【翠竜編 その3】 仲良し三兄弟 次男編
翠の国、三人の殿下達は……多分とっても仲が良い。
「あ、カノンちゃんカノンちゃん」
「はい。何ですか? リルメア殿下」
第二王子リルメアに呼ばれて、廊下を歩いていた風音は彼の下へ近寄った。するとぐいっと肩を掴まれる。
「はいはい。こっちね」
「??」
誘導されるがまま通されたのはリルメアの私室だ。応接のソファに座らされ、隣にリルメアが腰掛けた。
一方その頃、次兄リルメアに呼び出されていたリアスは彼の私室に向かっていた。見慣れた扉の前に立ち、ノックをしようと握った手を掲げる。けれどその時、愛しい番の声が聞こえてピクリと反射的に動きが止まった。
「……待ってください、リルメア殿下」
「ダーメ。ほらちゃんと口開けて」
「でも……」
「恥ずかしがらないで、ね? カノンちゃん」
「だってこんなの……」
「ほーら、逃げないで。僕に身をゆだねて……」
会話の内容がどんどん不穏になっていく。焦ったリーリアスはノックも忘れて扉を乱暴に開いた。
「カノン!!!?」
「え? ……リアス君?」
ソファに座っている風音に覆いかぶさるような体勢だった次兄を押しのけ、彼女に抱きつく。キッとリルメアを睨みつけると、反対に彼はへらっと笑った。
「あーあ、見つかっちゃった」
「何をしていたのですか!! リルメア兄上!!」
「やだなぁ。そんな怒んないでよ~。ちょっとメイクのお手伝いしてただけじゃん」
「…………メイク?」
良く見ればリルメアの手にはピンク色の口紅が握られている。どうやらこれを風音に塗ろうとしていた所だったらしい。メイクだろうが何だろうが、自分の知らない所で勝手に風音に触れようとしていた事に腹を立て、リアスは彼女の手を引いて次兄の部屋を後にする。
一方風音はリルメアの意図に気づいて、部屋を出る直前に彼を見た。
「リルメア殿下……、図りましたね?」
「あはは~、分かっちゃった?」
どうやら彼もリアス君に構って欲しかったらしい。
やっぱり彼らは仲が良い…………のかもしれない。