婚約者と共に夜会に招待されたが、病弱な幼馴染を優先した婚約者の末路
名前を借りました
「幼馴染のイシスが熱が出たから1人で行ってくれ」
婚約者オシリスが言った。
「本当に良いのですね?」
私セクメトは確認した。
「勿論」
オシリスが言ったので、私は頷いた。
「かしこまりました」
いつもの事だ。私は諦めて、1人で夜会会場に向かった。
「クヌム侯爵様、侯爵夫人、本日はお招きありがとうございます。そして、せっかくお招きいただいたのに、婚約者が欠席してしまい、申し訳ありません」
私は主催者のクヌム侯爵家の当主と夫人に挨拶した。
きらびやかな邸。威厳ある侯爵様と美しい夫人。
「来てくれてありがとう」
「貴女が謝る事では無いわ」
侯爵様と夫人は優しく言ってくれた。
「ありがとうございます」
夜会が始まる。知り合いに挨拶したり、挨拶されたり。
その後、クヌム侯爵夫人に呼ばれた。
周りには、夫人と仲の良い夫人達しかいなかった。
「婚約を破棄するつもりはないかしら?」
「…え?どういう事でしょうか?」
意味が分からず、聞き返してしまった。
「貴女に紹介したい人がいるの」
「え?そんな…」
「婚約者は、もう終わりよ。貴女は明日にも手を切った方が良いわ」
侯爵家を敵に回したのだ。当然である。
何度も見逃されていたが、とうとう手を下す決定をしたのか。
「…かしこまりました」
言われた通り、父に頼み、次の日には婚約破棄した。
侯爵夫人が言ったのだ。父も従うしかない。
「我が侯爵家よりも、病弱な幼馴染の男爵家を優先するのか?」
クヌム侯爵が言った。
「そういうわけでは…」
オシリスの父とオシリスが、頭を下げた。
「取引停止だ」
クヌム侯爵が冷たく告げた。
「お待ちください!」
「当たり前だろう?招待を受け参加すると返事をしておいて、当日何も連絡なく欠席するなんて、侮辱にも程がある」
クヌム侯爵の言葉に、オシリスが反論する。
「セクメトが欠席を詫びたはずです」
「それですますつもりか?何故本人が謝罪しない?」
クヌム侯爵が言う。
「普通は先に、こちらに欠席の知らせを送るものだ。そして、後日、改めて謝罪の手紙を送るものだ。それなのに、欠席の知らせも謝罪の手紙もない」
更に続ける。
「しかも、理由が幼馴染の具合が悪い…つまり、幼馴染より、我が侯爵家は価値が低いと思っているのだろう?」
冷たく言う侯爵に
「そんなつもりは…」
オシリスが言う。
「そんなつもりは無かったですむか!」
クヌム侯爵が睨みつけた。
「何度も欠席して。許されると思ったのか?」
「そんな…」
「今までは、セクメト嬢の顔を立てて、何も言わなかったのだ」
何度も謝ってきたセクメト嬢。
来る気が無いなら、参加すると返事をしなければ良い。
「何度も約束を破ったのだぞ。そんな者は信用できない」
オシリスとオシリスの父は、頭を下げた。
「とにかく、取引停止だ。2度と近付くな!」
クヌム侯爵に言われ、どうにもできなかった。
家に損害を与えたオシリスは、絶縁され、平民になり、家を追い出された。
幼馴染イシスに助けを求めたが、イシスは知らん顔をした。
オシリスは、我が邸にもやってきたが、門前払いした。元婚約者は絶望した。
自業自得だわ。
「ご機嫌よう」
「本日はお招きいただき、ありがとうございます」
私は、クヌム侯爵夫人のお茶会に呼ばれた。
「貴女は誠実に対応していたわ」
夫人が優しく言った。
「ありがとうございます」
「私の息子はどうかしら?」
「…え?」
クヌム侯爵家の嫡男アモンは、誠実な人だった。
婚約破棄したばかりの私に、ゆっくりで良いから考えてほしい、と言われた。
自分の事しか考えてない、自分に従うのが当たり前だった元婚約者とは大違いだ。
「私には、病弱な幼馴染はいませんよ」
アモンは、真面目な顔で言った。
「まぁ、普通は、幼馴染より婚約者を大切にすると思いますが…」
「私もそう思います」
2人で笑い合った。
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