25話 水タイプは、凍らせちゃえばだいたい勝てるから
「アスモデウス殿下は、私をメルヴィルの近くに降ろしたら、すぐにお逃げください。あとは、私に任せて!」
「はぁ、お前ぇひとりで危ねぇだろうが!」
「大丈夫! 水タイプは、私の絶対零度みたいな技で凍らせちゃえば、だいたい勝てるから!」
「は?」
「早く! 私を運んで!」
アスモデウス殿下の手を取り、見上げると。
「俺がお前ぇのことを、心配しねぇとでも思ってんのか?」
その優しい瞳に、不安の色を滲ませていた。
「あ、その、これは、私にしかできないことで。私がやらないとルイーズが……それに殿下まで、凍らせちゃったらって考えたら……だから、ひとりで行かせて」
「はぁーーー(深いため息)。……わかった、ほれ」
呆れ顔でアスモデウス殿下は、私を持ち上げ腕に乗せた。
「ありがとう」
「いくぞ」
アスモデウス殿下が地面を蹴って羽ばたくと、
ヒュン―――と空高く上昇し、下降しながら城の上空へ――――
あっという間にエスペンたちと合流した。
上空からは、城壁の上で暴れるメルヴィルと。そのメルヴィルの周囲に、飛び回る黒い影が見えた。
その影は、メルヴィルの攻撃をかわしては蹴り飛ばし。攪乱しては斬りつけ、メルヴィルを足止めしていた。
ジュード・……なんだっけ。(正解は、ジュード=クルーニー※)
その城壁から少し離れた塔の上には、白いネグリジェ姿で、赤い髪を振り乱し、メルヴィルに向かって必死に叫ぶルイーズの姿が。
「エスペン、お願――――と言い終わる前に、
ヒュン―――――と、エスペンはルイーズに向かって下降していった。
「うわ、なんだあいつ!?」
「あと、べリアス。もし母体と赤ちゃんの容体が危険だったら、天使界に助けを求めて。天使族の現長か、エリック・キング、もしくはサミュエル・ヒューゴ・シンベリーを連れてきて※」
「え!? は!? 赤ちゃん!?」
エスペンが、ルイーズを救助すると、
ブシャ――――――――――!!!!!
メルヴィルが、ルイーズたちへ向けて水ブレスを放った。
ルイーズを抱きかかえたエスペンは、弧を描きながらブレスを回避し、私たちの傍を飛びぬけて行った。
「べリアス、行くぞ!」
「うわ、速っ!」
その時、
「(涙声)ヴィー、メルヴィルが」
ルイーズの悲痛な叫びが耳に届いた。
「ルイーズ!」
水ブレスを回避した三人は、無事丘に降り立ち、青い魔方陣の中へ消えていった。
ギュァアアアアアアアアア!!!!!
ブシャ――――――――――!!!!!
メルヴィルは怒り狂い、城壁から落下した。
それでもメルヴィルは、水ブレスを連発しながら陸を這ってこちらに向かってきた。
ブシャ――――ブシャ――――ブシャ――――――!!!!!
メルヴィルの竜化した身体は、陸上では呼吸するのもつらいはずなのに。
水ブレス自体も、自殺行為。
しかもそれを、ルイーズに向けさせるなんて……。
「殿下、ここで降ろして」
「気を付けろ!」
「うん」
カース城の南に架かる橋の前に、降り立った。
奇しくもここは、私が書いた小説内で、ルイ―ズが非業の死を遂げた場所だった。
「今、終わらせる『絶対零度―――――
氷結!」
次回、来週水曜日頃更新。
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登場人物の紹介
※ジュード・クルーニー。悪魔族・隻眼(黒い眼帯)・ねっとりした感じの黒髪ロン毛・細身。小説内では、主人公ルーシーの剣術指導を担当。
※天使族の長。エリック・キング。サミュエル・ヒューゴ・シンベリーとは、小説中に登場する治癒能力者。ただし、治癒能力者自身の傷は、自分で癒すことができない。




