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3話 そんな設定あった?

 私はまだ「夢の中」にいる。


 ジェダイド帝国クータモの港に到着した船は、積み荷を降ろしたのち、帝都レボントゥレットへ向け出港準備をしていた。


 交易船が行き交う港町クータモは、賑やかで活気に満ち溢れていた。

 私は”聖地巡礼”も兼ねて、コンラードとエスペンを連れ町へ出掛けた。


 「クータモ」とは、この国の古い時代の言葉で「月明かり」を意味する。

 15年後。私が書いた小説の中でこの町は、ヴィティによる侵略戦争と国の悪政によって荒廃する。


 土産物屋さんで、町の名前「 KUUTAMO」と記された月と帆船モチーフのマグネットを見つけた。この世界にも、観光地のようなお土産があるのだと感動。もちろん即買い。

 それから港町名物「イワシのハンバーガー」を買って船に戻り、ゲオルグも含め4人でランチ。

 ゲオルグは血相を変え「ヴィティ様!? かぶりつくなんて!」と慌て、ものすごい速さで私の膝にナプキンを広げ、お皿とナイフとフォークをセッティング。


 ゲオルグ神経質すぎ! と笑いたいところだが……


 今、私が中に入っている人物【氷の魔女ヴィティ】は、傾城傾国(けいせいけいこく)の美女。銀色に近い白髪に、シミ一つない白い肌。整った顔に赤みがかった紫色の瞳。全身細くて顔ちっちゃい。


 流石に、このビジュアルで「かぶりつく」という行為はアウトっぽい。


 仕方なくハンバーガーをお皿に移し、小さく切り分け、フォークで口に運んだ。これはこれで食べやすいかも。白いドレスにソースが付着する心配も無し。

 

 そこに、衝撃的なニュースが伝えられた。


『謎の熱病がノール諸島とフロライト王国で蔓延。幼い子供や老人などが感染し、多数の死亡を確認。只今、原因を調査中。ジェダイド王国内での感染拡大防止のため。至急、目的地をラヴィーニ海軍第二基地へ変更し、速やかに移動を開始せよ』


 謎の熱病? 

 そんな設定あった?


 ***


 ラヴィーニ海軍第二基地の地下にある船着き場に到着すると、そこは既に厳戒態勢が敷かれていた。


 船から降りると、白い隊服姿の海軍精鋭部隊『SNOW(スノー) SEALS(シールズ)』と名のる騎士3名と、財務省の関係者2名が私たちを出迎えた。『SNOW SEALS』の3名は、全員銀髪赤目。大柄で精悍な顔立ち。その中のリーダーらしき人物が、胸に右手を当て浅く敬礼すると他の2名もサッと音がするほどの勢いで、胸に手を当て同じように敬礼した。

 リーダーらしき人物が顔を上げ、私とゲオルグに視線を移した。


「ジェダイド帝国交易大臣ヴィティ様、及び皇位継承権第五位・交易省政務官主事ゲオルグ・キース殿下。ご無礼を承知で申し上げます。原因不明の熱病の感染の有無を確認するため、これより検査を行います。グレイヴス陛下の命で特別にお部屋を用意致しました。ご案内いたします。どうぞこちらへ」


 皇位継承権第五位? ゲオルグ・キース殿下!? 殿下ってことはこの国の「皇族」関係者?

 だとすれば、未来の皇帝「マキシム・キース※」の(たぶん母親違いの)ご兄弟!? 


 ということは、もしかして……これって、二次創作!? (たぶん違う)

 

 未知の設定に、原作者驚く。


 ※「マキシム・キース」とは―――15年後。監禁されていた氷の魔女ヴィティを解放。ジェダイド帝国でクーデターを起こし「すべての種族が平等に暮らせる国を目指す」という、どこかで聞いたことがあるような目標を掲げ皇帝になる人物。



「我々二人だけか?」


 普段はあまり表情を変えないゲオルグが、見るからに怪訝な態度で騎士に訊ねると、騎士はビクリと身を震わせ深く頭を下げた。


「は、はい。皇帝陛下からの特別なお計らいで……あ、あらせられますので……その……検査を……お願いしたく」


「そうか、わかった。もういい」


 ゲオルグの返事に、騎士はホッとした様子で顔を上げ、また胸に手を当て浅く敬礼した。

 社畜ぎみの普段の姿とは違う、威厳たっぷりのゲオルグ。

 おそらくヴィティは、このイケメン殿下を気に入り無理やり部下にしたのだろう。私 (ヴィティ)の部下にならなければ、もっと楽できただろうに……


 会計のコンラードは、財務省の関係者に呼ばれ船内へ戻り。エスペンは真面目な顔で騎士の一人と何やら小声で話をした後、船尾の方へ向かう姿が見えた。


「で、では、ご案内いたします」


 騎士が歩き出した。


「ヴィティ様、お、お手を」 


 ゲオルグが少々ぎこちない動作で私に左手を差し出した。

 こ、これは……"エスコート"というやつでは!? 

 嬉々とし迷わずゲオルグの手を取った。ゲオルグの手は意外に大きく骨ばっていた。


「ありがとう」


 私たちは、コンラードとエスペンを置いたまま基地内に足を踏み入れた。


 ここで私は、違和感を覚えた。

 ゲオルグの手が震えている。


 あれ、緊張してるの? 

 検査を前に緊張している子どもみたいで、ちょっとかわいいかも。と思ったが、ラヴィーニ海軍第二基地内は、外に比べて少し涼しい。もしかして、寒い? あっ私、氷の魔女だった! 私と手繋いだら寒いかも! だからといって、私から手を放すのも失礼かもしれないし……ゲオルグの表情は徐々に強張り、手の震えは次第に大きくなっていくのであった。


 ***


 私はまだ「夢の中」にいる。


お詫び:申し訳ありません。1/7「3話」を抜かして投稿しておりましたm(__)m

久しぶりすぎて……


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