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10.それはかつて。そして今も
――「まるで、地上の太陽だな」――
どこからその声が響いたのか、ほんの一瞬だとしても僕にはわからない時があった。
となりから伸ばされた先生の手が、子供にするみたいに花に触れる。
笑っているように花は首を振り、やがてそれはすべての薔薇に広がってゆくのだ。
花たちの声の中に、僕は懐かしい声を聞いたように思うが、それはおそらく……、僕の記憶の幻なのだろう。
僕に光を。黄色い花が笑う。時間を遡り、日々を振り返ってばかりいる僕を、君の力で次の春に。
地上の太陽。
あの冬の国で、君は僕の初めの光だったのだから。
「私には、あの輝きだ」
そうつぶやいて、先生は空に目を移した。
夕暮れに、星が浮かぶ。色を失っていく空を見上げる彼を、僕はずっと幼い頃から知っていたのだと思う。
同じ瞳で僕を見ていることも。
「フレディ」
暗黒の闇では世界を覆い尽くせはしない。常にどこかを光が照らす。
それがどのようにささやかなものであったとしても、それがある限り。
「世界は美しいよ」
はい。先生。




