深い緑
深い緑の中で佇む鳥たち、ヘアサロンで働く私たち。
謎のお守りと謎の人物、色彩は日々変化する。
本当の色を私以外知らない、本当の色をあの人が教えてくれる。
私たちの背中に宿った命とは?
鳥籠に居たいの?出たいの?幸せな色は例え鮮やかな血の色でも。。
*序章*
枝に5本の指をしっかりと絡ませ立っていた。深い緑のずっとずっと奥の方の黒ずんだところにいた。生い茂る木々の中の。猫背の小さな木に痩せ細った枝は大粒の雫がぱちぱちと当たると上下に揺れては今にも折れそうだ。それでも、枝に5本の指をしっかりと絡ませ離れない。
枝が萎れて土の香りがする。優雅に高くそびえ立つ樹木たちを見上げている。そこから一直線に差し込む光は研ぎ澄まされた刃先のようにするどく痛みさえ覚える。その樹木に圧倒され、しょんぼりに似た悲しい色で私の羽は閉じたままだ。
くちばしには何も持たず、玄の色を持って。
色彩は持たず、心に破片の固まりを持って。
気品ある翼を広げ空へ舞い上がろうとしている鳥たちに憧れて。
彼らを見つめ、何も言えないでいる。
彼らを見つめ、「ここにいるよ。」とさえ。
彼らを見つめ、ただ、ただ、見つめて。
光と混じり合い深い虹色の羽を持った彼ら。
「・・・パキッ。」
静かな音をたて、この枝が折れた。その衝動で5本の指が枝から離れる・・・・
その瞬間、誰かが私を撫でたんだ。5本の指で力強く。
羽でもなく、頭でもなく、この背中をなぞるようにやさしく撫でた。くちばしに何かを加えて。
私は背中に命をもらい羽の広げかたを教わった。
それから、
私を鳥籠に入れた。
アナタは誰?