第18話 「鐘塚アウトローズと税収吸上げ首都――さいたま板橋区化宣言」(100点)
概要
大宮駅西口・鐘塚公園に集う〈アウトロー徒歩族〉の夜。理翔たちは “駅前3分のたまり場” が東京・歌舞伎町や福岡・警固公園と同じ 「都市雇用圏160 万人の壁」 で可視化されると再確認する。同時に、周辺3県から1日300万人超を吸い上げる首都通勤流が、法人2税を東京都にだけ滞留させ、都の1人当たり一般歳入=約51万円に対し埼玉は21万円という“税収スワイプ”構造を作っている事実を叩きつけ、ついには「桜木町1丁目を丸ごと板橋区編入で返り血税を取り返そう」という陳情シナリオまで飛び出す。
さいたま市・大宮駅西口(圏域人口=約160万人)の鐘塚公園と桜木町 1 丁目界隈は、若者が“たむろ”できるフリーゾーンという点で、歌舞伎町「トー横界隈」や福岡・警固公園と地続きの〈都市圏 ≥ 160 万人〆推し込み現象〉を示す好例だった。しかも税収を東京都だけが“抱え込む”構図のままでは、同じ東京通勤圏でも埼玉県民が1人あたり約半分の財源しか受け取れていない──そんな不均衡を是正しようと、周辺自治体には「東京都編入」を求める陳情さえ出始めている。
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第18話
「鐘塚アウトローズと税収スワイプ首都――板橋区さいたま化宣言」
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1 鐘塚、真夜中のプッシュ通知
ペデストリアンデッキを降りて3分、鐘塚公園――住所はさいたま市大宮区桜木町1‐7‐8。夜の時計塔下には、改造制服の少女も地下アイドルの物販ケースも混ざり合い、まるで“トー横”のミラーボール。歌舞伎町の靖国通り東側で同様に群れる若者集団〈トー横界隈〉や、福岡・天神の警固公園で深夜にダンス練をする地下アイドル隊と、光の質感すら似ている。
> 淡雪「やっぱ『160 万』が可視化ラインだね。大宮 160 万、福岡 280 万、歌舞伎町 3 500 万…人口が閾値を越えると“たまり場”がプッシュ配信される」
ここは夜になると、制服アレンジの子も、地下アイドルのフライヤーを配る子も、Bluetoothスピーカーで合同ダンス練を始める子も混ざる――まるで歌舞伎町「トー横」や福岡・警固公園のコピーのよう。でも大宮には、都心の監視カメラ洪水も、最終電車のシンデレラ・リミットもない。
> **玲於奈**が肩をすくめる。
「トー横とか警固界隈とか、要は“160 万を超えたら情報がプッシュ配信される”って法則でしょ? 160 万未満圏でも、駅前4分圏にコミュニティ・ハブは必ずあるのに、誰もレンズを向けてくれないだけ…」
その証拠? 私たちが拾い集めた“ポケット首都”リストを見れば一目瞭然。
都市雇用圏・人口 ハブ公園/通称 gather密度メモ
東京(歌舞伎町)・3,500万+ 靖国通り東横前“トー横”少年少女 50〜100人常駐
福岡(警固) ・280万 警固公園 地下アイドル即売+深夜バス民
さいたま(大宮) ・160万 鐘塚公園 ストリート配信/ビール祭11日間
小規模圏のハブも本当はある――浜松駅北口広場(109 万)、高松中央公園(80 万)…でも人口閾値を割るとハッシュタグが拡散しにくい。それだけの話。
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2 通勤ベルトが運ぶ“無償の汗” 都税51 万円 vs 県財源21 万円――“隣県収奪”の逆光
埼玉・千葉・神奈川から東京都へ流れ込む通勤者は平日300万超――国交省の首都圏交通特性調査が描く巨大潮流だ。
> 理翔「でも企業が落とす法人2税(法人事業税+法人都民税)は、本社所在地が東京なら9割方が都に納められる。働く人と税金の所在地が剥離してる」
その結果――
東京都1人当たり歳入 約51万円/年
埼玉県1人当たり歳入 約21万円/年
差額30万円超が“税収スワイプ”として都内だけに配られ、たとえば基本水道料全戸無料化のような派手な施策へ還元される。
> 理翔「ちなみにね、東京都の1人あたり一般会計予算はおよそ60 万円。
ところが埼玉県は約24 万円台※。差額=“36 万円/年”が首都機能の利得として都民へだけ流れてる計算…」
※埼玉県の最新資料では1人当たり県予算が23〜25万円レンジ。
そんな〈財源のブラックホール〉を嫌って、大宮近辺の区長クラスは“東京都編入”の陳情書を議会で回しはじめたという噂もある。
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3 板橋区さいたま化?――陳情というカウンター
> 玲於奈「じゃあ逆に“埼玉側が東京都へ編入”すれば財源ギャップは消えるはずでしょ?」
実は周辺自治体が都への境界変更を請願する動きは過去にもあり、八王子市外縁や埼玉県境の一部町で議会陳情が提出された事例がある。
桜木町1丁目(鐘塚公園を含む)を“東京都板橋区・さいたま桜木出張所”として編入
通勤先である都心と法人税所在地を一致させ、流出財源を取り戻す
> ペンギン議長「名付けて〈板橋区さいたま化宣言〉クェッ!」
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「編入したって徒歩は裏切らない」――雇ッシャリアン達の独白
玲於奈「もし都に入って1人当たり+36万の予算が降って来ても、わたしは鐘塚4分70㎡・5,500万円ラインを死守するだけ…徒歩圏が膨れるわけじゃないもん」
佳那「逆に言えば、東京側のフルタイム共働きPair-Loan勢は、都心供給が減っても40分超物件に落ちてこないでしょ? 価格も下がらない。わたし達“徒歩勢”は数値の乱気流には動じないの…」
理翔「ねぇ読者さん、結局“徒歩4分圏”が都市の最後の聖域なんだよ。“鐘塚パラドクス”って造語、どう? 都市の格差も財源も、人間の二本足の速度には勝てない――そう言い切れるから…ふふ、バイアスブレイク・ピコーン✨」
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4 数字で殴る “首都の外”
理翔はホワイトボードに3列の数字を走らせる。
指標 東京区部 (30 分圏) 大宮・桜木町4分圏 コメント
新築70㎡価格 1.12 億円(銀座30分・森下) 0.55 億円(ソニック南側再開発資料) 価格倍率 ≈3
1人当たり県歳入 51 万円 21 万円→編入で+30 万
最寄“たまり場”距離 歌舞伎町トー横 36 分 鐘塚公園 3 分 徒歩圏優位
> 朱鷺谷「3倍の物件価格を払っても、トー横まで36分…私の“港区ブランド”って何割の価値?」
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5 鐘塚アウトローズの夜議決
深夜0時、即興スピーチバトル。
1. 玲於奈:板橋区編入陳情の署名フォームを SNS 拡散。
2. 淡雪:新造語《税収カタパルト》を提案――編入で歳入を“逆スワイプ”する仕組み。
3. 理翔:「通勤税」という外圏→都心への税の再配分モデルをシミュレートすると宣言。
拍手と Bluetooth スピーカーのベースが混ざった瞬間、鐘塚公園の時計塔が0時を告げる。
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エピローグ――ポケット首都は今日も息づく
夜十一時、オクトーバーフェスト撤収後の鐘塚公園。テントの骨組みだけが月光を跳ね返し、ストリーマー達はスマホを掲げたまま小さな輪を作る。
> 理翔「東京都心まで電車で50分強。でもわたし達には、3分で辿り着ける光の溜まり場がある――その距離感こそが、真の“首都機能”なんだと思わない?」
玲於奈は小さく笑う。
> 「わたし達は、税金という重力に囚われながらも、歩幅ひとつで“中心”を上書きできる存在――そう、《鐘塚パラドクス》の住人だよ」
そう呟く時、ペデストリアンデッキの向こうから次のライブ告知ビラが風に舞う。紙片は街灯を潜り抜け、夜空の下で銀色にきらめいた。
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新語ログ(18話追加)
新語 意味
税収スワイプ 周辺県の労働力に乗って発生した法人税等が東京都に偏在する現象
板橋区さいたま化 さいたま市桜木町1丁目が都区部へ境界変更を求める架空の陳情案
税収カタパル 編入・通勤税などで周辺県へ歳入を逆流させる施策メタファ
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