崩壊世界
「....太、、、永太!!」
「うえ!?、な、なんだ」
「なんだじゃねぇよお前!、ボーとしやがって!死にてぇのか?」
両親がゾンビになってる光景を見て思考が止まっていた永太を現実に連れ戻してくれたのは中学の時からの友達のケイヤだ
皆パニックになっている中こいつも冷静ってことは俺と同じでパニックになってる人をみて戻ったんだろうなと予想をつける
「なあ、お前が見つめてたあれって、その、、、お前の.....」
「いいんだケイヤ、すまんな心配掛けちまって、早く逃げよう」
「そ、、そうだな、何をするにもまず命がないと意味ないもんな」
ケイヤはそれ以上何も言わなかった。言えなかったのかもしれないが
クラスにはもうほとんど人がいなかった
以前警報は鳴り続けていた
永太はケイヤとともに屋上へと逃げていた
別に馬鹿だから屋上に逃げたわけではない
屋上は普段鍵が掛かっているのだが先に来た誰かがすでに壊した後だった
この学校の屋上は隣のビルとつながっているのだ
屋上には他にも生徒がいっぱいいた。ゾンビ達はすでに学校に入り込み校門から出ることはまず不可能。そして逃げ遅れた生徒たちの絶叫とも呼べる悲鳴が1階あたりから沢山聞こえてくる。また助けを求める声すらも聞こえてくるが、大抵叫んでいる途中で途切れていた
悲鳴の理由がなんなのかは想像もしたくない
隣のビルに行くためには1メートルちょいくらいの幅を飛び越えなければならない
普通なら誰でも飛び越えられる、というよりまたぐぐらいの距離なのだがここにはパニックに陥った人たちが沢山いる、我先にと逃げようとする人たちは、時につっかえたり、誰かに押せれたりなどして下へと落ちて行く人はそう少なくはなかった
きっと誰かが漏らしたのだろう、それが辺りに散らばっていて滑りやすくなっているのも原因の一つかもしれない
屋上から落ちは人はというと、、それは、きっと助かる人は少ないだろう。最初の方に落ちた人は飛び降り自殺となんら変わらず死ぬだろう。あとから落ちた人は下にある死体やらなんやらがクッションになって助かるかもしれないが、下には奴らが沢山いるのだ、助かるにはゾンビどもに狙われないという相当な運が必要に鳴りそうだ
なんとか隣のビルに移れた俺たちは次の行き先を考える
迂闊に動けば死ぬ、ここで待ってれば死ぬ
そんな状況なのだ。慎重に、しかし迅速に移動しないといけないという状況
自然と焦りが湧いてくる
他の人たちはゾンビが学校に群がっているうちにと、下に降りていった。このビルもいずれゾンビたちの支配下になるだろう
しかし焦っていたのは永太たけだったようだ
ケイヤが家の屋根に飛び移りそっから逃げようと提案してくる
その案に反対するとこがないので永太も「それでいい」と賛同する
ケイヤを見ていると永太も自然と落ち着けた
そしていざ行動しようとしたそのときだった
「わ、、...私も!連れてってください」
そこにはいつの間にいたのか女子生徒がいた。
というか隣のクラスのカノ コノカという学校でも人気の少女だった
いきなりの女の子の登場に一瞬びっくりしたが断る理由もない永太たちは同行を許可し、一緒に下を目指した
2階の窓ガラスをケイヤがぶち破って民家の上を辿ってなんとか学校から離れていく永太達
道路を見るといたるとこをにゾンビがいた
学校が一番集まっているだろうが、この住宅街にも、そして、きっと他のどこでも同じ光景なんだろうなと思いながら屋根の上を走る
慣れないところを、しかもこんな意味わからない状況の中走るのはやはり冷静に見えていても、身体的に、そして精神的に永太たちを蝕んでいく
しかしそれでも休むことなく、もう学校が見えなくなるくらいのところまで逃げてきた。体力も限界に来ており取り敢えず休憩することにした
「いったい、どうなるんだろう」
「わかんねえ、でも今んところは逃げるしかねえよな」
「そうだね、きっと自衛隊とかがなんとかしてくれるさ」
今のところ周りにゾンビはいないがいつどこから現れるかわからないので体は休めても精神面は全然休まらないが会話をする事でいかんせんマシになる、これが一人だったら不安で押しつぶされていただろう
そして、
「食いもんさがさねぇとな」
「そうだね、せっかく生き残ったのに食べなきゃ死んじゃうもんね」
「身を守るためにも武器欲しいな。あいつらの体腐ってて脆いから攻撃出来れば逃げる隙も増えるかもしれないし」
そうなれば次の行き先はどんどん絞られていく。そして、行き先が決まった
「いつまでもここいにるわけにはいかねぇし取り敢えず安全そうな場所と食いもんを探そう、その次に武器だ。それまではこの家の庭にあった物干し竿を借りてこう」
「うん、わかった」
「ああ、それでいいよ」
次の方針が決まりすこし心に余裕が生まれる
物干し竿を手に持ちまた屋根の上を移動する
ここは住宅街、周りの家を見ると殆ど窓が突き破られたりしていた
「それにしてもひでぇなこれは」
まるでゴーストタウンだとケイヤが言う。永太もそう思っていた。生活感がないというか。人の気配というものが全くといっていいほどないのだ
「私たちの他にどれぐらいの人が生き残ってるんだろう」
「わかんねぇな、ただ、この状況で生き残ってる方がすげぇのかもな」
無言でいるのはそれだけで不安になっていく
それがみんなわかっているからか話を途切れないようにと皆必死に言葉を紡いでいた。まるでそれが生きる術だとでも言うように
しかしこんな状況で楽しい話題で盛り上がれるはずもなく話のネタは常に不安になるようなもので永太達の心もどんどんすり減っていく
そんなときだった
「おい、あれ...」
先頭を歩いていた永太が見つけたのはゾンビだった
相手はまだこちらに気づいてはいない。ここはバレずに通り過ぎるべきなのだろう
しかし親のゾンビ姿を見たことや道中なんども聞いた悲鳴。そして目の前にはまた命を食いむしるためのみに徘徊しているかのようなゾンビ。いままでどうにか保っていた永太の精神ゲージはついに尽きた
「うああああああああああああああああ」
「永太!やめろぉ!」
ケイヤの制止も聞かずにただ一心にゾンビに向かう永太、ゾンビもその発狂にも似た雄叫びに気づき永太を食べようとその朽ちかけた手を前に出す
ステンレスで出来た物干し竿はそのリーチを生かしゾンビの手が届かぬ範囲にも関わらず頭部に直撃した
ズゥゥンと鈍い感触を感じながらさらに打撃を続ける永太、、しかしそれでもゾンビは倒れなかった
相手は腐っても元人間。物干し竿で殴られたぐらいで死ぬほど弱くわないのだ。さらにゾンビ達には痛覚などない、故に痛みに怯むことがなかった
それは永太でも理解できた。しかし理解できたからといって受け入れられるかはまた別の問題
いくら殴っても動きを止めないゾンビに焦りを感じる永太
「しね!しねえええ!!はや、、く、しっねええ」
「粒谷くん、その人はもう死んでるよ」
状況にまったく似合わないツッコミが飛んできた。カノさんもいろいろと限界なのかもしれない