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夏休み  作者: ひの
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ハッと目覚めると、まだ暗い車内だった。

フロントガラスからは、ぽつりぽつりと街灯に照らされる県道とその周りの真っ黒に沈んだ畑や田んぼが見える。

いつの間にか眠ってしまったようだ。


窓の外を見ると真っ暗な田んぼの中に何故か街灯がひとつぽつんと立っており、あぜ道を照らしている。

誰か来るのを待っているかのようだ‥。時計を見ると、高速を降りて、2時間以上経っている いつもなら30分で着くのに…。

夏休みでおばあちゃんの家まで、父に車で送ってもらっている途中だ。

今日は父が仕事を早めに上がり、送ってくれることになった。

夜の8時過ぎには到着の予定だったのだ。おばあちゃんの家は毎年通っているし、田舎で見通しも良く複雑な道のりでもない。

いつもの道を行っているはずなのに、もう夜の10時すぎだ。

「お父さん、ずいぶん時間かかるね。」 運転している父に声をかける。

「あれ、起きた?そうだねえ‥。」父が答える。「道、間違えるはずもないしねえ。ナビだってそのまま道なりです、だしね。」

「なんだかずっと道が暗いよね。こんなに暗かったっけ。」「そうだね‥。」

「お父さん疲れてない?ずっと運転してるでしょ。」

「うん、大丈夫。お腹が減ったけどね。」

「そうかあ。夕ご飯今日早かったもんね。」

父の、呑気さに少しほっとする。

私はこれはおかしい、尋常じゃないことが起きていると言う感覚がどんどん大きくなって、とても怖かったのだ。

もちろん、こんなに時間がかかる道ではないから道じたい間違っているのかもしれないという思いもあるが、とにかく変なのだ。

この県道に入ってから他の車や人を見ていない。

そして、田んぼや畑の間にぽつんぽつんと家が見えるが、どれも電気がついておらず、人がいる気配が感じられない。

ずっと、生きている人間は他にいないんじゃないか…という感じがつきまとっている。

それに、本当はさっきから運転している父の顔がよく見えないのが怖かった。私は後部座席に座っているので、父が振り向かないかぎり、よく見えない。

それにしても、暗いからだろうか、顔元が黒く沈んでいるように見える。

だから、父がごく普通に話しているのを聞いて、ホッとした。

それでも、この道の暗さ、街灯の灯りがない所は、真っ黒に見える。

どうして、いつになったらおばあちゃん家に着くのだろう…。

実はさっきから、やってみたいことがあった。

昔聞いたことだけれど、おじいちゃんが若い頃山登りをしていて、同じ道をぐるぐる周っているように思えたことがあったそうだ。

でも山では、そういう話はたびたび聞いたそうで、キツネに化かされたんだなと思って、持っていたおにぎりを一個、木の葉っぱの上に載せて道の端に置き、もう家に帰してくれよ、と祈ったのだそうだ。

その後15分ほどで山を下り、家に帰ったと。

お菓子があるので、これを道端に置き、おじいちゃんのように祈ってみたい。

だからコンビニがあったら止めてもらおうと思っていたが、コンビニも見ない。そのうちに、いつのまにかウトウトしてしまっていたのだ。「お父さん、道端で悪いけど、どこかでちょっと車止められない?私疲れちゃった。」

父が振り返って私の顔を見た。

「大丈夫?気分悪いの?」

心配そうにしている。

「ううん。ただちょっと体を伸ばしたいだけ。」「ちょっと向こうにバス停かな、車の待避所があるから、あそこに止めよう。」すぐ先の左側に道路から引っ込んだ場所があり、そこに父が車を止めた。

車から降りると、空気がひんやりしていた。

周りが田んぼだらけだし、山が近いからだろうか。

少し気分がよくなった。

しかし、車のエンジン音以外何も聞こえない。

シーンとしている。車から持ってきたお菓子の包装を取り、バスの標識の土台に置く。

おばあちゃん家に早く着きますようにと心の中で祈る。

父も運転席から降りてきた。

バス停の標識を見て「やっぱり間違ってないね。屋代町か…。もう10分くらいで着くはずだよ。」と言った。

「本当、近いね。やっとおばあちゃん家だね。じゃあ行く?」

「うん、もうちょっとだからね。頑張って。」「私は大丈夫。お父さんこそ。」

「よし、行こうか。」

急いで車に乗って出発した。

ものの5分も行くと、おばあちゃん家に泊まる時に通う近所のコンビニが見え、そこを左折すると毎回見慣れた家並みがあり、おばあちゃん家にあっさりと着いた。

おばあちゃん家の玄関には、煌々と灯りがついていた。

鍵がかかっていない玄関の戸を開け、「おばあちゃ~ん、来たよー。」と声をかける。

その間に父が車のトランクから荷物を下ろしている。

おばあちゃんが玄関脇の襖を開けて出てきた。

「まあ、やっと来たんね。えらい遅かったねえ。」

「うん。なんかねえ高速下りてから、2時間以上かかった。」「ああ、そう言えば新しい道を作っとった。

もう出来とったかねえ。道を間違えたかね。疲れたろう。はよ入りんさい。お父さんは?」

「車から荷物下ろしてる。私持ってくる。」

玄関から出て父といっしょに荷物を持ってくる。

「まあまあ、伸行。遅かったねえ。道迷ったんかね。」

「いや~。そんな間違えるはずもないけどねえ。もう今日中に着かないかと思った。」

「新しく間道作っとったけど。」

「いやあれは、完成予定が延びてたでしょう。土地の買収がうまく行かんで。まだ途中までしか出来てないはず。」

「まあいいから早く入りんさい。お腹は空いとらんかね。」「ああ、ペコペコ。」

「莉緒ちゃんは?」おばあちゃんが、聞いてくれる。

「私要らない。もうお風呂入って寝る。」「疲れたんでしょう。もうお湯が入ってるから早く入りんさい。」

「はーい。」パジャマの用意をして、お風呂場へ行く。

おばあちゃんは、台所で父の食事の支度をしている。

私は、お風呂に入りそうそうに布団に横になってそのまま寝入った。 



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