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アリス・フローゲンハイトの憂鬱

「ちょっと、セバスチャン。セバスチャンってば! もう! なんでこないのよ! 私の執事のクセに寝坊とかマジでありえないんだけど」

「お嬢様。セバスチャンは昨夜。息を引き取りました」

「ん、あ。そうだったわ。ついうっかり殺しちゃったんだわ」


 アリス・フローゲンハイトはれっきとしたお嬢様である。

 代々公爵の座を持つフローゲンハイト家の長女にして次期当主候補。


 まさにお嬢様中のお嬢様である。


 それに加えて勉学も剣も魔法も同世代の中でもトップクラス。いわゆる万能型お嬢様である。

 そんなアリスに憧れる人は数知れず。ファンクラブは乱立し、彼女から声をかけられただけで闘争が起きた。


 しかし、アリスにも一つだけ欠点があった。

 ファンクラブどころか親しい友人のほとんどが知らないアリス最大級の秘密である。


「セバスチャンがいないなら、メイド。今日の測定をはじめてちょうだい」


 毎朝、朝食の前にアリスはとあることを行っている。

 いつもはセバスチャンが来るのを待ってから行う日課であったが昨日セバスチャンが不慮の事故で死んだため、メイドと2人きりで始めることにする。


「では、お嬢様。魔法防壁を解除してください」

「はいはい」


 めんどくさそうに右手を振るうアリス。

 たったそれだけでアリスの周囲に展開されていた複数の魔法障壁が消えさった。


 アリスの周囲には常時、魔法障壁が展開されており低級の魔法攻撃は一切受け付けない。

 さらに、たとえ中級魔法であっても属性の違う障壁を複数もまとっているためほとんど無効化できる。


 そう、アリスは天才なのである。


「では行きます。『レベルサーチ』」


 ピンク色の魔方陣より明るい光が照らされアリスを包み込んだ。


 その魔法はレベルサーチという人間がレベルを確認する唯一の方法である。


 この世界ではレベルが全ての価値を決める。

 国王や大臣、将軍と言った重職はもちろんのこと田舎の村長ですら高レベルでないとなれない。


 それは人間だけでなくあらゆる生物も例外ではなく。レベルが100京を超えるとたとえミジンコであっても神と崇められる。

 山田太郎……セバスチャンをこの世界へと呼び寄せたミジンコ神の『タマちゃん様』もレベル100京をゆうに超えている。


 このようにこの世界においてレベルは人生をも左右する重要なステータスなのである。


「お嬢様。まだ『レベル1』でございます」

「そう……昨日あれだけ頑張ったのに」


 アリスはレベルが上がりにくい体質だ。

 どんなに剣や魔法の才能があってもレベルが上がらなければ、強い装備を身に着けることも強いスキルや魔法を覚えることもできない。


 アリスは天才であり、レベル1で取得できる魔法やスキルをすべて覚えているため、今はまだ周囲の人たちもレベルが1であることに気づいていないがいずれバレる。


 それに今通っている学園を卒業するときにはレベルを提出しなければならないし、そもそもレベルが低いと卒業試験の模擬試合で負ける。


 頭の良いアリスにはそれがわかっていた。

 だから、毎日経験値を得るために秘密の特訓をしていたのだが未だにレベルは1のまま。


「お嬢様。今日の夜間の特訓メニューはいかがいたしましょう。昨日のこともありましたし、そろそろ新しいことに挑戦してみてはどうでしょう」

「そうよね。それに新しいセバスチャンも用意する必要もあるわ」


 うふふとアリスとそのメイドは笑いあう。

 不穏な言葉も流れていたがセバスチャンになったばかりの山田太郎がしるよしもなかった。

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