第六章 動き始めた世界+α
所変わってウィズミックの城門付近。
一人の人間と一人の獣人が今まさに旅立とうとしている。
ソフィーとスワリス。共に相変わらずのスーツとピンク色の服だった。
「さて、スワリス。街道の別れるとこまで一緒にいきましょ?
馬はどうする?」
ソフィーの言葉にスワリスは怪訝そうな顔をした。
そして肩をすくめ、ふぅと息を吐いた。
「馬なんて。こっからセントラルまで何日かかると思って……。
まあ、しょうがないか……」
さ
スワリスは言い終えると口笛を高らかに吹いた。
街の周りの草原いっぱいに風のようにそれは響き渡る。
「スワリス?」
ソフィーは同僚の奇妙な行動にポカンとしている。
「あぁ、今の?
あれは口笛に風の能力を付加させたんだけど…
大丈夫、迎えがきたよ」
雲のむこうを見やると、黒い点が急速に近づいてくるのが見える。
とっさにソフィーは身構えるも、スワリスに笑ってとめられた。
「だいじょうぶだって。あれは私が呼んだ私の友。クロイツとシュリアだ。襲わないから大丈夫だって」
スワリスの紹介と同時に風が辺り一面に舞う。
日差しをさえぎったそれらは巨大な二羽の鳥であった。
クロイツは漆黒の羽と鋭い爪を持っていて、シュリアは紅い羽に硬い嘴を保有していた。
双方ともに太陽の光線を浴び、その艶やかな羽を輝かせている。
「こいつらは昔からの親友でな。
休みとかになると良く遊びに行くんだ。
んで、空から行けばセントラルも、私の故郷も近いだろ?
さぁ、出発出発」
スワリスはシュリアに、ソフィーはクロイツの上へ。
乗りやすいように翼の付け根には鞍がついていてスワリスはらくらくと、ソフィーは何とかと言ったように収まった。
「ちょっ……これ高い…」
「安心して。飛んだら尋常じゃないくらい高いから」
ソフィーの顔が若干青くなるのもお構いなしにスワリスは言い放った。
五日後、ソフィーはセントラルへ、その二日後、スワリスは獣人の里へと到着した。