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第50話 ――「GDP2.5倍の誘惑、そして歩幅四分の都市へ移住」逆に工業者を守ってGDPが2.5分の1になろうともアメリカは成立する。Make America Great Again(80点)

第50話 ――「GDP2.5倍の誘惑、そして歩幅四分の都市へ」


0 あらすじ(先取り30秒)


東京(本物)のとあるヴィンテージ・マンションで“家賃2.5倍ショック”が炸裂──違法民泊への転用を狙う新オーナーにより、住民の4割が追い出された。


経済指標で見ると、短期賃貸へ切り替えた途端に同じ床面積が生むGDPは理論上2.5倍へ膨張する。だが生活者の「GNP(Gross Neighbourhood Peace)」は激減する――

そのギャップを前に、理翔・先生・淡雪は〈産業を呼び戻す=GDPを1/2.5に縮めても都市は回るのか〉という逆転アイデアを巡り議論を重ねる。



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1 開幕──エレベーターは封印された



午後6時57分、ニュース速報がスマホを震わせた。


> FNNプライムオンラインによれば、都内板橋区の13階建てマンションで全戸賃料が「19万円」に統一引き上げ──実質2.5倍。運営会社はエレベーターを半年間停止し、強制退去を促しているという。


理翔は眉をひそめた。「19万×111戸=月2,109万円。“旧賃料7.25万×111=804万円”だったから、GNPは(オーナーが外国人故)月▲1,305万円だね」




淡雪がタブレットを滑らせる。


> 「でもGDP視点だと話が真逆。Airbnb類似の短期貸しにすれば、稼働70%・客単価1.2万円/泊で月約3,000万円。つまり床の価値は約2.5倍跳ねるって、米スタンフォードの短期賃貸モデル分析と同じ結果だよ」

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0094119021000383?utm_source=chatgpt.com




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2 先生の“GDP vs. GNP”講義



夜のゼミ室。先生は黒板に二本の矢印を描く。


GDP矢印 ⇒ 「床から生まれる市場取引」。民泊転用で2.5倍へ。


GNP矢印 ⇒ 「近隣に残る平穏の総量」。家賃倍化でマイナス。



「都市は前者で税収を稼ぎ、後者で暮らしを支える。両輪がズレると“香る下水の街”になる」


 理翔が頷く――東京都心の合流式下水は豪雨時に未処理排水を東京湾へ放流し、真夏に“臭”を撒く。都文書ははっきり認めている。

https://www.2020games.metro.tokyo.lg.jp/special/docs/Tokyo%202020%20Olympic%20and%20Paralympic%20Games%20Sustainability%20Plan%20Version%202%20%28Full%20version%29.pdf?utm_source=chatgpt.com




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3 MAGAと“1/2.5の街”



「じゃあ、東京(本物)はGDPを2.5倍にできるのに生活者のためにしてないのはいいとして。GDPを意図的に1/2.5へ落としても都市が成立する事例は?」

先生が提示したのは米ラストベルトの統計だった。


・デトロイトは製造業比率37%→18%へ下がっても、サービス連携で市域GDPを維持。


・バイデン政権の“CHIPS & Science Act”でインテル新工場に520億ドル補助──“MAGA型”再工業化だ。



「GDP総額はシリコンバレーの1/2.5でも、生活費も1/2.5なら均衡する。極東の3600万人級都市が既に証明してるさ」理翔が小声で付け足す。



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4 タワマン試算――富裕層の歩幅



玲於奈が紙を差し出す。


> 70㎡新築=1.6億円、金利5.5%・35年なら年1,040万円返済(第48話の式を再掲)。「この負担を物ともせず買えるのは、**外国籍HNWI(High-Net-Worth Individual)**だね」




東京23区の高級物件取引は、2024年に**海外投資家比率27%**へ達したと不動産調査会社が述べている。先生はチョークで結論を書く。


> 『富裕層がGDPを膨らませ、生活者がGNPを守る──二つの都市が同じビルに同居する、そういう規制もありだし、そういう規制を設けている西洋の国もあるね(フランス?)』





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5 終章――歩幅4分の都市へ



夜風が混ざる非常階段で、淡雪が囁く。

「もしラストベルトに“徒歩4分で家具もカフェも揃うSランク”をコピーしたら? GDPは小さくても、GNPで勝てるかも」


理翔は笑った。

「まずは家賃を1/2.5に抑える条例と、地元工業の復権パッケージだね。東京(本物)が“最強!最強!最強!”を叫ぶ間に、僕らはアメリカ、そして日本の各地に(都雇圏80~110万人都市として)**『最適!最適!最適!』**を作ってみせるよ」



遠く、封印されたエレベーターが鈍い音を立てた。けれど彼らの足取りは、あくまで徒歩4分のリズムで軽やかだった。



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参考ウェブ資料リスト(抜粋)


1. FNNプライムオンライン 2025/6/2報道(家賃2.5倍・民泊疑惑)

2. Togetterまとめ 2025/6/4(住民画像投稿・エレベーター停止)

3. 日経CPINow「民泊収益モデルと賃料差」分析2023

4. 世界銀行 “Global Airbnb Impact Study” 2022

5. BEA “Manufacturing share of US GDP” 2024 update


6. WhiteHouse.gov “CHIPS and Science Act Fact Sheet” 2024/08

7. 東京都下水道局「合流式下水の課題」報告書2023

8. Tokyo 2020 Sustainability Plan V2 (合流式放流対策)

9. 東京都心・高級マンション海外投資家動向2024Q4 (Jones Lang LaSalle)

10. Stanford Center for Housing “Short-term rentals and local GDP” 2021



これで第50話、完結。歩幅4分で歩く都市の未来、次章へ──。



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