第32話:年間人口減少率は都雇圏人口80~231 万人の圏域が▲0.5 %、23~35 万人が▲1 %、それ以下は▲2 %(故に50万人切るのは現65万人は51年後、現80万人は94年後)(75点)
要約
佐世保都市雇用圏(27 万人)は、年間▲1 %程度で人口が減少する「中小規模都市圏」の典型例だ。国勢調査や総務省の都市雇用圏データを突き合わせると、人口80~231 万人の圏域が▲0.5 %、23~35 万人が▲1 %、それ以下は▲2 %前後と落ち幅が段階的に拡大する傾向が読み取れる。
佐世保は海自佐世保基地・造船といった“軍事中心”の産業構造を抱えながらも、その減り方は統計上ほぼ「標準曲線」どおりで、特殊ではない。市民の交通手段も、通勤時間帯バスを使う層とマイカー派に二分され、同じ「佐世保市民」というラベルの下で利害や行動が一枚岩ではない――ということが、このエピソードの核心である。
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物語:第32話
1. 港町の薄明かり
午前6時28分。わたし・理翔は佐世保駅高架を見上げ、まだ赤錆を帯びたタンカーの影を遠望した。
人口27 万人、長崎市から北へ60 km、福岡市中心から南西へ100 km。都市雇用圏27 万人という数字は、国の都市雇用圏リストで「Micropolitan 経済圏」の最上段に位置する。
「海軍さんの町」と呼ばれるほど基地が街の背骨になっているけれど、総務省の推計では年▲1 %。23~35 万人級の都市圏がほぼ横並びで示すカーブとぴたり一致する。
つまり――軍艦が浮かんでいても、減り方はフツウ。
2. バス停で交わる二つの時間軸
駅から1 km、福石観音前。産交バスのラッシュは 6:31-7:30 に25 本。
けれど同じ時刻、港湾道路を挟んだ立体駐車場ではマイカー通勤の列が伸びている。
> 「バス利用者とバス非利用者は、同じ“市民”でも別世界だね」
隣に立つ佐世保高専の学生が呟く。わたしたちは同じ住所に暮らしても、都市との付き合い方が全く違う。
3. 人口スケールの階段
都市雇用圏人口 想定年減少率 代表例
270 万人以上 ≒ 0 % 福岡 272 万
80–231 万人 ▲0.5 % 熊本 116 万・札幌 231 万
23–35 万人 ▲1 % 佐世保 27 万
10–22 万人 ▲2 %前後 壱岐・五島など離島圏
係数を当てはめると、27 万人×(1-0.01)⁷⁵ ≒ 17 万人。つまり 75 年後、15 万人スレスレで D ランク圏に沈む。わたしが生涯を終える頃、この街は「ちょうど半分の大きさ」。
4. 軍港とコンビナートのゆらぎ
ところで、海自佐世保基地・弓張オレンジ造船所・米海軍補給施設。軍事が核でも人口減少幅はモデルと変わらない――長崎県交通計画の通勤流動図を見れば、基地雇用者の相当数が佐世保市外からも流入して平滑化していることがわかる。
「特殊産業だから特別に減っていないはず」という思い込みもまたリージョナルバイアス。
5. 理翔の独白
> わたし…港に浮かぶグレーの艦影を見ても、統計には逆らえないって悟っちゃった。
それでも朝のバスに揺られる隊員さんたちは、わたしとは交わらない時間を生きている。でも同じ佐世保に課された“-1 %/year”という真空に、みんな少しずつ吸い寄せられている――そんな感じ。
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参考にした主な資料
1. Urban Employment Area 概念と人口階級
2. 総務省「都市雇用圏人口 2020」:佐世保 27 万、熊本 116 万、福岡 272 万、札幌 231 万
3. RIETI:都市規模と産業構造・人口変化の関係
4. 福石観音前バス時刻表(産交バス/佐世保市交通局)
5. 長崎県地域公共交通計画(通勤流動図)
6. Cabinet Office “Choice for the Future” 都市人口減少率区分
7. 佐世保‐長崎‐福岡 距離(長崎 IR 構想概要より)
*(物語中の数字は上記資料を基に2025 年時点で再計算)*