灰雪の舞う視界不良
執務室の窓外、配管の隙間を白い粉が舞っています。
上層プラントのダクトが詰まったのでしょう。 降り注ぐのは、雪のように冷たい塵芥。通称、「灰雪」です。
思考、停止。 ワタシは万年筆を置き、その白い景色をぼんやりと眺めます。
「報告します! 現在の視界、半径5メートル未満! 通路の視認性、著しく低下中!」
部下のゲージ君が、カクカクと角張った動きで叫びました。
「このままでは巡回業務に支障が出ます。由々しき事態です、工場長!」
「ヘイ・ボス! 聞こえてるかい? こいつは上層からのホワイト・レターだぜ!」
浮遊するノイズが、バリバリという雑音混じりに割り込みます。
「視界ゼロのミステリー・ツアー! 今日は誰も仕事なんてできやしねえ!」
騒がしい部下たちです。 しかし、これだけ白いと、確かに何も見えません。
ふと、足元で駆動音がしました。
プシュー、コトッ。
部下のポッドです。 アームを器用に使い、湯気の立つマグカップを差し出してきました。
中身は、少し上等な廃熱で温めた、ドロリとした黒いオイル(コーヒー)。
「……気が利きますね。感謝」
ガガッ(照)。
一口含むと、喉の奥に鉄錆の香りと熱が広がります。 部屋の隅では、同居人のカビが、灰雪に呼応するように白く発光していました。
それを見たゲージ君が、「か、かわいい……」と針を振り切らせてフリーズしています。
外は視界不良。 仕事をするには、あまりに不向きな環境です。
ワタシは再び万年筆を手に取りました。 この白い静寂を肴に、物語の続きでも書くとしましょう。
まあ、悪くない一日でした。
お読みいただき、ありがとうございました!
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