7.訪問の意図を質すこと
どっしり生えたフォイーユの隣で、先生は立ち止まり、僕を待っていた。コルクのイスがすぐ横にあるのに、座ろうとしないでこちらを見ている。
僕は詩のことをまた少しだけ思い出していた。始まりや終わりではなく、それを綴った人間を。はずみで空を探してしまい、すぐに悔やんで目を反らす。
このことはもう、考えないことにする。
「この花を取りにここまで来たのか? 君は」
花は、先生と強く上り続ける太い木の間に在った。先頭を行く蔓は、つかまるところを見つけられずにゆらゆらと揺れていて、それはどこか楽しげな動きだった。法則性がまるでない。
そうだ。このためにここまで来たんだ。この花を。
「先生に会いたかったんですよ」
「ついででも光栄だがね」
失礼ながら状態を確認させていただいて、僕は肩の荷をやっと下ろすことができた。考えていたよりも遠出をしてしまったけれど、最悪の事態は避けられた。
魔法はともかく、花たちの意思もとりあえず、旅に耐えられないようでもない。山や湖や海を越えて、僕と共にあの国に向かってくれそうだ。
「良く覚えていたもんだな。あの花壇にこの花があるなんてことを」
さて、どうして花を保ったままで連れて行こう。悪い影響を残さない運搬手段を思い付くべく努力を始めた僕の後ろで、先生は、彼といえば思い出す例の口調で、例によってあきれていた。
そして次には、世のすべてを飲み込み悟った顔になり。
「まぁ、君は薔薇の血だから、難しいことではないのかもしれないが」
「人を化け物みたいに言わないで下さい」
そんな反論には注意を払わずに、先生はイスに座りながら片手を上げる。チルの茂みの向こうに、影が動くのが見えた。
かつては修道院だった建物の、飾り気のない壁の方へと向かい。
自ら選んだローザンを名乗る館で、最小限の使用人を家族と称して暮らす、有能にして敏捷な元将軍殿は、僕に着席を促しながら、そんな必要はないのに身を乗り出した。
「それで」
「はい」
「君がこの花を贈りたい相手は、どういう娘なんだ? 話してごらん、フレディ。人生が変わりそうか?」
―――
「先生が考えてらっしゃるような意味で贈るわけじゃありません。同じ名を持つ花を、彼女が知らないと言うので」
「ぜひとも見せてやりたいと思ったわけだ」
「約束しましたからね。花壇で手に入ると思っていましたし」
「やっぱり花を取りに来たな」