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第五章 異変

どこまでも広がる草の絨毯。そこに伸びる一本の細い道。

私達は一路、セント・ヒアルリアへの旅を続けています。


それはまだ日が昇ったばかりで、草についた水滴がそこらからキラキラと輝いている頃。



「ニャ?」


最初に気がついたのはムーン。ピンと耳を立ててキョロキョロと周囲を窺い始めました。


「どうした?何かあったか?」


カノンはまだ気がつかないようで不思議そうにムーンを見ています。もちろん私も。


「う〜ん、何か匂いが変わったニャ〜って」


匂い?

カノンもわかってないようです。私達はともに鼻をひくつかせましたが、何もいつもと変わりないようです。


「匂い?そんなんするか?」


「しないですよね?」


しかしムーンは確信に満ちたような顔で周囲の匂いを嗅ぎ始めました。


「なんかこう……甘い匂い。花畑の真ん中にいるような…」


「でも匂いなんて…?」


同意を求めようとカノンを振り返ると、カノンもムーンと同じようにキョロキョロとしていました。

しかしムーンと違って、その顔には疑問の色が窺えます。


「……ん?あぁ。何か匂いって言うより、気配みたいなのを感じるなって」


「気配?匂いじゃなくて?」


「あぁ。でも何かがおかしいんだ。見られてる感覚、有るけどないだろ?」


矛盾しているようなカノンの言葉でようやく私も何か変だなぁ〜と思い始めました。

普通、見られてる感覚が強い時は、相手が見てる方向から何かしらの気配を感じます。

しかし、今回はどうも勝手が違うんです。


というのも、見られてる方向が一方向ではなく、全身を見られているような感じ。


「何か……風の基本形、"見"に似てません?イメージっていうか」


「"見"か……確かに違ってはないけど……風の魔力に比べるとフワフワした感じだな」


魔力に慣れると、その属性毎に魔力を捉えるイメージが違う……らしいです。

火は内側から力強く。

水はサラサラと流れるように。

土はシッカリした土台のように堅い。

風は柔らかい毛並みのように。

そして雷はピリピリと痺れを。



こんなん出来るのはカノンくらいだと思いますがねぇ……


「違うニャ。この魔力は属性を感じない。

それなら属性がない魔術ニャ」


「おいおい、無属性魔術か?ありえないだろ、それは」


カノンにムーンの言ったことが理解できたようでしたが、私にはさっぱり。

だいたい、魔術って属性有ってこそじゃなかったんでしょうか?


「どういうことですか?」


「あぁ、ルルは知らなかったか。んじゃそれから教えるか。


本来、魔術には属性がある。それは知ってるな?シャインに住む者、というか生物には皆属性がある。

そして自分の属性の属性以外は使えないんだ。もちろん、賢者と呼ばれる一族は例外だがな。魔力を生まれつき持たない者の説明は長くなるから今回は省くな。

属性は違えど、特殊技以外は基本的に使える。

ルルには特殊技以外教えてないけどな。ルルが基本技と呼んでいるのは、属性魔法であって一般魔法ではない。

一般魔法とは、鍵を開錠するとか何でもアリだ。だが戦闘には全くと言って良いほど使えない。


だから敢えて教えなかった。


話が逸れたな?無属性魔法は属性魔法ではあるが属性は無い。

魔力の純粋なる力そのもの、それが無属性魔術だ」


長いし良くわかんない説明でしたね……


「つまり戦闘向きな一般魔法みたいな感じなんですね?それのどこが有り得ないんですか?」


「無属性魔法失われた魔術。精霊の世界には未だ残ると言われるがな。

無属性魔術は何者にも影響を与えられていない力。それゆえに酷く不安定なんだ。シャインの大地が特殊な磁場を持っていて、すべての魔力を安定した属性魔術に変えてしまうらしい」


要はありえない魔術って事だけはわかりました。

それだけでも十分。


「ま、くよくよわかんない事をわかんないなんて言っても始まりませんよ。頭でわかんなければ足で。これ、基本です」


私は手綱を操り、ほんの少し速度を速めました。すると見られてる感じは若干ですが弱まり、なんだか繋がれていた鎖から解放された気分です。

カノンやムーンもそれに気がつきなんだか生き生きとしているようにさえ見えます。


「やっぱり行動は吉、ですね」



小さな泉を越え、いくつもの丘を越えると、風景が変化していくのに気がつきました。葉が枯れていくなと思えば、すぐに木は丸裸の状態に。

そして急に気候が変化し、突然冬が訪れたかのようで、吐く息が白いのがわかります。


今まで真夏のような気候でしたから、余計にそう感じてしまうのかも知れませんが……


とにかく、私達はほとんど薄着。

急いで黒のコートを羽織るも鳥肌が立ち、振るえもとまりません。


「な、なんだってこんな寒いんですか!?」


「俺に聞くなぁ!」


「寒いニャ〜」


「何言ってんですか!そんなもこもこの毛皮着て!」


そんなやり取りも途切れがちになり、いつしか皆押し黙ってひたすら馬を前に進めることが暗黙の了解となりました。

こんなとき、マスターじゃないにしろ、せめて火属性がいればなんてつい思ってしまいます。



ぁぁああぁぁあぁ……寒い…………寒………………ぃ……



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