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【黒竜編 その2】 第六感
正式に千紘とナキアス・ナルヴィが婚姻を結んでから三年後、無事第一子を出産。
「まぁ、殿下に良く似た女の子ですわ」
産湯で体を綺麗にし、清潔な布で包まれた赤子を乳母から受け取り、千紘はじっと生まれたばかりの幼子を見つめる。黒髪に浅黒い肌。目は開けていないけれど、まず間違いなく黒い瞳をしているのだろう。
(……ナルヴィの子だわ)
何故分かるのか、自分の第六感が恐ろしい。
「生まれたの!? チヒロ!」
「体は大丈夫? チヒロ!」
前室に控えていたナキアスとナルヴィが同時に飛び込んでくる。千紘と赤ん坊が無事な様子を見た二人は安堵と共に息を吐き、千紘の下に駆け寄った。
「お疲れ様、チヒロ」
「よく頑張ったね、チヒロ」
千紘は試しに黙って二人に赤ん坊を差し出した。しばらくそれを見つめた双子は同時ににこっと笑う。
「俺の子を産んでくれてありがとう、チヒロ」と、ナルヴィ。
「次は俺の子を産んでね、チヒロ」と、ナキアス。
「…………」
(なんで分かるんだろう……)
この時、室内に居た全員がそう思ったと言う。




