荒れ模様のノイズと湿気った午後
ここ、地下プラント「工場」。 配管の迷路に高温の蒸気が満ちる、終わりの世界です。
ワタシはいつものように、愛用の万年筆を弄びながら、ぼんやりと天井の配管を見上げていました。 どうやら、今日は少し様子が違うようです。
「ヘイ・ボス! 聞こえるかい? 今日の地上波は最悪にノイジーだ! ビリビリくるぜ!」
浮遊型ユニットのノイズが、空中で落ち着きなく回転しながら喚き散らします。 彼のスピーカーから流れる音は、確かにひどい雑音混じりです。地上の「天気」とやらは、どうやら大荒れの模様。
「報告します! 現在、工場内の湿度が規定値を0.08%超過! 由々しき事態です、直ちに除湿バルブの解放を……!」
保安係のゲージが、角張った体をガシャンガシャンと揺らして慌てふためいています。 彼にとって、規則正しい数値の乱れは世界の崩壊に等しいのです。
思考、停止。 騒がしいですが、ワタシが慌てても酸素の無駄遣いです。
ふと見れば、執務室の壁の隅で、カビたちが湿気を吸って楽しげにポワポワと明滅しています。
「……あ」
その幻想的な光景を目にした瞬間、ゲージの動きがピタリと止まりました。 計器の針が振り切れ、完全にフリーズしています。どうやら、カビの可愛さにやられたようです。
プシュー(呆れ)。
給油係のポッドが、固まったゲージの足元を雑巾で拭きながら、ワタシに温かいオイル……ではなく、紅茶を運んできました。
地上の嵐は知りませんが、ここはいつも通りの湿っぽい温かさに包まれています。
まあ、悪くない午後でした。
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