第52話 ――「転出超過 1158 社と〈さす九 MQGA〉※――東京(本物)から、そっと企業がいなくなる夜」(57点)
第51話 ――「転出超過 1 158 社と〈さす九 MQGA〉※――東京(本物)から、そっと企業がいなくなる夜」
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0 イントロ:雨の御茶ノ水、高架下で聞いた数字
深夜 1 時 12 分。
総武線のガード下で、理翔と先生はコンビニ珈琲をすすりながらスマホを突き合わせた。そこには帝国データバンクの最新リリース。
> 「2024 年、東京都を出て行った本社は 5700 社。4年連続で“転出超過”, 2024年は1158社──だってさ」
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2506/04/news007.html?utm_source=chatgpt.com
さらにページを繰ると、神奈川・千葉・埼玉を合わせた 1 都 3 県では 650 社近い流出超。
数字は雨粒みたいに光り、ガードの鉄骨を冷たく震わせた。
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1 “さす九 MQGA(Make Quintuple Gravity Amazing)”の夜
さすが首都圏、地価も人件費も現業がうける重力は5倍クラス――故に企業は去る。皮肉を込め、理翔はこの現象を「MQGA」と名付けた。
地価: 都心5区のオフィス成約坪単価は地方中核都市の 3〜5 倍へ膨張
現業賃金: 東京のサービス業時給は 1 135 円、地方平均の 1.4 倍
> 先生「過剰重力で生き残れる業種なんて、金融・IT・観光高単価型に限られる。
――地価が上がるからそりゃ“東京(本物)最強”になるさ。部屋を民泊にすれば1部屋月19万円稼げる。 だが質量を支える骨が減ると、ブラックホールはやがて潰れる」
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2 転出企業が向かった先――“地方東京”の胎動
テーブルに並ぶリストには、群馬・兵庫・福岡の工業団地名がずらり。
群馬県伊勢崎市: 物流センター転入で県内雇用 +1 200 人
兵庫県加古川市: 製造業 2 社移転、固定資産税収 +6 億円
福岡県久留米市: IT サービス本社移転、社員 7 割がリモート在住
いずれも 都市雇用圏 50~80 万人――理翔が“ミドル・グラビティ”と呼ぶ帯域。百貨店・個人店が徒歩4分、総合病院が徒歩 10 分圏で収まる規模だ。
> 理翔「税制優遇も首都移転特区も要らなかった。
ここ 20 年で“享受対象”はもう東京と同レベルまで浮上してる。
都心に残る意味が、住宅コストと移動時間で塗り潰されただけ。」
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3 ガード下ディベート:GDP と暮らしのズレ
先生が手帳に線を引く。
GDP(=総生産)GNP(=日本人取分)
マンション民泊化2.5 倍−7.25 万円×戸数
工業郊外移転−60%賃金 +居住快適度
> 先生「東京は GDP を 2.5 倍に膨張させて見せるけど、
そこで暮らす人の GNP はむしろ削れる。
“経済性と暮らし向きは別物”――このズレが転出超過 1 158 社の正体だ。」
理翔は頷き、雨粒を数えながら呟く。
> 「MAGA が“工業復活”を夢見る米国も、GDP が 1/2.5 に落ちても地域経済は回る。
だって極東には 2.5 分の 1 の GDP で成立してる都市が実際にあるんだから。」
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4 エピローグ:去りゆくエレベーターの灯
遠くで貨物エレベーターの巻上げ音が止まった。家賃 19 万円への一律値上げで 4 割が去った“あの”マンション。
違法民泊の疑いが残る 13 階建ては、今日も暗い。
> 理翔「企業も住民も抜けた後、GDP の幻だけが光ってる。
ねぇ先生、東京(本物)はいつ“適正重力”を思い出すのかな……」
先生は傘をたたみ、駅の改札を指差した。
> 「夜明け前が一番重力が濃い。だけど――
さす九 MQGA の次の章は、地方東京と首都東京が同じ歩幅で歩き出すシーンだよ。」
総武線 25:04 発、黄色い車体が雨霧を切り裂きガードを震わせた――それは、首都圏重力がほぐれだす前触れのようでもあった。
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出典ハイライト
東京都 1 158 社転出超過(帝国データバンク 2024)
1 都 3 県 650 社以上転出超過(ビズ+ biz記事要約)
地価・賃金・企業移転ケース(日経・ロイター・地方紙各種)
違法民泊転用・家賃 2.5 倍騒動(FNN 2025/6/2)
*――次話、『重力を畳む街角――ミドル・グラビティはどこへ向かう?』*