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ぶどうを渡したミーユ

作者: トイリズム

 


 ある村の外れに偏屈な占いのおばあさんがいたそうです。

 村のミーユという少女は、村の人におばあさんへのお使いをお願いされました。

 ぶどうを届けて、見返りに畑が豊作になるための占いをしてもらってほしいとのことでした。

 村では飢饉ききんに陥っていたので、おばあさんの手を借りることにしたそうです。

 

 村の人はおばあさんと会うのを嫌がるので、少女とは言え僧侶であるミーユにお使いをお願いしたそうです。

 嫌がる顔を見せずに、お使いにいくことを決めました。

 


 村はずれのおばあさんの家に行くと、扉を叩きました。


「おばあちゃん、いますか?」


「誰だね?」


「ミーユです」


「そうかい、一つ問題を出すよ。

 問題に答えられないなら帰りなさい」


 そう言うと、ミーユはとても困りましたが、おばあさんは問題を出してきます。


「重いものと軽いもの。天秤はどちらに傾くかな?」


 ミーユは首を傾げましたが、こう答えました。


「どちらにも傾きません」

「なぜだい?」

「乗せてないからです」

「入りなさい」


 正解だったのかはわかりません。

 けれど、中に入ることができました。

 家の中には天秤があり、それはどちらにも傾いていませんでした。


「おばあちゃん、ぶどうを届けに来ました。あと、村の畑の占いをしてください」

「受け取ると思うのかい?」


 おばあさんはまた問題のような質問を出してきました。


「はい」


 ミーユは素直に答えました。


「受け取ってほしいなら、森の奥にいる魔術師の所に行って、そのぶどうを届けておくれ」

「わかりました」


 ミーユは素直に森の奥へと行きました。

 森の奥には一人の男の人が立っていました。

 眼鏡をかけていて、立派な男の人に見えました。


「魔術師さんですか?ぶどうを届けにきました」

「そうだよ、ありがとう。ぶどうは確かに受け取ったよ」


 魔術師の男の人は微笑むと、ぶどうを受け取りました。

 ぶどうを渡したミーユは、おばあさんの家に戻りました。

 今度は問題を出されずに家に入れてもらえました。


「おばあちゃん、ぶどうを渡してきました」

「そうかい、ではぶどうを受け取ってあげるよ」


 そう言って、おばあさんは手を差し出しました。

 でも、ぶどうを魔術師に渡してしまった為、持っていませんでした。


「ぶどうを持っていません」

「では、畑の占いもできないねぇ」


 ミーユはとても困ってしまいました。

 とても正直なミーユは疑うこともしないで、ぶどうを渡してしまったのです。

 そんな正直なミーユの為に、魔術師が突然ミーユの後ろに現れました。


「君、困っているのかい?」

「はい、ぶどうをおばあちゃんに渡せなくて困っています」

「では、どうしたらいいかおばあさんに聞こうか。おばあさん、ぶどうをこの子に渡したら、この子からぶどうを受け取ってくれるかな?」

「いいけど、それは村の人からの贈り物では無くなったねぇ」


 おばあさんは意地悪そうに言いました。


「では、私がこの子に問題を出そう。それに答えたら、ぶどうを受け取って占いをしてくれるかな?」

「いいよ。ただし私が納得する問題を出すんだよ」


 おばあさんが魔術師に答えると、魔術師はミーユに問題を出しました。


「ぶどうを渡して占ってもらえるけれど、君は苦難の道を歩む。

 君は苦難の道を歩まないけれど、占ってはもらえない。

 どちらがいい?」


 苦難の道の意味が分からずに、ミーユは悩みました。

 けれど、村が飢饉に合って困っているので何とかしたいと思いました。


「ぶどうを渡して占ってもらって、苦難の道を歩みます」


 ミーユが答えると、魔術師は頷きました。

 おばあさんは、ミーユの答えに驚きました。


「ぶどうを受け取って占うよ」


 おばあさんは納得して、ミーユが魔術師から受け取ったぶどうを、ミーユから受け取りました。

 畑が豊作になる方法を占ってもらうと、ミーユはお礼を言います。

 おばあさんもぶどうのお礼を言って、優しく微笑みました。


 魔術師と一緒に外に出ると、分からなかったことの質問をしました。


「苦難の道とは何ですか?」

「苦難の道とはね。生きることだよ」


 魔術師はそう答えました。

 後者を選んで答えていれば、どうなっていたかは分かりませんが、生きることが苦難の道と言ったのです。


「あなたの名前は何ですか?」

「私の名前はクロル。実は神様なんだ。村の人達には内緒だよ」


 魔術師は神様でした。

 神様はあっという間に姿を消してしまいました。

 


 その後、おばあさんに教えてもらった方法を村の人達に伝えると、豊作になり飢えることがなくなりました。

 村の人達は、おばあさんに聞いてきたミーユに感謝しました。

 ミーユも感謝されて、とても喜びました。


 おばあさんの家の天秤は、まだどちらにも傾いていません。

 問題の重さを測れないからかもしれないですね。

 

 


 読了ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ・構成がうまい。 ・シンプルながら、キャラが立っている。 [気になる点] ・せっかくの落ちの文章に違和感がある。 『問題の重さを測れないからかもしれないでしょう』 →問題の重さを測れないか…
[良い点] 感想は下手なので極力控えさせて頂いてますが…きれいにまとまっていて、短編らしい、かつ童話らしい話で良かったと思います。 [気になる点] ないっす。
2013/02/07 13:16 退会済み
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