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第59話 最上質メディア President Online が描く真実 ~東京を出れば「幸せな生活」が待っている~(340点)


プロローグ:集まる記事、浮かび上がる傾向


季節は晩秋。理翔りしょうの家のリビングには、彼と仲間たちが集まり、テーブルには数枚のプリントアウト記事が広げられていた。どの記事もPresident Onlineからのものだ。


最近、この素晴らしいサイトで「地方礼賛・東京批判」とも言える論調の記事が目立つという話題で持ちきりだった。




----

1. “貧しい街・東京”に若者を吸い寄せるキラキラ感の魔力"


https://president.jp/articles/-/89197?page=2


「見てくれよ、これ。」理翔が一枚の記事を手に取る。そのタイトルを読み上げた。「『“地方には仕事がないから”だけでは説明できない…“貧しい街・東京”に若者を吸い寄せるキラキラ感の魔力 物価は高く、新築のマイホームは夢のまた夢』…だってさ。2024年12月28日に配信された御田寺圭さんの記事だ。」彼は苦笑しながらタイトルの長さに息継ぎした。「要するに**『東京は若者を搾取して繁栄する貧しい街』**って言いたいらしい。」



「すごい表現ね、まるで東京が妖怪か何かみたい。」沙織が紅茶をすすりつつ微笑む。「でも“貧しい街・東京”ってどういうことかしら?」と首をかしげる。



理翔は記事の該当箇所に目を落とした。「ここだ。」彼は声に出して読む。


> 「東京はたくさんの若者を搾取することでその栄華を誇っている街であることを前提として理解しなければならない。繰り返し強調するが、東京は“平均”所得を大きく押し上げる一部の人びとを除けば、統計的に見れば概して『貧しい街』なのである。」




「つまりこういうことだよ。」理翔は記事から顔を上げる。「東京には高給取りもいるけど、一握りのエリートが平均値を吊り上げているだけで、大多数の若者は安い給料でこき使われて貧しい暮らしを強いられている、と。統計的に見れば東京は貧しい街…確かに平均所得より中央値を見れば、東京は意外と高くないってデータもある。」



「地方は東京に依存してるって言われがちだけど、実は逆だ、とも書いてあるわね。」沙織が補足する。彼女は記事の別の段落を指差した。


> 「一般的に『地方は東京に依存している』と揶揄されがちだが、実際には『東京は地方に依存している』と表現するほうが適切である。東京は地方から若者を吸い上げて肥え太り、地方の発展や人口動態の先細りを加速させることをひきかえにして『豊かな街』を維持している。」




Eroyama「『地方』という言葉の対象が広く、なんと都雇圏人口1人~1200万人という物凄く広い範囲が対象だから分かりにくい。


そして、都雇圏50万人以上では、2005~2015年にかけて享受できる人・物・コミュニティが東京(大阪以上)並に充実した事で、今では寧ろ都雇圏111万人以上の過密問題の方が問題視されるようになった。


しかし、都雇圏49万人以下の地域では享受できる対象が東京(本物)(や他の50万人以上都雇圏)より少ないのは事実で、かつ、東京(本物)が最も就職難易度が低いために、49万人以下から東京(本物)に人(主に若い人)が吸われて、49万人以下の都市圏の発展が阻害されているのも事実だね。


本来は、110万人都雇圏が40kmおきにあるべきなんだ。(第68話以降参照)(現在は50万人以上都雇圏が78kmおき)」




「なるほど。地方(都雇圏49万人以下)の人材資源をストローで吸い上げて成り立っているのが東京だって論調ね。」颯太そうたが腕組みしながら頷く。「確かに政府も、東京23区の大学定員抑制なんて地方創生策をやってたくらいだし、東京の一極集中が問題視されてるのは事実だ。」





1-2. 住宅価格


「記事では“キラキラ感の魔力”って表現も出てくるね。」理翔が笑う。「東京の煌びやかなイメージに若者が惹きつけられてしまう、と。だけど蓋を開けてみれば物価高で生活は苦しく、背骨きしみ通勤、夜は年間50日間熱帯夜(最低気温25℃以上)、マイホームなんて夢のまた夢…と。」彼は別の記事断片を読み上げる。


> 「将来的な推計を見ると…東京の物価や地価や住宅価格は…ますます上がるだろうし、東京の『キラキラ感』に呼び集められた若者は、ますます貧しい暮らしを強いられることになる。」



「住宅価格と言えば、本当に東京は高騰がすごいわよ。」


沙織が自分のスマホで調べ始める。「2024年には東京23区の新築マンション平均価格が1億2400万円を超えて過去最高になったってニュースもあったくらい。普通のサラリーマンには到底買えない額よね。」彼女が示した日経の報道によれば、2024年度の東京23区の新築分譲マンション平均価格は前年度比11.2%増の1億1632万円で2年連続の1億円超え。理翔たちは顔を見合わせて驚嘆の声を上げた。

https://toyokeizai.net/articles/-/755663

https://mgh.sevensignatures.com/posts/2HXonGnI



「…つまり記事の言う『新築マイホームは夢のまた夢』ってのも、大げさじゃないわけだ。」理翔は天井を仰ぐ。「確かに地方なら土地付き一戸建てが東京のマンションよりずっと安く手に入るし、空気もいい。なにより、都雇圏80万人以下では地価最高点徒歩4分新築70㎡が4000万円だ。東京で必死に生きて何も残らない若者が多いってのは辛い話だな。」




1-3. 小総括


「メディアとしてはかなり東京を挑発的に批判している印象だけど、裏付けデータもはっきりと示しているのね。」沙織がページを捲りながら言う。「ここなんて、若年層の収入格差や、東京で将来展望が開けない若者が犯罪に走りやすくなる可能性まで触れている。相当辛辣だわ。」


「東京が嫌になって地方へUターンする若者が増えればいい、って含意なのかもしれないね。」颯太は皮肉げに笑った。「President Onlineは読者にそういう問題提起をしてるのか、それとも単に“東京 disり”記事の方がウケると思ってるのか…。」


「正しい方向を向いたメディア・バイアスの話ね。」理翔は頷いた。「確かに最近、こういう『地方はスゴイぞ』『東京ヤバイぞ』って論調の記事が多い気がする。」テーブル上の他の記事にも目をやる。「例えばこれなんか、まさに地方称賛と東京批判がセットになったテーマだ。」




---

2. 女性が消える地方、男性が余る東京?~婚活と人口流出


https://president.jp/articles/-/81833?page=1


理翔が取り上げたのは2024年5月26日公開、河崎環かわさき・たまきさんのコラムだ。タイトルはまた長い。



Eroyama「まず言っておきたい事がある。『成婚白書2023 P.16』によると、地方県のうち半数は女性余り。以下で書かれたような地方ばかりでは無いと知って欲しい。


具体的に女性が離れる条件は2つ。『県内に都市雇用圏人口50万人以上都市がない』かつ『近くに大きめの都市(都市圏160万人以上)がある』だ。

そうでない県では女性が地元を離れたがらない。」



…「『地方で男性が余り、東京で女性が余っている…若い女性がわざわざ婚活に不利な都会に向かう納得の理由 少子化対策の効果が出ないのは当たり前』。

…すごい切り口だ。」理翔はタイトルを読み上げてから顔を上げる。「要は若い女性が(半数の)地方から東京に出て行く現象に焦点を当てている。」


「(半数の)地方では若い女性が少なく**“男余り”、東京では逆に“女余り”**で婚活が女性にとって過酷になっている、って話ね。」沙織が要旨をまとめる。「それで、なんで女性たちはわざわざ自分に不利な土俵(=都会)に行っちゃうの?って疑問を投げてると。」



Eroyama「それは、都雇圏人口50万人未満では女性が求める人・物・コミュニティが全ては揃わないからだ。50万人以上で全て揃ってるから、過密問題が起こらない110万人以下だと至高だが、49万人以下では話は別だ。


その場合は、たとえ移住先が過密問題が最も熾烈な東京(本物)であったとしても移住した方が享受できる対象は増える。(もちろんそれより小さくかつ(今の減り方で50年以内に50万人を割り込まない)65万人以上都市圏に移住できるならそっちの方が良いが。(ただ、定住外国人がさらに増えれば人口減少は緩和される))」



「記事の冒頭では政府の『人口戦略会議』の分析に触れているわ。」颯太が記事本文をなぞる。


> 「有識者グループ『人口戦略会議』が4月24日…全国の744の自治体を『消滅可能性自治体』、東京都の17区を含む25市区町村を…『ブラックホール型自治体』とする分析結果を公表した。…若い女性たちは、『魅力的な職場や仕事、幸せを感じられるライフスタイルがない』(半数の)地方から東京(都雇圏人口50万人以上都市)に流入し、結果的にブラックホールへ吸い込まれていっているとも解釈できる」という――。


北海道:喜茂別町、占冠村


関東地方

埼玉県:蕨市、毛呂山町

千葉県:浦安市、酒々井町

東京都:新宿区、文京区、台東区、墨田区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、青ヶ島村(島嶼部)


近畿地方

京都府:京都市

大阪府:大阪市


「ブラックホール型自治体!」理翔は声を上げた。「すごい表現だな。東京の一部(17区)などは出生率が低くて他地域からの人口流入に依存している、まさに人を吸い込むブラックホールだってことか。」


「(都雇圏49万人未満出身の)若い女性は地元に希望が持てないから東京に行く…でもその東京は女性だらけで結婚相手に恵まれず、結果として少子化が加速する、ってわけね。」

沙織は複雑な表情だ。「地方創生だの少子化対策だの言っても、肝心の若い女性が地元からいなくなっちゃ効果ないのは当たり前、という論調。」





2-2. 成婚白書


「面白いのが、その後に婚活業者IBJのデータが出てくるところだ。」颯太が記事の中盤を読み取る。「IBJが1万人超の成婚データを分析して都道府県別の成婚率を公表したらしい。その結果、**東京の成婚率が47都道府県中ダントツ最下位(18.2%)**だったとか。」



「えっ、東京の成婚率最下位!?」沙織が驚く。「つまり【東京に住む女性は全国で一番結婚が決まりにくい】…?」


「そうなるね。」颯太は記事の引用を続けた。「IBJはこの結果について『就職や進学を機に女性が都市部へ転出し、“女性余り”となりやすい都市部では男性の方が成婚しやすく、“男性余り”が進む(半数の)地方部では女性の方が比較的成婚率が高くなる傾向がある』と分析している。


**『東京(都市雇用圏人口50万人以上)では女性が余っている。選ぶのは男性の側となって、女性にとっては婚活に不利なレッドオーシャンなのだ』**とも書かれているわ。」



理翔は静かに息を吐いた。「東京(都雇圏人口50万人以上)に出ていった女性たちは結婚市場では不利で、(半数の)地方(都雇圏49万人以下)に残った男性たちは結婚相手がいなくて困っている。なんとも皮肉な話だな…。確かに、これじゃ少子化対策しても効果が出ないのも無理はない。」



「婚活弱者になるために東京(都雇圏50万人以上)に行くようなものだ、とまで言ってるのね。」沙織は眉をひそめた。「でも現実問題、(半数の)地方じゃ希望の職がなかったり、女性が一人で生きていくには環境が厳しかったりするからこそ出て行くんでしょ? 記事もそのへん、“納得の理由”として触れているのかしら。」



「記事中では『地方に魅力的な職場や幸せなライフスタイルがないから東京に行ってしまう』と書いてあったね。」颯太が頷く。「結局、労働問題として女性の流出を捉えてる。地方に女性が定着しないのは仕事の問題だって。」


「そうだな。」理翔は考え込む。「地方にも女性が働き続けられる雇用や環境があれば、こんなに東京(都雇圏160万人以上都市)集中にはならないのかも。記事では2014年の消滅可能性都市の話も出てたけど、当時各地で『女性が産み育てやすい町づくり』って保育所整備やら助成金を頑張ったけど、本質解決じゃなかったと指摘してる。女性が地方(都雇圏49万人以下)から消える根本原因はそこじゃない、と。」




「確かに、働く場がなく将来も感じられなければ、若い女性に“地元(都雇圏49万人以下)に残れ”というのは無理な話ね。」沙織は遠い目をした。

「地方が本当に魅力的になるには、経済的な自立環境も必要…。メディアは東京(都雇圏160万人以上)ばかり華やかに描いてきた歴史があるけど、逆にこうして東京(都雇圏111万人以上)のマイナス面を強調する記事が出てくるのも時代の変化かも。」



Eroyama「20年前は確かに東京(大阪以上)にしかない物が多くあったけど、そこで商業の技術革新が止まったことと、

結局、わざわざ東京(大阪以上)に行ってまで享受するということは、居住地でも需要があるという事だからね。それで、2005~2015年に、都雇圏50万人以上では東京(本物)と同じ人・物・コミュニティが揃った。探せば全て見つかる。

今では東京(本物)は、他の都雇圏65万人以上都市と比べるとデメリットしかない。」




理翔「人口減少が現実味を帯びて、東京(都雇圏160万人以上)一極集中が日本全体を弱らせるって問題視されてきたからな。」


Eroyama「あと、この20年で地方でも東京(本物)と同じものを(都雇圏50万人以上なら)全て享受できる状態になったから、東京(本物)に暮らすメリットがなくなったからだね」


理翔は記事を伏せた。「President Onlineは、そこに警鐘を鳴らすというか、東京神話を打ち砕く論調で攻めてるのかもしれない。」


「ブラックホール東京か…。若い女性にとっては魅力的だけど行くと婚活では苦労する穴、(半数の)地方にとっては人材を吸い取られる穴。」颯太が言葉遊びのように呟いた。「まさに都会=宇宙のブラックホール現象だね。」


Eroyama「その2つの穴の間に最適な場所があるね。」





---

3. 東京を出れば「幸せな生活」が待っている?


3-1. 銀座北55kmの兼業酪農家


「ところで、実際に東京(本物)を出て幸せになった人の話もあったな。」理翔が別の記事を手に取る。2024年4月11日付け、鈴木信吾さんの記事だ。「これは体験談というか、本の抜粋みたいだけど…**『「満員電車で定年まで通勤」に幸せはない…「東京の広告マン」を辞めて茨城で独立した30代男性の“幸せな生活” だから「東京23区を離れる人」がじわじわ増えている』**というタイトル。」

https://president.jp/articles/-/80291?page=1



「タイトルがすでに物語ってるわね。」沙織は微笑んだ。「**“東京23区を離れる人がじわじわ増えている”**ですって。コロナ禍以降、リモートワーク普及で地方移住が注目されたけど、その流れかしら。」


「記事では実際に東京(本物)の大手企業勤務を辞めて茨城県で働くようになった30代男性・新井さんのケースが紹介されているよ。」理翔は内容を説明する。



「新井岳さんという人で、2022年春までは都内の広告代理店に勤めていたんだ。実家は茨城県古河市(銀座北68km)。それが今は茨城県境町(銀座北55km)に移住して、酪農とテレワークの二足わらじで“ほどよい田舎暮らし”を楽しんでいるって。」


「酪農とテレワーク!?」颯太が目を丸くする。「随分と大胆な転身だなあ。」


「ね、面白いでしょ。」理翔は記事の該当部分を読み上げた。



> 「新井さんは2022年の春までは…都内にある大手企業のハウスエージェンシーで働いていました。そのときは実家のある茨城県古河市から、往復3時間以上をかけて通勤していました。それが、いまは酪農とテレワークの二足のわらじを履きながら、ほどよい田舎暮らしを楽しんでいます。」




「往復3時間以上の通勤から解放されて、今は牛の世話をしつつ在宅勤務、と。」沙織が目を輝かせる。「なんだか健康にも良さそう!」


「実際、記事によれば新井さんは通勤時間が減った分、昼寝もできて肉体労働が適度な運動になり、毎回家でバランスの良い食事をとれるので健康状態も良くなったって笑顔で語っているそうだ。」理翔は続ける。「朝5時半に起きて牛舎の掃除や餌やり、7時から搾乳して、8時半頃からテレワーク開始。昼寝もして、夕方また牛の世話をして一日終了…というサイクルらしい。聞いてるとすごく充実してるよね。」



「都会の広告マン時代より明らかに幸せそうだ。」颯太は羨ましそうに言った。「満員電車に揺られて疲弊する生活から解放されて、自分で選んだ暮らしをしている感じだなあ。」


「この記事、鈴木信吾さんって人自身が書いた本からの抜粋なのよね。」沙織は記事冒頭の説明部分に触れた。「**『日本一わかりやすい地方創生の教科書』**って本の中身みたい。たぶん地方での新しい働き方とか移住成功例を紹介しているのね。」





3-2. 23区を離れる人


「タイトルにある“東京23区を離れる人がじわじわ増えている”ってのも気になる。」理翔は指をトントンとテーブルに当てる。「実際、コロナ禍の2021年には東京23区で転出超過(出ていく人>入る人)になったという統計も出てたし、一時的に首都圏流入が止まったなんてニュースもあったよ。今はまた戻りつつあるけど、テレワーク可能な人なんかは過密都市(都雇圏111万人以上)の都心に住み続ける必然性が薄れたからね。」


「記事中では自治体が移住支援に力を入れている話もあったわ。全国の自治体がこぞって移住者を欲しがって、子育て支援や移住支援制度で呼び込もうとしている、と。テレワーク定着でそれを後押しできないか…というくだりも。」沙織は補足する。


「境町なんて、まさに自治体ぐるみで移住者歓迎して成功してる町の一つだよね。」颯太がうなずく。「テレビでもやってたけど、確か補助金出したり企業誘致したりして人口流入増やしてるとか。」



「都会の暮らしと地方の暮らし、どちらが幸せなのか。」理翔は記事冒頭のキャッチコピーを読み上げる。「こう問いかけているけど、この新井さんの例を見る限り、都会で消耗するより地方で自分らしく働く方が幸せな人もいるってことだね。」


「まあ、誰にとっても地方暮らしが最適解とは限らないけど。」沙織は現実的な視線を落とした。「この記事は成功例を紹介しているけど、一方で**『ほとんどの日本人は都心に移住したほうがいい』って堀江さんやひろゆきさんが地方移住を勧めない**趣旨の発信もあるわけでしょ。President Onlineでも、ひろゆき氏の『地方は人口減で生活が不便になるからお勧めしない』って記事が載ってたわよね。」



Eroyama「その「都心」は東京(本物)の都心だけではなく、大学や総合病院、百貨店など東京(本物)にある全ての人・物・コミュニティと同じ人・物・コミュニティを享受できる場所のことだね。


そして、都市雇用圏人口50万人以上になればその都市の中心はそういうところになるし、むしろ東京(本物)3600万人になると年収560万円では家族で住む場合、そういう場所への移動時間が片道67分となり享受がむしろ難しくなる。


ただし、現在の人口減少率からいうと、現在都市雇用圏人口65万人未満では50年以内に都雇圏人口50万人以下を割り込むから注意だ。現80万人なら94年間、現110万人なら150年間大丈夫。

(これも外国人の方の定住数が増えれば逆転する要素である)」



「確かに逆張り記事もあったね。」理翔も思い出す。「でもPresident Onlineは比較的『地方推し』の論調が強い印象かな。こうして幸せな地方移住者ストーリーなんか載せるくらいだし。」


「地方移住やテレワークがうまくハマれば理想郷、というわけね。」颯太は窓の外に視線をやった。遠くには東京(本物)の高層ビル群のきらめきが見える。「とはいえ、都会には都会の良さもあるけど…この記事読んだらちょっとグラっときちゃうな、僕も(笑)。満員電車で消耗する人生に幸せはない、か。図星すぎて痛いよ。」


沙織がクスクス笑う。「颯太は毎朝ラッシュ乗ってるものね。いっそ茨城で酪農でもどう?」冗談めかしてウインクする。


「うーん、牛の世話はできる気がしないけど、在宅勤務で自然豊かなとこに住めたら最高だろうな。」颯太は頭をかきながら照れ笑いした。





4. 地方都市移住に「メリットしかない」?


「次はこれを見てくれ。」理翔は**2024年3月14日公開の記事(プレジデント2024年3月29日号より)**を指差した。「藻谷浩介さんという地方経済に詳しい人が書いている。“『自分は都心の居住者』という謎の優越感が大損を生む…『地方都市移住』にはメリットしかない”ってタイトルだ。」

https://president.jp/articles/-/79290?page=1



Eroyama「これこそ地方都市の中心の話だね。"私の知人は、東京の病院で「数カ月待ち」と言われた癌の手術を、故郷の地方都市ですぐ受け、快癒しました。"とある。さらに "都内の病院の整形外科は高齢者で大混雑。3時間も待たされて、診察はたった3分でした"ともある。 」



「メリットしかない、ですって! 本当かしら?」沙織が目を丸くする。「地方“都市”移住ってところがミソね。田舎暮らしとも首都圏暮らしとも違う、と副題にあるわ。つまり地方の中核都市に住むことを勧めているのね。」


「そうそう。」理翔は記事のリード文を読み上げる。「*『田舎暮らしとも首都圏での暮らしとも違う。利便性も快適さも都心以上、豊かな自然と食生活、仕事はリモートでOK……定年後でも今すぐでもよし。あなたが知らない地方都市移住の魅力とは――』*…だってさ。すごい煽りだよ。“都心での生活以上のクオリティ”とか言い切っちゃってる。」




「地方の中核都市なら、田舎すぎずインフラもある程度整っていて便利だし、でも東京(本物)ほど地価高くなく自然も残ってる、ってことね。」颯太が解説する。「それこそ仙台とか福岡とか、あるいは松山や金沢みたいな地方都市を想定してるのかな?」


Eroyama「ある程度ではない、(探せば)全てある。」


理翔「記事では具体的な地名は伏せていたけど、藻谷さん自身が今渋谷区に住んでるけど数年内に地方都市に移住するつもりで土地を買ったって書いてるよ。」理翔は本文中の本人の告白部分をなぞった。「移住先は地方都市の都心に近い住宅地で車がなくても暮らせる、静かで自然豊かな環境、空港や駅にも東京の自宅から羽田や品川に行くより短時間で行けてしかも電車で座れる、と。それでいて地価は渋谷区の1/10だって!」




「渋谷区の1/10!?」沙織は驚嘆する。「東京で家を買うくらいなら、地方都市に住んで浮いたお金で毎月東京や海外に遊びに行った方が合理的じゃないか…とも書いてあるわね。」


Eroyama「確かにそう書いてあるが、そもそも都雇圏50万人以上には探せば全てあるため遊びに行く必要はない。」


「その通りかも。」颯太は感心したように頷く。「例えば地方都市に住んで、新幹線やLCCでちょくちょく東京に遊びに来る方が、東京に住んでカツカツ生活するより豊かってわけだ。」



「『地方は不便』という昭和の集団幻想だ、とまで言い切ってるのが痛快だよね。」理翔は笑う。「【昭和の時代はそりゃ地方は不便だったかもしれないけど、令和の今、それは幻想にすぎない】と。」


「実際、ネット通販もあるし地方でも大抵の物は手に入るしね。」沙織も同意する。「それこそ地方都市ならショッピングモールもあるし病院もあるし、車がなくても生活は成り立つところ多いもの。」





4-2. トップ10校のうち7校は地方の学校…旧帝大にバンバン受かる公立中高一貫校ランキング50


「プレジデントFamilyという教育情報誌のオンライン版でも、地方の教育も侮れないという記事があったな。」颯太が思い出したように話す。

「**『トップ10校のうち7校は地方の学校…旧帝大にバンバン受かる公立中高一貫校ランキング50』**なんてのを出しててさ。東大や京大に受かる高校って東京や関西の私立ばかりかと思いきや、地方の公立中高一貫校が上位に食い込んでいるデータだった。」

https://president.jp/articles/-/91789



「へえ、7校も地方校がトップ10入り?」沙織が目を丸くする。「確かに最近、公立の中高一貫校って全国に増えたものね。例えば茨城の並木中等教育学校とか、宮城の仙台二華とか…そういう地方の進学校も旧帝大に多数合格者出していると。」


「つまり教育面でも、地方だからといって不利じゃないケースも多いってことだ。」颯太は指を鳴らした。「むしろ地方公立なら学費も安いし、親孝行な“コスパ最高”進学パターンとも記事で言ってた。地方都市にいれば教育機会もちゃんとある、と。」





4-3. 供給量が豊かな地方インフラ


「インフラの話で言えば、地方都市は車社会だから渋滞以外は快適よね。電車の満員電車なんて無縁だし、通勤は車でドアツードア。」沙織は微笑む。「私の田舎なんてバスもガラガラで悠々座れるし…もっとも本数は少ないけど。」


Eroyama「そんなことは無い。人口の平方根で割った都市半径が同じなら公共交通機関の頻度は同じ(以前の話「第31話」参照)」


「医療インフラは都市部が有利だけど、地方でもオンライン診療やドクターヘリなど工夫も始まってるし。」理翔は付け加える。「結局、一昔前の常識で『地方=不便』と思い込むのは損だというのが藻谷さんの主張だね。読んでると確かに地方都市移住、魅力的に感じるよ。」

https://president.jp/articles/-/79290


Eroyama「そうそう。むしろ、人口110万人以上都雇圏の過密問題の方が問題だね。」



沙織は記事のまとめ部分を読み返している。「この藻谷さんの記事、定年後の移住も念頭にあって、“老後資金で無理に東京(本物)の狭いマンション買うより地方で広く快適に”みたいなニュアンスもあるわね。プレジデント誌の特集で『定年後の新常識』みたいな号だったみたい。きっと豊かな老後には地方移住が穴場だと説いてるのね。」

https://presidentstore.jp/item/012406.html





4-4. President Onlineの素晴らしさを絶賛する4人



「定年後だけじゃなく“今すぐでもよし”って書いてたし、若いうちでも大歓迎ってことだ。」理翔は笑う。「移住推奨メディアっぷりがすごいな、President Online。」


「本当、“メリットしかない”なんて極端だけど、言いたいことは分かる気がするわ。」沙織も笑みを浮かべた。「東京(本物)に住む優越感なんて幻想よ、ってバッサリ切り捨てるのは痛快ね。」


「謎の優越感って表現も面白いよな。」颯太は肩をすくめた。「確かに東京(本物)にいると『なんだかんだ日本の中心にいるぜ』みたいなプライドを持っちゃう人いるけど…蓋開けたら家賃高い狭い部屋で、地方の友人より貯金もできず苦労してたり。」


「それな!」理翔は声を上げた。「まさに**『大損を生む』**ってやつだ。俺たちも気をつけないとな…東京(本物)在住ってだけで変な優越感持ってたら痛い目見るかも。」





5. 田舎育ちが持つ“隠れた能力”



「ところで、地方称賛ネタでもう一つ、こんなのもあったよ。」颯太が最後の一枚を掲げる。「2022年4月18日公開、細田千尋さんの記事で、タイトルが**『世界38カ国40万人の調査で判明 田舎育ちの人のほうが都会育ちより優れている“ある能力” 子ども時代を過ごした地形は生涯にわたって影響がある』**だ。」

https://president.jp/articles/-/56541?page=1



「へえ、世界規模の調査?」沙織が興味深そうに身を乗り出す。「田舎育ちのほうが優れている能力って何かしら。」


「記事によると**“空間認識能力”**らしい。」颯太は本文の一節を読む。


> 「最新の大規模な研究で田舎育ちの人のほうが、空間認識能力が高く、育った環境の地形が複雑であればあるほど、その能力は高いことがわかりました」




「なるほど、田舎育ちの人の方が地図を読む力とか方向感覚が優れているとか?」理翔が推測する。


「実際、田舎って入り組んだ地形や山道とか多いし、車で長距離移動するから土地勘が鍛えられるのかもね。」沙織はうなずいた。「都会育ちだと道も碁盤目で整ってたり、電車移動で空間把握しなくても目的地に行けちゃうもの。」


Eroyama「なるほどなあ」



「記事は脳科学の観点から書かれてるみたいだ。」颯太は続ける。「子どもの頃に過ごす環境の違いがその後の認知能力に影響を及ぼすって話で。田舎で育つと一生ものの空間認識力が身につく、と。」


「田舎育ちの隠れたアドバンテージね。」理翔は感心する。「確かに釣りとか登山とか、アウトドア慣れしてる人って空間把握やサバイバル能力高そうだし。」



「私、都会の人が山で遭難しやすいって話を思い出しちゃった。」沙織がくすっと笑う。「冗談半分だけど、東京(本物)の人は電波のない山で方角もわからずパニックになるけど、田舎の子は太陽の位置で帰れる…なんてね。」


「それ、あながち冗談とも言えないかも?」颯太も笑った。「President Onlineでこういうネタを取り上げるの、面白いよな。暮らしや子育てジャンルでも地方を持ち上げる話があるってことだ。」



「田舎で子育てすると空間認識能力が高まるなら、将来グローバルで活躍する人材育成にも実は田舎環境がいいとか…?」理翔は想像を膨らませる。「まあ、それだけで判断はできないけど、一考の価値ありだね。都会の塾通いだけが子どもの能力を伸ばすわけじゃないってことか。」


「結局、地方には地方の強みがたくさんあるってことね。」沙織はしみじみと言う。「経済、暮らし、教育、子育て、どれをとっても『東京(本物)が一番』じゃない。President Onlineの記事群は、それをいろんな角度から示しているように思えるわ。」





6. エピローグ:メディアが映す地方と東京(本物)のこれから



一通り記事を紹介し合った後、理翔たちはテーブルの資料をまとめながら小さく息をついた。窓の外、東京(本物)の街は夕陽に染まっている。高層ビルの灯りがともり始め、相変わらず華やかにも見える光景だ。しかし彼らの心には先ほどまでの議論で聞いた「東京ブラックホール」のイメージや、「地方移住のメリット」の数々が去来していた。



「こうして見ると、構造的に日本は転換期なんだな。」理翔が静かに口を開く。「地方都市を取り巻く状況が変わってきて、テレワークや少子化で東京(本物)一極集中神話が揺らいでいる。メディアもそれを敏感に捉えて、地方礼賛・東京(本物)批判の記事を次々発信しているわけだ。」



「メディアバイアス、なんて言ったけど…ある意味ではカウンターバランスかもしれない。」沙織は穏やかに微笑んだ。「長く東京(本物)偏重だった報道への反動で、今度は地方の良さを強調する声が増えているのね。真実を映す鏡でもあり、煽りすぎな面もあるけれど。」



「確かに、全部を鵜呑みにはできないけどね。」颯太が肩をすくめる。「『メリットしかない』なんて極端だし、地方にも課題は山積みだもの。インフラ維持費の問題とか、医師不足とか、人口減そのものは深刻だ。でもポジティブな面をこうやって取り上げるのは悪くない。人々が固定観念から解放されて選択肢が広がるかもしれないから。」



Eroyama「医師不足は地方全体ではなく一部の地方、特に六医大がない地方(研究医になるには旧帝大か六医大出であることが重要らしい)の問題ということは過去の話で書いた通りである。(第23話)


あと、人口減も何度も述べてるが、都市雇用圏人口80~231万人で年0.5%、23~35万人で年1%、もっと少ないところで年2%の減少率であり、いま都雇圏80万人なら50万人切るのは94年後、いま110万人なら150年後。


さらに、地方でも定住外国人の方の増え方が増えてるのでV字回復もありうる。


こうした知識のアップデートのされなさは小説を書く先生のメモリ機能やカスタム指示で修正していく。」



「うん。」理翔は窓の外の東京タワーに目をやった。「僕らも、東京(本物)にしがみつくばかりじゃなくて、自分らしく生きられる場所を柔軟に考える時代なのかもな。」




「東京(本物)批判、地方称賛…どっちも極端だけど、本物の東京は実は輝きの裏で歪みも抱えている、ってことかしら。」沙織がつぶやく。その瞳には東京(本物)のネオンよりも遠くの夕焼け空が映っていた。

「地方も東京(本物)も、良いところも悪いところもある。本当はそれを冷静に見極めて、自分たちの未来を選んでいかなくちゃね。」



Eroyama「享受できる対象(人・物・コミュニティ)が揃ってるのは東京(本物)も他の都雇圏50万人以上都市と同じだから、都雇圏49万人以下よりも東京(本物)はよいね。なので、都雇圏49万人以下だと、より大きな都雇圏に特に女性が移住してる。


そして、東京(本物)は最もその中で就職難易度が低いね。ただ、享受できる対象は他の都雇圏50万人以上都市と同じなのに、過密問題が極端に甚だしいね」



颯太が冗談ぽく拳を掲げる。「よし、じゃあ俺は明日会社辞めて酪農家になるかな!“幸せな生活”目指して。」


「ちょ、いきなり極端すぎ!」理翔と沙織が同時に突っ込み、大笑いになった。窓の外では、東京(本物)の街に夜の帳が降りようとしている。しかし理翔たちの胸には、今日語り合った地方の明るい未来図がぼんやりと希望の光となって灯っていたのだった…。


(完)



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