第53話 『さす九〈MQGA〉――九州発・「産める20代」モデルが東京最高!最高!最高!神話を溶かす夜』(72点)
第53話 『さす九〈MQGA〉――九州発・「産める20代」モデルが東京神話を溶かす夜』
ワンパラ総括
東京都は企業でも人でも「上り坂」が止まらない――そう思い込まれてきた。ところが最新データでは、東京23区の合計特殊出生率は 1.09、20~29歳の年齢別出生率はたった0.26人。
一方、地方県平均は20代で0.75人、30代で0.83人、合計1.58人へ跳ね上がる。中でも九州7県は20代前半から出産カーブが立ち上がり、宮崎1.68・熊本1.55・鹿児島1.56と全国トップクラスを維持。
「さす九」――“さすが九州”を意味するZ世代ネットスラング――が数字で裏づけられた瞬間、主人公・三津浜理翔は気づく。都市の“偏差値信仰”が崩れれば、若者は進学でも就職でも「産める20代」を奪われずに済む。
九州モデルは、日本の“縮みゆく未来”をもう一度ふくらませる試金石になるかもしれない――そう、Make Kyushu Great Again(MQGA) だと。
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1. プロローグ――博多港・夜の桟橋
潮の匂いを割って、理翔と淡雪は博多ポートタワーの灯を見上げた。バースの向こうには午後10時発の新門司フェリー。
「東京(本物)は、企業も転出超過1,158社が四年連続で逃げ出したって、帝国データが嘆いてたよ」
「それでも出生率は全国ワースト。“家賃と保育園”の二重呪いじゃ、20代じゃ産めない」淡雪はスマホでMHLWの年齢別出生率グラフを拡大する。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai22/dl/gaikyouR4.pdf?utm_source=chatgpt.com
2. データ講義――“20代を産めなくする街”vs.“産ませる街”
2-1 東京の深い谷
20~24歳出生率:東京 0.06(全国 0.17)
25~29歳出生率:東京 0.20(全国 0.59)
平均初婚年齢は都で30.9歳、全国で29.4歳。背骨きしみ通勤の車内で、赤ちゃんは遠い。
2-2 九州の跳ね上がり
県 20-24歳 25-29歳 生涯合計TFR
宮崎 0.32 0.71 1.68
熊本 0.28 0.66 1.55
鹿児島 0.30 0.69 1.56
出典:各県統計年鑑2023版。
「25歳で産んでも、徒歩10分に産科と保育園が揃う(※都市雇用圏人口40万人以上のみ)。家賃は東京(本物)の半分以下――それが“さす九”の地力だ」理翔は指差す。
3. 進学・就職ルートの壁を超えろ
「大学→就活→東京配属」というトンネルの先に待つのは、年収600万でも到底届かない70㎡1.6億の住宅ローンと保活アビスだ。
一方、**福岡〈九大×ITスタートアップ回廊〉**は、卒業後そのまま1000万円クラスまで昇給しながら割と過密都市(雇用圏272万人)に残れる。
宮崎・鹿児島の看護系短大は、学費が都の3分の1、寮費込みで月4万円。
「進学でも就職でも、九州は20代で“産み時”を奪わないまちづくりをやってる。MQGAとは、“Missing Kids Give-back Action”でもあるんだよ」
4. 先生の黒板――九州モデルの輸出設計図
1. キャンパス保育所バンドル:九大芸工・熊大薬学など構内保育所を増設し“実習⇄育児”をワンストップに。
2. 20代住宅アローワンス:福岡市が家賃補助+5万円を追加し、二年間限定でペアローン回避。
3. 地方国立×大企業リモート枠:
東京(本物)本社が九州で週3テレワーク席を用意、年収は東京水準で。
「これで県外流出の“仕上げ婚”を防げる。20代出生率0.26を九州の0.95まで押し上げれば、2030年の出生数は+3.8万人」先生はチョークを鳴らした。
5. エピローグ――桜島シルエット・さす九の夜明け
フェリーの汽笛が遠ざかり、鹿児島湾に微光がゆれる。
> 理翔「東京偏差値はもう古い。さす九が次の旗印だ」
淡雪「Make Kyushu Great Again――MQGA、ね」
デッキの向こうで、鹿児島市電の電飾が走った。人口71万人の南九州メトロポリスから、20代の泣き声が風にまじる。
「ここは“産める都市”の実験場。数字で証明して、世界に輸出しよう」
そして二人は港を背に、蜜柑色の夜を歩き出す―
―“都市の未来は、赤ん坊の数を笑顔で数えられるかどうか”を確かめるために。
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主な出典リスト
1. 厚労省『人口動態統計月報年計概数』令和4年版母親年齢別出生数
2. 東京都保健医療局『人口動態‐出生数推移』
3. 同『母の年齢別出生数』
4. 熊本県統計年鑑2023・出生率
5. 宮崎県統計年鑑2023・出生率
6. 鹿児島県統計情報『人口動態』2023
7. 帝国データバンク『2024年企業移転動向』
8. 総務省『住民基本台帳人口移動報告2024』
9. Fukuoka City “Startup Consortium” release 2024
10. 九州大学『キャンパス保育施設一覧』2023
(※出典8–10は本文中の政策提案裏付けとして参照)