奏が始まった。俺は耳を澄まし、いい音色だと全ての楽曲を楽しんだ。


 終了後、いつも通り美味しいものを食べて帰るのだと妹の面倒を見ながら、どこかに行ってしまった両親を待っている。どうしたんだろうかと待っていたら、両親ともう一人の女性が現れ父は僕の頭を撫でた後、妹とその女性を連れて行ってしまう。

 母の服を引っ張る俺にごめんねと俺を抱きしめ、母はしばらく俺から離れず泣いていたのを思い出す。俺が思っていたより俺の家族は早くして崩壊したんだと理解した。


 離婚してから十年後……


 シングルマザーとして俺を育ててくれている母は、パートをしているも部屋はいつもゴミ屋敷のようにゴミの量が多い。

 どうしていつもこうなるんだかと、掃除ぐらいはしてほしいとゴミ袋にゴミを回収をする。母はパートがない日はのんびりとテレビを観るのが日課だ。


 本当は俺より妹を引き取りたかったんだろうなと、内心思いつつも聞いたことは一度もない。なぜ離婚をしたのかという質問は、聞きたくても母は話を逸らす。それでも前に母親同士で話しているところを聞いちゃったことで諦めがついていた。


 父が不倫関係になったきっかけは俺のせいでもある。問題児であってよく父の楽器を壊したり、気にならないことがあると同い年の子を殴っていたから。それが嫌で父は俺ではなく妹を選び離婚したとも言える。

 だからシングルマザーにさせてしまったのは、俺の責任だから俺は何も言わないことにした。

 

 綺麗になりそろそろバイトに行かなくてはならないし、食材もなくなっているから買い物もしちゃおう。そう思って引き出しにしまっている通帳とカードを取り出す。あれここにいつもしまっているはずなんだけどなとガサゴソしていると見つけた。

 結構貯めてあるから問題はないだろうけど、一応確認してみようと通帳を見た。俺の見間違いだったらいいのだが残高が百四十三円しか入っていない。この前はざっと五十万近く入っていたのだがどうしてだと疑いたくはない母に問い正す。


「母さん、あのう俺の通帳使った?」


 ピクッと母は反応し犯人はお前かと言いたかった。そして母は振り向いて両手を合わせ、てへぺろという顔になる。

 離婚する前の母はお金を気にせずいろんな品を買っていた。そう考えると相当な額の何かを買ったのだろうと悟る。


「ごっめーん、かなちゃん。一目惚れで鞄、買っちゃった」


 ジャーンと俺に見せてくる鞄は高級ブランドの鞄だとわかり、母が一番大好きなブランド品だ。ここは俺が貯金してきたお金であっても、もうすぐ母の誕生日が近かったから別によかったのかもしれない。


「てことは母さん、母さんの通帳もほぼ空っぽってこと?」

「そういうこと」


 まじか。今月分の家賃も払えそうにない。どうしたものか。とにかくバイトに遅刻するため考えるのは後にしようと家を出た。


 今月もよく冷えるなと寒っと薄着のパーカーに百均で買った毛糸で、マフラーを作ったのをぐるぐる巻にし、徒歩十分にあるコンビニの裏口に向かう。

 クリスマスの日にはちゃんとしたケーキを母に食べさせたいと思っていたが、貯金がほぼなくなってしまったことで節約するしかない。それと俺は百均で買った伊達メガネとボサボサの頭にしておく必要があるのは訳がある。


 時々一緒にバイトをしている子に眼鏡をコンタクトにして、ボサボサの頭直したらモテるよって言われた。

 しかし俺はその経験で、嫌と言うほど男子の目が半端じゃなかったからだ。バレンタインの日はほぼ女子が俺にチョコをくれるもので本当に助かったことがある。


 しかし中三のバレンタインの前日に俺はやらかしてしまったことがあった。それは名門校の学生に絡まれ、イラっとした俺は名門校の学生を何発も殴ったことで、それ以来女子や他の男子に嫌われたからだ。

 どうしてかというとよくテレビに出ている俳優だったらしい。母はどれだけ頭を下げていたのかよく覚えていて、もう母に心配かけまいとこういう姿になっている。


 裏口に入ると暖かい暖房の中で、支給された服に着替え店内へと入った。


「よっ!奏汰かなた。学校はどうだい?」

「おかげさまでもう冬休み到来です。でも冬休みになってもバイトするんでよろしくお願いします」

「そうか、そうか。そう言えば妙な子が奏汰に渡してくれってさ。クリスマスも近いし、クリスマスぐらい女の子と一緒にいればいいのに」


 ほいっとバイト中なのに店長は俺に一通の手紙を渡して事務室へと入ってしまう。誰だろうかと休憩時間に読もうと、ポケットに入れ休憩になるまでレジ打ちをしていった。


 休憩に入る時間帯になり、さっきくれた手紙を見てみるとクリスマスの日、ネオールショッピングモール広場で待つとあった。

 クリスマスの日もバイト入れてるんだけどな。どうすっかなと思いながらも喧嘩を売ってきたのは判断しにくいが、売られた喧嘩は買う主義だったけどそれは昔の俺。

 これはパスだとゴミ箱に捨て店長が差し入れてくれたおでんで温まった。

 

 夜遅くまでバイトをこなしお疲れ様でしたと言いながら、さっさとボロアパートへと帰る。店長、俺の事情を知ってるから色々持たせてくれたけど、ほとんと賞味期限が近いものばかり。それでも嬉しいしケーキもあるから母は喜ぶだろうな。

 ただいまと扉を開けると母の姿がなく、机に置き手紙が置いてあった。

 

 大好きな奏ちゃん、すぐ戻ってくるから心配しないでね。行ってきます。


 あの鞄もないからきっとその鞄を持ってお出かけでもしたいのかと、ケーキは母が戻って来るときに一緒に食べようと冷蔵庫に入れそれ以外を食べていった。


 翌朝、俺が起きても母は帰っていないことがわかり、何かあったんじゃねえかって気がしてきた。心配になった俺はマフラーを巻き伊達メガネをして寝癖のまま周辺を探す。

 母は襲われるような人じゃねえけど、高級バッグを持っていたからもしかして奪われたとかじゃないよな。


 そんなことを考えながら周辺を探している時に俺は同じスーツを着た連中が俺を監視しているように見えた。どう言うわけかは知らねえけどこいつらに母が奪われたんじゃねえよな。警察でもなさそうだし何もんだよと、俺は家と逆方向を走った。


 俺が気づいたことでスーツの奴らも動く足音が聞こえ、やっぱりなんかあると逃げていたら空からなんかが降って来やがる。

 咄嗟に足を止め何が降って来たと砂埃が消えるのを待っていると助けてと微かに聞こえた。消えた瞬間、なんだと俺は一歩下がる。


「ダゲヅミ、ダゲヅミ!」


 こいつ何言ってんだ。てかバケモンじゃねえかよ、それに捕まっているのはまだ子供だぞ。どうする俺。今俺は誰かにつけられているのは確かだ。

 このまま逃げるか。それともバケモンを倒して子供を救うか。

 あちこちから雑音のように助けてと誰かが叫んでいる声が聞こえる。昔からとても遠い場所からでも聞こえることがあり、普段は聞こえないようにと耳を塞ぐためヘッドフォンをしていた。

 最悪な事態になりながらバケモンがまた喋り出す。


「グイデレヅ、グイデレヅ」

「何言ってんのかは知らねえけど、その子供離してやれよ!」


 あまり考える時間はなく、ここで変なバケモンにやられようとも、子供を救うことを決め拳を作りいつものように殴った。それによって子供を離したことでキャッチしてあげる。


「大丈夫か?お家まで連れてってやるからもう少し我慢できる?」

「……うん」

「俺から離れるんじゃねえぞ」


 子供を抱っこしたまま近づいてくるバケモンを今度は蹴り飛ばした。こんなんじゃ倒せないかと倒す策を考えていると、同じバケモンがきちまって、倒せていない俺の選択肢は全力で逃げることだ。

 俺の足について来れるかと俺は全力で走る。


 中学の時は陸上部でもあったから、足の速さは誰にも負けやしない。ただ陸上部をやったのはたったの一年だったけどな。

 これくらい逃げ切れば平気だろうと、子供を降ろして息を整えながら子供に聞いた。

 

「お家はどこ?」

「お家には帰りたくない!だってあの化け物が住み着いてるんだもん!」

 

 今なんて言ったと言わんばかりにあのバケモンが俺とこの子を囲みやがった。子供を庇って倒せなかった俺に倒せるわけねえじゃん。

 母はもしかしてこのバケモンにやられちまったのか。そうなのかと来ると感じ、できないんじゃない、やらなきゃ俺たちが危ねえとパイプが転がっており、それを拾って俺はバケモンをぶっ叩いた。


 まず一体目となんか倒せたことを確信し絶対に離れるんじゃねえよと、子供に告げ数体いるバケモンを倒す。俺たちを囲むバケモンは全て倒せたけど、この後どうすっかな。子供は俺にしがみついてまだ気配がすると怯えている。


 俺はあんなでけえバケモンは初めてだけど、俺は昔っから似たようなバケモンを見てきた。それと同じようなものなのだろう。今のところ出る気配がなくとも、この子の家にいるんだったらなんとかしねえとな。しゃがみこの子に聞いた。


「お家に連れてってくれねえか?今ならそのバケモン退治できそうだ」

「さっきのより大きいよ」

「大丈夫、なんとかなるさ」

 

 母が消えた理由がもしそこにあるのなら確かめておきたい。こっちだよと子供が俺の手を引っ張り家へと連れてってもらう。だんだんと助けを求める声が強くなり、きっとこの子のご両親が求めているんだ。耳塞ぎてえし、こんな薄着で来ちまったから寒すぎる。

 ブルブル震えながらこの子の家に到着するとバケモンが家になっていた。これは流石にこの子が怯えるわけだと、パイプを強く握る。


「よく耐えて来られたな。俺があれを倒してお家戻してやるからどこかで隠れろ」

「お兄ちゃん気をつけて。あいつの液体に触れるとこうなっちゃうから」


 肌を見せてもらうと火傷のような痕が残っており、気をつけようと頭を撫でて家へとお邪魔する。軋む床を踏みながらゆっくりと二階へと上がった。

 家の中は普通の部屋ばかりで窓ガラスも普通に開けられるがバケモンの足が垂れている状態で、よく景色が見えなくなっている。それにバケモンが屋根に登っているせいか部屋あたりが暗く感じた。

 どっから屋根まで登ろうかと考えていたらお兄ちゃんと俺を呼ぶ声がした。隠れていろって言ったのにその子は屋根に登る方法を知っているらしく教えてもらうことに。

 屋根裏の階段を登り小さな小窓から屋根に登れるらしいが液体があちこちと垂れている。


「倒そうとして近づいたらこの液体が垂れてきちゃった」

「なるほどな。俺は平気だからちゃんと隠れてろよ」

「うん」


 下へと降りて行くのを確認し、さて倒せると信じて液体に触れず小窓から屋根へと登った。するとバケモンは俺と目が合うと目を見開いて、ナルグと言いながら屋根から降りようとしている。

 さっきから意味わかんねえ言葉言いやがってと俺は思いっきりパイプで殴った。そしたらダレラヤとまた意味わかんねえ言葉を言って灰となり消えていく。

 これでよしと思ったけれど俺の身体に異変が起こり、俺は屋根から落下し意識が遠のいた。

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