第33話 ――「1208日のワープホール」―片道4分と57分の差は68年で1208日分(135点)
要約
理翔と玲は、
**金沢(都市雇用圏人口約74.8万人)**なら、「百貨店・個人店群徒歩4分 + 総合美術館&イベント会場徒歩10分 + 新築70㎡」という
“徒歩圏フルスペック”が総額4 000万円前後で手に入り、
東京(本物)(都市雇用圏人口約3 576万人)では船橋クラスでも4 500万円強、上野駅徒歩4分なら1.6 億円超…
…という価格差に加え、船橋の距離の居住地だと金沢中心に比べ68年間で1 208日もの移動ロスが生まれると気づく。
〈人口×半径〉で揃えた公共交通本数比較(熊本 vs 笹塚)が示唆した “規模が違っても暮らしの中身は揃う” 法則は、住宅購入とライフタイムコストを比べても同じ――そう悟るまでを描くのが今回の第33話だ。
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第33話 ――「1208日のワープホール」
> わたし…また数字の迷宮で足がもつれて、時間のクモの糸に絡め取られそう――でも、その絡みも悪くない…w
1 金沢・香林坊、夜明け前
理翔は金沢のメインストリートを歩く。香林坊大和のガラス越しに見える化粧品カウンターが、朝焼けを跳ね返してキラリ。
マンションのチラシ――「新築70㎡・4 058万 円/徒歩4分で百貨店、徒歩10分で21世紀美術館、石川県立美術館」――を指でつまんで呟く。金沢はこの人口規模の都市圏では珍しく、2つ総合美術館がある街なのだ。なお、岡山は都雇圏149万人にして、中心市街に4館もの総合美術館がある都市である。
「人口75万級でも“全部そろい”は、まだ4千万円エリア…これがAランク都市圏の底力なんだなぁ」
2 船橋・早朝ラッシュ
同じ時刻、玲は総武快速線の車内。銀座まで57分、吊り革を握る手が震える。「4 538万で70㎡買ったけど…1日往復2時間、月20往復で68年間だと31 008時間(1292日間)。金沢に住んだら移動は68年間で2 176時間(91日間)、その差1 208日よ!?」
3 理翔の電卓――“人口ルート半径則”
理翔はスマホ電卓を叩く。
熊本116万人:味噌天神前(中心から1.7 km)→ 6:30台33本のバス・市電。
東京3 500万人:√(30) ≈ 5.5倍 → 相当半径9.4 km ≒ 笹塚、同時間帯33本。
「ほらね、“人口の平方根だけ郊外にずれても本数は同じ”――だから規模でマウント取るのはナンセンスだってば…」
4 バイアスブレイク・ピコーン✨
玲は銀座の路地で電話を取る。
> 玲「移動時間で失う1 208日、時給2 000円換算で5800万円よ?」
理翔「わたし達、また“トロネーゼ”回路を一段進化させちゃったね…w」
eroyama「金沢(72万人)は都雇圏50万人以上であるから、享受対象の全てが揃ってる故、20年前と異なり、今では東京(本物)に行く必要は無い」
3人の頭上で新造語が弾ける。
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データ裏書と計算法メモ
指標
金沢
東京(本物)船橋
ソース
都市雇用圏人口
747 576人
35 760 000人
新築70㎡価格
約4 058万 円
約4 538万 円(船橋)/1.6億円(銀座徒歩圏)
百貨店
徒歩4分圏内実現 香林坊大和・片町きらら
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中心地まで通勤時間
4分
57 分
68年間移動時間
2,176 h
31,008 h
本文計算
熊本味噌天神6:30台本数 33本
笹塚6:30台本数 33本
金沢人口減少率想定 年0.5% → 80年間50万人維持 —
> ※金沢物件価格はSUUMO掲載の中心部相場(64㎡で4 558万〜)を70㎡に比例換算し概算。
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〆のささやき
わたし…数字を並べるたびに都市が紙風船みたいに軽くなるの。
人口の平方根が都市半径、徒歩圏がライフタイムを圧縮するワープホール――
次はどの都市で“ワープ”する? 読者さん、座標を囁いて…わたし、またスカートをはためかせながら飛んでいくから……w