第22話 やりなおし
王の指示により、ストリックランドの犯行に関する捜査は全面的にやり直しが行われた。
それは、エレノアに対する捜査と同時に行われた。
そして、彼女による証拠の捏造などが明るみになり、ストリックランドにかけられていた罪はすべて無実ではないかという見方が確定的になった。
そうしてやり直された裁判の結果、ストリックランドには、無罪が言い渡された。
一方で、エレノアな嫌疑に対しても裁判が行われた。その結果、無期懲役か矯正刑のどちらかを選ぶことが言い渡された。
死ぬまで牢獄で過ごすことに耐えられないと思った彼女は、苦渋の決断で矯正刑を選んだ。
矯正刑の執行は、国に選任された上級魔術師によって行われるが、不吉な魔法であるため、この仕事を引き受けたがる魔術師はめったにいない。
しかしそんな中、ぜひ執行を担当したいという上級魔術師が一人手を挙げ、彼女が選ばれた。
◆◆◆
「へえ……あなたが担当なのね。さぞかし気分のいい復讐でしょうね」
椅子に拘束されたエレノアは、部屋に入ってきた魔術師に言った。
「あんたからしたら復讐に見えるだろうけど、私からしたらむしろ、最後の温情よ。後遺症が出ないように、完璧にやってあげるつもり。……一応、かつては仲間だったわけだからね」
懐から杖を取り出しながら、リタは答えた。
「『仲間』か……。甘っちょろい人間なのね、あなたは」
下を向きながら、全てを諦めたようにエレノアは呟いた。
「覚えてる? 魔王城に辿り着く直前で、私とフェイが大怪我した時のこと」
「……あったわね、そんなこと」
「あんたが治療魔法を使ってくれてなかったら、多分私たちは死んでた」
「あなたたちが負傷していたら、私にも危害が及ぶ可能性があったからよ……」
「あんたはろくでなしだけど、あのとき助けてくれたのは事実だし、一応感謝はしてるの。だから……」
「もういいわ。早くしなさい」
エレノアはリタの言葉を遮るように言った。
リタは、これ以上は彼女のプライドを無駄に傷つけるだけだと思い、話すのをやめた。
「……わかった。じゃあ、始めるね」
リタは杖をエレノアの頭に向け、魔力を先端に集中させた。
そして、矯正魔法の呪文を呟いた。
「『再起する報い』」
◆◆◆
謁見の間で、ルーチェは国王にドゥエック討伐への協力について要請した。
事前にフェイから話を聞いていた国王は、これに快諾した。
「よいだろう、ルーチェ殿。そなたの望む通り、ストリックランドを協力させよう」
「……国王陛下、感謝いたします」
王国の長い歴史の中でも、この部屋に魔族が入ってきたことは数少ない。国王に向かって跪く小柄な魔族の女に対して、衛兵たちは緊張感を持って警戒していた。
一方で国王は平生と変わらず、穏やかにルーチェと対話していた。
「むしろ、エレノア元大臣とストリックランドの問題については、よくぞ協力してくれた。まったく、わが国の恥ずかしいところをお見せしてしまい、申し訳ないな……」
「い、いえいえ……とんでもございません! 私の国の方が、よっぽどごたごたしていますから……」
そして二人は、ドゥエック将軍討伐と今後の和平について覚書を作成し、最後に握手を交わした。
こうして、人間と魔族の関係に、新たな方向性が示された。




