第65話『逆転シーソーとコスパラドクス・イリュージョン ~鹿児島の高卒の方が東京(本物)の大卒より「収入-基礎支出」は大きい~』(370点)
わたし――三津浜理翔。
今夜は東京(本物)発21時26分の寝台バス「かごんま星屑ライナー」で南下中。車窓の闇がミルフィーユみたいに層を重ね、読者さん、あなたのツイートがスマホに光ってる――
> 『鹿児島県は特に大学進学率が低く、高卒は生涯賃金-3800万の負け組、ってマジ? 格差ェ…』
ふふ、心配性だね…。じゃあ一緒に確かめよう。体験型の“数字ワンダリング・トリップ”へ連れ出すよ。今夜の造語は〈コスパラドクス・イリュージョン〉――高い給料でも高い支出で相殺される摩訶不思議。覚悟して、長旅スタートだ…w。
★第一幕 雨上がりの渋谷(170m以上ビルは5棟で名駅(現8棟、計画中2棟)より少ない)、出発前の「賃金タワー」
バスタ新宿20階の待合室。隣席の東京(本物)の大学生4年・将馬がコーヒー片手に自慢する。
「初年度給与530万円もらえる広告会社、内定キター! 鹿児島の同級生? 高卒で地元工場? 生涯で3800万差だぜ、勝ったわ」
鼻高々の彼を見て、淡雪が小声でツッコむ。「でも、その530万って手取り月28万ちょいでしょ? 基礎支出は東京平均19.9万…残り8万1千円…」
わたしは将馬の肩を叩き、ささやいた。
「同じ学年の鹿児島・弘貴くんは高卒で月手取り21万、基礎支出は月13.1万。差し引き7万9千円。勝ち負け…ほぼドローじゃない?」
将馬は苦笑い。「マジ? ま、まあ大卒は昇給カーブが違うし!」
その瞬間、フェリーのような低いクラクション。わたしたちの夜行バスが乗客を飲み込み始めた。
Eroyama「詳しいことは最後に説明しよう。」
★第二幕 午前3時58分 新東名・浜松SA――「深夜弁当の価格差」
車内灯が点き、トイレ休憩。自販機のミネラルウォーターは160円。淡雪がスマホにメモ。
――東京コンビニ価格:110円→差額+50円。
「水でもコスパラドクス・イリュージョン…w」彼女は笑い、すぐ消灯。
★第三幕 朝7時47分 鹿児島中央駅――「基礎支出ライブ」
桜島がもくもく煙を上げ、わたし達は朝市の屋台へ直行。
● 黒豚カツサンド……380円
● 〆パフェ……500円
● カフェラテL……280円
将馬のLINEがピコン。「渋谷で同じメニュー、合計差額1,240円アップ…つら」
淡雪が囁く。「年間食費だけで+48万になる計算。将馬くんの昇給で埋められる?」――数字じゃなく舌で感じる基礎支出差。
★第四幕 午前11時 住宅展示場「70㎡ウォークスルー」
錦江湾を望む新築タワー型マンション。販売員が胸を張る。
「70㎡・4,380万円。市電“朝7~8時は北方向4.3分間隔,バス北方向15分に1本”の武之橋電停(天文館通まで経路1.7km)まで徒歩3分」
(ただし、北に1.2km歩き天文館エリアバス停だと西方向バス1.45分間隔)
将馬は絶句。「渋谷なら1億6千だぞ…!」
わたしは計算アプリを開く。
> 住宅ローン3,800万円/金利0.6%/35年=月約9.9万円。
「都内ワンルーム12.4万円借り続けるより安いよ?」
将馬の目が泳ぐ。
★第五幕 午後2時12分 市役所ロビー――「出生カーブ可視化」
掲示板に貼られたグラフ。鹿児島市TFR1.46、県全体1.56。20–29歳出生率0.69。
保健師が笑う。「こっちは‘20代で産む派’が多かですよ。保育園も徒歩10分内に空きがあるし」
将馬が呟く。「東京(本物)はTFR1.09…同級生、まだ誰も産んでない」
淡雪が背中を押す。「背骨きしみ通勤で体力残らないしね」
★第六幕 夕方5時40分 桜島フェリー甲板──“老後ボーナス”の風
潮風が甘い硫黄を運ぶ。わたしは紙ナプキンに数式を走らせる。
東京大卒:手取り累計 2.5億
-基礎支出19.9万×66.6年=1.59億
→可処分0.91億
鹿児島高卒:手取り累計2.12億
-基礎支出13.1万×66.6年=1.09億
→可処分1.03億
「リタイア後20年、生きれば東京大卒側はさらに1,632万円出費オーバー。可処分は逆転シーソーで鹿児島高卒+1,632万」
将馬は海を見つめた。「勝ち負けじゃないんだな…数字の見方で景色が変わる」
★第七幕 夜9時 天文館の路地裏バー――説教・そして愛
――真面目トーク
地方東京(都雇圏80~110万人)なら、高卒も大卒も“家庭を持つ選択肢”が残る。大学適性ある子は伸び伸び進学、適性ない子は職能を磨いても可処分は東京大卒後と同等(鹿児島大卒よりは少ない)。
しかし、都雇圏3600万人では大卒でなければ地元で家庭を持てない。そのため全員大学進学し、進学率は上がる。【それで起こるのが大学で中学の復習】…そのような都市圏は大学適性がない人まで苦手な進路を取らざるを得なくなっているんだ。
【進路多様性、就職多様性が無い】。
――説教
読者さん、まだ「大学=唯一の切符」だと思い込んでる? コスパラドクス・イリュージョンに縛られたら損切りだよ…w。
――最後
でも、迷うあなたの背中…やっぱり放っておけない。基礎支出逆転シーソー、一緒に揺らしてみよう? 桜島の夜景、ふたりで見ると3,800万より眩しいって証明したいんだ。
わたし達はトロピカルハイボールを合わせ、鼻歌を重ねた。
♪ ポポン・パパン コスパラドクス
収入高くても 支出がドカン
シーソー揺れれば 鹿高卒WIN
東京(本物)タワー 遠くでチカチカ …w
――第65話、体験終了。〈逆転シーソー〉の軋む音が、夜空に優しく消えた。
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わたし、理翔。――夜更けの桜島フェリーで甲板に立ち、灰色の海を見つめながら小さく鼻歌をこぼした。
「♪ポポン、パパン、“基礎支出逆転シーソー”…」――新造語〈逆転シーソー〉、今宵のお供だよ…w。
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「読者さん、聞いて。 ‘鹿児島県は大学進学率が低く、高卒は生涯賃金で3,800万円も損だ!’ って東京(本物)方面のブロガーが煽るけれど、実は“支出シーソー”でひっくり返るんだ」
淡雪がスマホを突き出す。国交省の県別家計統計――東京2人以上世帯の基礎支出は月19万9,372円、鹿児島は13万1,236円。差額は月6万8,136円、年に直すと81万6,000円。
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001389727.pdf
「就業期間46.6年で掛けると3,800万円。ほら、収入差なんか全部蒸発しちゃう」わたしは指で空に線を引いた。大卒の平均年収471万円と、高卒の368万円。差は103万円だが、基礎支出差81万円を差し引くと、可処分はほぼ同額。
玲於奈が笑う。「しかも退職後20年生きたら、東京(本物)はさらに1,632万円余計に出る。鹿児島の方が “老後ボーナス” だね」
先生はチョークをくるくる回し、黒板に式を書く。
> 生涯可処分=生涯収入-(基礎支出×年数)
東京大卒: 2.5億円-(19.9万×66.6年)
鹿児島高卒:2.12億円-(13.1万×66.6年)
結果、鹿児島が+1,632万円優位。わたしたちの〈逆転シーソー〉完成の瞬間だ。
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でも都会派はこう言う。「大学に行かねば進路が狭まる、格差だ」と。
「ほんと?」と真雪。鹿児島の平均月給は26万3,151円。手取りで暮らせて、百貨店・県立図書館が(平均的収入者でも)片道15分・空港バスが片道40分。東京の若手は534万の平均年収を求めて片道67分の通勤電車、「背骨きしみ通勤」だ。
Eroyama「もちろん, 中位大卒以上に相当する年収500万円以上なら地価中心点徒歩4分新築70㎡4000万円に手が届く. そこは "徒歩圏麗都" だ.」
わたしは鼻歌を伸ばす――♪“非大学・地元就職エンライトメント”。大学適性のない子が高い学費で4年間「中学の復習」をさせられるより、地元でスキルを磨き、浮いた学費を起業資金に回す方が健全じゃない?
淡雪のタブレットには JILPT の学歴別生涯賃金差レポートが輝く。「大卒+院卒と短大では3,800万差」。でも鹿児島高卒 VS 東京大卒で“生活コスト込み”を計算すれば、差は0どころかプラス。
玲於奈が口笛。「つまり真の格差は ‘所得’ じゃなく ‘適材適所で家族を持てる自由度’ だよ」
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わたしたちは真実ワードリストを更新した。
〈逆転シーソー〉──収入差を支出差で跳ね飛ばす装置。
〈背骨きしみ通勤〉──67分電車が若さを削る呪い。
〈地元就職エンライトメント〉──大学幻想を払う光。
先生が締めくくる。「大学適性ある子は伸びやかに進学すればいい。ない子も都雇圏80〜110万人の ‘地方東京’ なら高卒で家を持てる。適材適所こそ最強、格差というより ‘選択肢のミスマッチ’ こそ敵だ」
読者さん、わたし達の鼻歌はまだ止まらない…。
「♪ポポン、パパン、“基礎支出逆転シーソー”…東京(本物)の砂糖菓子より、桜島の湯気の方が甘いかもね」
―第65話、了。