台風が過ぎる時
「そこの君たち、生きてるのかい!」
「「「え?!」」」
「やっぱり、君たち生きてるんだね?ゾンビじゃなあよね?」
「あ、あぁ、俺たちはゾンビじゃない。生きてるよ」
話しかけてけたのはちょっと太り気味の中年男性だった。ゾンビだと思って警戒したが、杞憂だったようだ
「なんと!あの空襲の後に生きてる人がいるなんて!奇跡ですね。ところで君たちはこれから行くところがありますかな?」
「いえ、行く場所なんてありませんよ」
「なんと、なら!なら!ぜひ私たちのところに来てください!ええ、是非是非」
なんでも生き残った人たちが集まっているところがあるらいしい。多少ゴリ押し気味な気もするが行くあてもないのでそちらに行くことにした
「こんなところあったのか」
そこは言わばシェルターだった。永太達は聞いていなかったが非常事態宣言のあと空襲がすぐ知らされその時にシェルターも案内されたらしい
もっとはやく知りたかったと思いながらもシェルターに入る永太達。その中には
「こんな、、」
「思ってたよりも多いな」
そこには沢山の人がいた。小さい子からお年寄りまで。しかし誰も彼も顔に浮かべているのは苦痛や悲しみなどの絶望に近いものだった
壁に向かってぶつぶつと呟き続ける人まで
「ようこそ、我々の家へ。ここには食料もまともな寝床もないのですが、まあ外にいるよりは安全でしょう」
「あ、ああ」
ここはシェルターなのだ。みんな逃げるためにここに来た。そのときに今後の食料のことを考えた人はいったいどれだけいただろうか
「しかしいいのか俺たちを招いて?これを見るに人数的にもすでに限界。食いもんもない。少しでも生き残るためなら俺らをここに入れないほうがいいだろ」
「ええ、ええ、たしかにそうかもしれません、しかしそれは貴方達を見捨てる理由にはならないのですよ。たとえ人が少ない方が生き残る可能性が高いとしても私は容易に誰かを見捨てれないのです。まあ、人が多い方が安心するというのもあるかもしれませんが。そういえば!自己紹介がまだでしたね!私ノブオと申します」
「ああ、俺は永太です。よろしく」
「ケイヤだ」
「わ、私はカノです」
「はい!はい!よろしくお願いします!」
そういい一人ずつ握手を交わすノブオ
しかし最後の一人と握手するときだけ視線、というか雰囲気みたいなものが変わったのがわかったのは永太だけだった
日が暮れシェルターの中はすでに眠っている人が殆どだった
あの後軽い食事を済ませた永太達は街にでて食べ物を探していたが天候が悪化しシェルターで何もない時間を過ごしていた
永太達に用意されたスペースで何をするでもなく固まっていたらいつのまにか日が暮れてこんな時間にになっていたのだ
「はあ、シャワーでいいから浴びたいなあ」
「そういえば保存庫の奥にシャワールームがあったぞ」
「ほんと!?ちょっといってくるー」
そういい速攻で行ってしまったカノさんを見送る永太達。ケイヤが視線でお前はどうすると聞いてくる
「俺はいいや、動く気にならない」
「そうだよなぁ、ここは安全そうだしゆっくり寝れそうだ」
そう、ここは安全なのだ
ケイヤは速攻で寝てしまった。永太も寝ようとしたがカノさんが帰ってきたとき誰も起きてないのもかわいそうなので起きてることにした。単に慣れなくて寝れないだけかもしれないが
しばらくたっても帰ってこないカノさんを疑問に思っても「まあ、女の子だし長いんだろ」と思い深くは思わなかった
あたりを見渡す。一応のため見張りが入り口でゾンビ達がこないか見ているらしい。それ以外の人は皆寝ていた
(あれ?ノブオさんがいない?)
ずっと周りを見ていたがここを出入りした人はトイレに行った人が4人。そのうちカノさんがシャワーに入ってからここを出てって戻ってきてないのは?!
ありえる、握手した時のあの舐め回すような視線といい、こんな限界なのに無理やり俺らを向かい入れたということ
永太の頭の中で嫌な予感がつぎつぎと出てくる
「ケイヤ!起きろ!ケイヤ!!」
「うーん、、うるせぇぞ永太。みんな寝てんだから静かにしやがれ」
「それどころじゃ!?、、、まさか、、寝たのか?」
ケイヤは反応しなかった、きっと寝たのだろう
となれば一人で行くしかない
俺は一応コンビニから取ってきたシャッター棒を手に一人シャワールームへと向かった
地下だというのに外の暴風や豪雨の音がすごい聞こえてくる。きっと相当な嵐が来ているのだろう。そんなことを思いながら
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あれから一度もお風呂に入ってなかった私は汚れきったこともあってとてつもなくお風呂に入りたかった
だからたまたま声に出してしまったのだろう
シャワーを浴びたいと
「そういえば保存庫の奥にシャワールームがあったぞ」
本当に?!さっすが粒谷くん!よく見つけてくれた。早速行こう、今行こう
シャワーが浴びれるかもしれないということで舞い上がった私は
「ほんと?!ちょっといってくるー」
と言い残し颯爽とシャワールームへ向かった
うしろで何か言ってる気がしたけど今はそれどころじゃない!
お風呂がないのは残念だけどシャワー浴びれるだけでもすごい嬉しい!
と私は思っていた
シャワールームはたしかにあった
誰もいなく電気が付いてないがシャワーの蛇口をひねればちゃんとお湯が出たので暗くて不便だけども浴びることにした
シャーーーーとシャワーの音が響く。暗闇なのでその音はさらに鮮明に聞こえた
こうしているとまるで昨日今日のことが嘘なのではないかと思う
しかしそんなことはなく、これから一体どうやって生きていけばいいのかと不安になる
一度は死のうと思いみんなに心配もかけた
いろんなことを考えていたせいか周りの音など全く聞いていなかった
だから気づけなかった。まあ、気づいたとしても意味はなかったかもしれないが
「キャァー」
突然後ろから体を触られて悲鳴をあげる
「おっとぅ、静かにしなければダメですよ。まあここはみんながいる場所からだいぶ遠いからいくら叫んでも聞こえないと思いますが」
ウヒョヒョと笑うその人は
「!?、ノ、、、ノブオさん?!どうし、、て、や.....やめてください」
ノブオさんだった。どんどん触りが過激になっていき、いろいろなところを触られる
「ウヒョヒョ、ウヒョヒョ、たまりませんなぁ!ええ!ええ!」
完全に体を抑えられ抵抗が出来ない
「こ、、、こんなこと、、、して、、」
「んーーー?なんですかぁ?何か言いたいことがありそうですねぇ!」
「こんなことして、、、いいと、思ってるのですか!」
必死に言い募った私は
「????、きーみー?なんか勘違いしてるよぉ?」
「え...」
一瞬なんのことかわからなかったが次の一言で疑問は絶望へと変わる
「あのねぇ、わかんないみたいだから教えてあげるよ。この世界はもう終わりなのぉ、希望なんてなんもないんだから。いいと思ってるの?って言ったよねえ、もちろんいいと思ってるよぉ、なんたってこのことは誰にもばれやしないんだから。誰も気づかない、こんな世界だもん、人一人いなくなったっていまさらだよぉ」
さらにウヒョヒョと笑いながら続けるノブオ
「あのねぇ、君はこれから僕に犯されて、そのあと、、死ぬんだよぉーーー!」
「うそ....でしょ、、」
「うっそじゃないよー、どうせ遅かれ早かれみんな死ぬんだから、それなら今のうちに楽しんで置かなきゃ損でしょ?」
「もしかして、私たちをここに入れた理由って....」
「おーー、察しがいいねぇ嬢ちゃん、お前らを迎え入れた理由はあんたと遊ぶためさぁ!まあ一回で殺すのももったいないがあんたの連れがなぁ、、まあ嬢ちゃんを殺したあと、嬢ちゃんの死体をあいつらに見せ、その間に後ろから殺してやっから安心しなぁぁ!!」
(私のせいで粒谷くんたちが....)
ごめんなさい、ごめんなさいと心で言い続ける私
ついに私を押し倒したノブオが上に乗ってくる
ああ、私はもうダメ
最後に一度、「ごめんなさい」といい涙を流す
そしてとうとう落ちるとなったその時
ゴヅッと鈍い音が聞こえた。そのあとすぐ体が軽くなったのがわかった
よくわかんないまま目を開けるとそこには
「はあ、はあ、危なかった、、大丈夫かよ、カノさん」
そこには血のついたシャッター棒を片手に息を荒げる粒谷君がいた