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翌朝、なっちゃんから電話で昼から川遊びに行こうとの誘いがあり、午前中は庭の草むしりと宿題をやっていた。
おばあちゃんも畑仕事が終わった後は、シルクスクリーンとかいう透けたふわふわのキレイな布で、お花の絵を作るとても根気のいる作業をしていた。
おばあちゃんの家は昔ながらの農家なので、家中の窓を開けていればとっても涼しい。
おばあちゃんの作った水出しアイスティーに、少し砂糖を入れて飲む。
水でゆっくり出すと、とても味がまろやかになるのだ。
本当はなにも入れないで飲むのが美味しいそうだが、私は砂糖を入れさせてもらう。
ちょっと入れただけで、すごく甘くなっていい香りがする。
おばあちゃんと休憩をしていると、なっちゃんから聞いたお嫁さんの幽霊を思い出した。
「おばあちゃん、奥の家幽霊出るって聞いたけど。」
ん?という感じで私の顔を見たおばあちゃんは
「聞いたって、なっちゃんからかね?」と言った。
「うん。お嫁さんの幽霊が出て、あそこのおじいさんおばあさんが家を出てったって。」
「何を馬鹿なことを。あそこの家のおじいさんが病気になったから病院に入ってて、おばあさんは看病でついてるだけ。」
「えっー、そうなの?なんか死んだはずのお嫁さんが、台所に立ってたり、洗面所で擦れ違ったりして昼も夜も出るって。」
「まあ、そんな噂が出てからに。とんでもない。」
「えっー、じゃあ違うの?」
「そんな話、あそこの家から一言も聞いてない。」
「あぁそうなんだ。噂かぁ。」
「噂よ。」
「噂ねぇ。」
「まぁ、お嫁さん亡くして気の毒なのに、そんな噂が。」
「そうだよね。若かったんだよね。」
「病気で何回も入退院繰り返して、とうとう亡くなって、あそこの家は大変だった。だからお父さんも体壊したんだろう。」
「そういえば、お嫁さん28歳だったんだよね。息子さんと年離れてない?息子さんいくつ?」
「さぁ、45位だったかねえ。」
「45?そんなに年離れてたの?」
「そうなものだったと思うけど。」
「いやぁ、いいねえ。そんな若いお嫁さん。」
「何を言っとるんね。」
「でもそんなに早く亡くすのは、悲しいね。」
「その通りいねえ。」
とふたりでしみじみとして、お昼にそうめんを茹でて食べた。