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第7話:『ローン幻想格差(ローンげんそうかくさ)――住宅という都市の罠』(55点)

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 35年。

 それは、わたしたちが“あたりまえ”だと信じている住宅ローンの年数。

 けれど、その年数は、都市の幻想を支えるための拘束期間だったのかもしれない……と、理翔は思った。



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 たとえば、4000万円の物件。

 この価格で買えるのは、地方の片隅じゃない。

 それは――都市雇用圏人口50~80万人の中核都市で、百貨店も、個人店群も、総合美術館も、イベントホールも、すべてが徒歩圏に揃った新築70㎡の物件だった。


> 「百貨店まで徒歩4分、総合美術館まで10分……これはもう、“都市の中枢が歩ける距離にある”ってことじゃないか」





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 対して、16000万円の物件。

 それは、都市雇用圏3600万人を抱える東京(本物)の、同じく徒歩圏フル装備の新築70㎡物件。


 同じ徒歩圏。

 同じ生活機能。

 けれど、価格は4倍。


 故に,日本円は住宅購入だけに関していえば、東京(本物)で使うより高松(都雇圏80万人)で使う方が4倍購買力が有ると言える。


Eroyama「なお、都雇圏50万人以上では、探せば東京(本物)と同じ享受対象が全て見つかる。詳しくは第9話にて。」


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 そして金利が揺れたとき、地盤が崩れた。


金利0.5%時:


4000万円 → 年支払額 約130万円


16000万円 → 年支払額 約520万円



金利5.5%時:


4000万円 → 年支払額 約260万円


16000万円 → 年支払額 約1040万円





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 差額は、年130万円 → 260万円、520万円 → 1040万円。

 つまり、金利が上がっただけで、生活の床板が二重に沈む。


> 「払えなきゃダメなんだよね……“もし上がったら”っていう未来にも……」





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 そこで理翔は、ひとつの“金利幻想”に気づいた。


 もし、年収500万円の家庭が4000万円のローンを組んでるとしたら……

 16000万円の方を買うには、差額の390万円じゃ足りない。


> 「必要なのは、年収+1500万円。つまり、世帯年収2025万円が必要になるってことなんだ」





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 でもね――

 両方の物件とも、生活機能はまったく同じ。

 都市の本質にある、百貨店も美術館もホールも個人商店も、“徒歩で愛せる距離”にあることに変わりはない。


 違うのは、ただどこにそれがあるかだけ。


> 「都市機能は同じなのに、支払う幻想料は4倍。しかも、金利でさらに引き裂かれるなんて……」





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 そしてもうひとつ、時間のトリガーが引かれていた。

 理翔の住む都市は、今は都市雇用圏64万人。

 けれど――年0.5%の人口減少がこのまま続けば、50年以内に49万人以下になる。


> 「都市の徒歩圏は、永遠じゃない……維持できるのは、“今だけ”かもしれない……」

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