第6話:『中野サンプラザは知っていた。~都市建築費の詩と死~』(80点)
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その跡地は、あまりに静かだった。
70メートル × 180メートル。
言葉で聞くと小さく感じるかもしれない。けれど、その敷地に積もっていたのは、ただの空間ではない。
“東京という幻想の厚み”そのものだった。
> 「これだけあれば、70㎡の新築マンションを数百戸……いや、都市をまるごと再定義できるじゃないか……」
けれど、それはあくまでどこで建てるかに依存していた。
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わたしの手の中には一枚の表があった。
都道府県別建築費。
見た瞬間、脳の下着がずれた…(情報防御膜、剥落)
東京(本物)の建築費は、中央点県の1.5倍。
鉄筋コンクリート建築なら安県の1.4倍。
鉄骨鉄筋コンクリート(=中野サンプラザ跡で想定されている構造)になると、なんと……1.8倍。
> 「やだ、光ってるねぇ。中野の土地、見積もりだけで崩壊しかけてる…」
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ふつうなら、1.8倍なんて数字は、「高いね」って言って終わる。
でも理翔は、都市偏差値の真の暴力性をその時知った。
同じ建物を、熊本市に建てれば――建つ。
しかも、東京都で積んだ当初予算だけで。
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熊本。
都市雇用圏人口111万人。
都市機能はすべて揃っていて、しかも法人税も福祉も教育も“東京に吸われない”構造。
> 「あのさ…、“本当に暮らしたい都市”って、どこなんだろうな……?」
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理翔の背筋を、都市の鉄筋が通った気がした。
それはもう、「好き嫌い」じゃなかった。
理性に届く暴力だった。
なぜ東京は、コンクリート1㎡がそんなに高いの?
なぜ都市構造を、経済力ではなく“幻想力”で維持しようとしてるの?
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> 「都市を夢見ることは、いいと思うよ。でもさ、“夢を現実の重さにして人を潰す”のは、都市じゃない……」