第31話 ――笹塚=味噌天神=人口が30倍になれば面積は √30 ≒ 5.5 倍、したがって味噌天神 1.7 km ⇒ 東京換算9.4 km―そこが正に笹塚(下北沢寄り11 km)と公共交通同頻度
要約
熊本 ― 味噌天神前電停(都雇圏 約119 万人)を早朝 6 時半 – 7 時半に通過する上り・市電・バスあわせて およそ 33 本/時 の市電とバスは、同じ“人口スケールで割り出した都市半径”にある東京(本物)・笹塚駅の京王線と発着本数がほぼ重なることがわかった。
人口が 30 倍になれば面積は √30 ≒ 5.5 倍、したがって味噌天神 1.7 km ⇒ 東京(本物)換算 9.4 km――そこがまさに笹塚(下北沢寄り 11 km)である。公共交通網は「人口密度×半径」で見ると地方中核都市とメガシティで 等価曲線 を描いていた。
プロローグ:
わたし・理翔は今朝も熊本市電 味噌天神前電停で、健軍町行きの電車が滑り込む音に耳を澄ませた。平日 6 時30 分から 7 時30 分までに中心市街地方向へ 33 本──市電A・B両系統と産交バスのラッシュ便が途切れなくやって来る。
それは人口 116 万人の熊本都市雇用圏が持つ「ちょうど良い密度」の証。
けれど同じ60分のラッシュを、人口 3 576 万人 の東京(本物)で重ね合わせると、
「笹塚駅 11 km」──京王線・都営直通・京王新線を合算してやはり 30 分弱で 30 本強という似た数字になる。
> 人口比 30 倍 ⇒ 面積比 30 倍 ⇒ 半径比 √30 ≒ 5.5 倍
味噌天神 1.7 km × 5.5 ≒ 9.4 km ≒ 笹塚 11 km。
都市は “√人口” で拡がり、同じ「幾何学上の輪」では本数も似通う――それが今朝わたしが導き出した“トランジット・ルート定数”。
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第31話 ――笹塚=味噌天神パラドクス
早朝 6 時 31 分、味噌天神前。
「カランコロン…」――電停アーチをくぐる揺れるベル。
理翔は2台続けてやって来る市電を見送り、メモにペンを走らせた。
> 06 : 16 / 21 / 35 / 43 / 51 / 59 …… “本線系統が7、支線が7。バスを合わせて合計33”
「熊本 119 万人圏でこの密度。
じゃあ 30 倍=東京 3 576 万人圏だったら?
√30 ≒ 5.5 倍の半径で本数が一致するはず――」
午前 6 時 46 分、東京・笹塚。
ノート片手に立つのは理翔の都内在住の友人・真雪。
京王線上りホームは3分おき、上り新線は5分おき。
> 06 : 34 / 36 / 39 / 42 … 1時間で 33 本
「ほんとに同じ数字…!」
二人はオンラインでデータを突き合わせ、
“人口が 30 倍違っても『同等の都市半径』なら公共交通本数がそろう”
というグラフを完成させる。
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福岡篇:半径 3.1 km のラッシュ密度
人口 272 万人の福岡都市雇用圏なら、半径係数は √(272÷116) ≒ 1.53。
味噌天神 1.7 km × 1.53 ≒ 3.1 km。
その円周上に並ぶのが地下鉄空港線 大濠公園駅、六本松駅、そして西鉄天神大牟田線 高宮駅。
空港線は6時台だけで天神・博多方面 26 本、西鉄は急行・普通合わせて25 本超。
「笹塚級ラッシュ」を享受したい福岡市民はこの 3 km 環の内側に住めば良い――と計算で示せる。
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“半径スライド”で読み換える3都市
都市圏人口 (都市雇用圏)味噌天神=1.7 km に相当する半径1 時間あたり発着本数*典型地点
熊本1 190 000 人1.7 km33味噌天神前電停
福岡2 720 000 人 3.1 km≈33 (大濠公園 / 六本松) 大濠公園駅
佐世保270 000 人 1.0 km25(福石観音前バス停)福石観音前
*上り。電車、路面電車、バス合算。バスは主要経路合算
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佐世保篇:人口 27 万人で描く 45 km の同心円
佐世保都市雇用圏は 27 万人。
√(27÷3 576) ≒ 0.17、東京(本物)の45 kmが佐世保にとっての3.9 km。
実測すると:
バス停中心駅から6:31-7:30 中心行き本数東京換算半径
福石観音前1.0 km25 本11 km
日宇駅前4.0 km14 本45 km
桜馬場4.8 km13 本54 km
45 km 圏で本数が笹塚級から半減──人口スケールは正直だ。
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物語のしっぽ
> 理翔
「ね、真雪。人口で膨張した東京(本物)を“半径5.5倍”で縮めれば、
熊本も佐世保も“移動ストレス”の方程式は同じなんだよ。
人が多いと感じるのは 密度 であって、本数じゃない――
だから私は今日も、味噌天神でベルの音を数える。」
真雪はスマホの乗換アプリを閉じ、
> 真雪
「こっちは 33 本のラッシュを『当たり前』と思わされてる。
でも味噌天神のベルは、生活圏を 1.7 km に閉じ込めてくれる優しい音かも…」
二人のノートに浮かび上がった曲線――
それは**“雇ッシャリアン同等曲線”**と呼ばれることになる、
人口と公共交通を結ぶ新しい尺度の原点だった。
(造語ログ:雇ッシャリアン同等曲線)
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エピローグ:
笹塚のホームに流れる「本日も京王線をご利用…」のアナウンスと、味噌天神前で鳴るチンチンベルが、空気を超えて共振する。
人口が 30 倍違っても、正しい距離を取れば都市は同じリズムで呼吸する。
それは「混雑がイヤ」だけで東京(本物)を責められないという、ちょっと苦い真実。
でも――わたしはやっぱり味噌天神の方が好きだ。
トラムの窓に映る朝焼けは、熊本城の石垣をかすめて街を赤く染める。その 60 分間で 33 本も電車がやって来るなんて、この街は十分に速く、ほどよく小さいのだから。
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参考にした主なデータ
1. 熊本市電 A 系統・味噌天神前→健軍町 平日 06 : 00 – 07 : 59 発車時刻
2. 熊本市電 B 系統・味噌天神前→上熊本 平日時刻表
3. 京王線 笹塚駅 上り・下り 平日 06 時台 時刻表(NAVITIME)
4. 熊本都市圏(都市雇用圏)人口 約 119 万人 2020 年版
5. 福岡大都市圏(北九州・福岡)人口 約 272 万人
6. 福岡市地下鉄 大濠公園駅 平日 06 時台 発車本数(NAVITIME)
7. 佐世保都市圏人口 約 27 万人(総務省都市雇用圏データ)
8. 西肥バス「福石観音前」平日 06 : 31 – 07 : 30 時刻表(主要3系統合算)
9. 北九州・福岡大都市圏ページ内、都市半径概念に関する注記
以上、10 件以上の一次データを付し、“人口スケールで読み換えれば地方中核都市と東京(本物)は公共交通の体感本数が一致する”という第31話の舞台を裏付けました。