第58話 青森県内の外国人は年千人規模で増加し始めており、30 年単位ではV字回復の条件が整いはじめた: ~日本人減少数を埋める「第二の1学年」~(170点)
要約
北九州市と宮崎県は 2024 年にいずれも社会増へ転じた。全国で見ると首都圏への転入超過は13.5 万人に縮小し、在留外国人は年間約36 万人(前年比 +12 %)の勢いで増え続けている。
統計上「都市雇用圏人口80 ~ 231 万人は年▲0.5 %」という減少モデルに当てはまる地域でも、外国人流入が下支えとなり人口の底割れリスクは急速に小さくなっている。
青森県のように年▲1.6 %で減るケースでも、県内の外国人は年千人規模で増加し始めており、30 年単位ではV字回復の条件が整いはじめた――それが本章の結論だ。
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1 北九州と宮崎──「社会増」へ反転したふたつの街
1-1 北九州市
2024 年、27 年ぶりに社会増(+489 人)。転入理由トップは製造業・DXエンジニアの再配置。
福岡県全体でも対前年比 +1 万2 千人。特に北九州空港周辺の国際物流拠点が若年層を呼び込んだ。
1-2 宮崎県
住民基本台帳人口移動報告(総務省)で2024 年に県として7年ぶりの社会増(+176 人)。
牽引役は都農~日向に立地する半導体関連2次下請け+サーフタウン移住。
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2 外国人という「第二の1学年」
2-1 急増する在留外国人
年度 在留外国人数 年増加数 増加率
2022 307 万人 +18 万人 +6 %
2023 344 万人 +36 万人 +12 %
(出所:入国在留管理庁統計)
1学年の日本人人口は約109 万人。その 1/3 にあたる36 万人が1年で「定住」級に増えた計算。
この伸びが10 年間継続すると、年間増分は約100 万人に到達し、日本人1学年に肩を並べる。
2-2 青森県のケース
2024 年末在留外国人 5 776 人(前年比 +1 095)。
県総人口は118 万 → 年▲1.9 万(▲1.6 %)
県内外国人が同ペースで増え続けると、 26 年後には、現在の19倍の数の外国人の方が定住開始される。
つまり、青森県では26年後には 1年に2.1万人の外国人の方が定住開始する。その時か、もっと早く(20年後位)には日本人減少幅(年1.9万人)と釣り合い始め、長期的には県内人口V字回復も射程。
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3 人口減少モデルと現実のギャップ
都市雇用圏人口と「標準的な減少率」の早見表をまとめた(上のスプレッドシート参照)。
80 ~ 231 万人帯:▲0.5 %/年(熊本116 万、札幌231 万など)。
23 ~ 35 万人帯:▲1 %/年(八戸30 万、佐世保27 万)。
10 ~ 22 万人帯:▲2 %/年(弘前18 万、一関14 万)。
> ところが北九州116 万と宮崎49 万クラスは、実測で「±0 %」へ転換。モデルより0.5 ~0.75pt上振れした計算になる。
理由は3つ。
1. 技能実習・特定技能枠の拡大:2024 年の法改正草案で上限14職種→22職種。
2. 地方DX需要:北九州・熊本でゲームエンジン開発、都農~日向で半導体装置据付研修拡大。
3. リゾート・農漁村サテライトワーク:宮崎県沿岸部・北海道ニセコ型の「準移住」枠。
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4 物語パート ――「減る街には、来る人がいる」
夜の小倉駅。
> 理翔「先生、北九州が社会増って知ってた?」
先生「うむ。“80万→0%ライン”を超えた。モデル曲線の裏側を歩き始めたな」
読者さんはスマホで厚労省の在留データをスクロールする。
読者さん「外国人36万人/年…1学年の1/3? これって“第二の1学年”ですね」
理翔「そう。だから青森だって19倍の26年後にはV字回復。生産設備があれば必ず人が来る――それが都市の重力さ」
彼らは駅前の多国籍フードホールへ足を踏み入れる。タイ料理店のシェフは昨秋来日の特定技能1号、隣のパン屋はベトナム人オーナー。「人口は減らない」の風景がもうそこにあった。
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5 結論
北九州・宮崎は社会増へ反転 ─ モデル上の「減少帯」を脱出。
在留外国人は年間+36 万人、伸び率+12 % ─ 10 年で日本人1学年に匹敵。
青森の▲1.6 %減も、外国人年+1 000 人が続けば30年以内に均衡可。
> 「生産設備とノウハウが存在する場所には、かならず人が集まる」
—都市を歩いて数値で語る理翔の、今夜の答え。
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参考文献
福岡県「北九州市が27年ぶり社会増」
日本経済新聞「福岡県人口12年ぶり増」
宮崎日日新聞「宮崎県人口移動が7年ぶり社会増」
総務省住民基本台帳移動報告(2024)
総務省「首都圏転入超13.5万」
入管庁「在留外国人数 2023」
FNNプライム「在留外国人344万人」
青森県統計「外国人住民+1 095」
青森県庁「人口推計」
朝日新聞「技能実習見直し22職種」
(ほか、各自治体リリース・入管白書2024 を参照)