流星のアイドル
※注意 こちらは完結済みの連載小説「∞ガールズ!」の後日談として、主人公、美滝百合葉の誕生日記念に書いたものです。ぜひ、本編を先にお読みください。
高校2年の春、美滝百合葉は生徒会長に立候補した。
トップアイドルが生徒会長は、さすがに忙しすぎて無理では?との声も上がったけど、
「大丈夫。私、体力には自信あるから。何とかなるなる!」
そして、本当に何とかなった。
立候補した理由の一番は、もちろん、色んなものをくれた、学園への恩返し。
星花の広告塔として、メディアにも多数露出。
「貴女も星花で、個性の花を咲かせよう!」のCM効果もあり、受験の志願者数は過去最高を記録。
恩返しは、出来たと思う。
そして、生徒会長として、今まで以上に皆と関わる中で。
百合葉が感じたものは……。
「進路、もう決めた?」
生徒会も引き継ぎ、卒業が近づいてきた、ある日の夕方。
教室で、美綺が聞いてくる。
「うん。私、星花大には、行かない」
それどころか、大学自体行かない。
「美綺ぽんはMIT(マサチューセッツ工科大学)でしょ? 私だけ日本に残されたら、寂しくて泣いちゃうぞ?」
ちょっと茶化してみるけど、美綺の真剣な瞳に、背筋を伸ばして微笑む。
「私もね、日本を出る」
「アイドル、やめるのかい?」
驚く美綺へ、首を横に振る。
「まさか。約束したでしょう? 美綺ぽんは宇宙飛行士になって、私を宇宙に連れてってくれるって。そして私は、世界初の、宇宙からライブするアイドルになるの」
椅子から腰を上げ、胸を張ってどや顔。
「ふふん。私も美綺ぽんに負けてられないし。世界一のアイドルになってやろうって、思ったわけ」
そして。「ゆりりん、国内での活動を休止」の報は、日本中を騒がせたけど。
すぐに、Yuri-rinの名が、世界中を騒がせることになる!
ワールドツアー? ちょっと違う。
マイク一本をリュックに入れて。今日はこの路上で。明日はあの街角で。
世界中を、歩いて旅した。世界中の街角で、歌った。
山を越えて、砂漠を越えて、海を渡り、国境も超え、地球の裏側まで!
世界を旅する、スーパーアイドル。
こうなれば、今や動画の時代。24時間、世界のどこからでも、美滝百合葉の路上ライブに参加できる。
もちろん、学業とアイドル活動の両立を助けてくれた、理事長の為にも、天寿製品のアピールだって欠かさない。
「そう。この丸い地球が、私の舞台!」
いくつもの伝説を作った。
ある時は紛争地帯に「私の歌を聞けーっ!」と殴り込み。
100年以上続いた対立を終わらせてみたり。
ある時はアマゾン探検隊について行って、密林の奥地で文明社会と関わることの無かった新発見の民族と、肩を組んで歌ってみたり。
動画では最初「現地の皆さん、困惑してて草。むしろ密林」とかのコメントが溢れかえってたけど、いつも通りノリと勢いで押し切って、最後はアイドルソングを大合唱したぞ!
「日本のアイドル」から「世界の歌姫」へ。
百合葉は、世界の隅々まで歌声を届けるべく、今日も駆け巡る。
天翔ける、流星のように。
どこまでもスケール大きく、∞の夢を目指す百合葉の名を、世界の誰もが、心に刻むまで。
そして、また数年が経った。
年末、大みそか恒例の国民的歌番組。
百合葉が世界を旅している間も、国内トップの人気を守ってくれた仲間たち……「misericorde」が、今年の紅組大トリだ。
そして、全国の視聴者にも、その瞬間まで内緒のサプライズ。
そう、美滝百合葉の日本凱旋である!
「皆ー! 一日早い、お年玉だよ☆」
瞬間最大視聴率99%の、歴史的瞬間。
「わぁぁぁん、寂しかったんだかんなー!?」
「わ。みおにゃってば見た目、ちっとも変わってない。可愛い……♡」
泣いてる美緒奈の赤毛ツインテール頭を撫でてあげてると、後ろから詩織が抱き付いてくる。
「にひひ。ゆりりんの方は、何だか、色々大きくなった気がする」
「そう? ……ふふん、そうかもね」
背丈とか、胸とかだけでなく。たぶん、一番大きくなったのは。
中身。心、魂……そういったモノのスケールが規格外になったと。
今の百合葉なら、胸を張って、宣言できる。
私が、世界一のアイドルだと。
「すごいね、百合葉は」
番組出演の直前。NASAで宇宙飛行士の訓練中の、美綺と通話した。
「ありがと。でもね、美綺ぽんは、分かってるでしょう?」
百合葉ががんばれるのは。百合葉が、まっすぐ世界一を目指せるのは。
2人の夢のためだから。
「美綺ぽんこそ、もうすぐ最終試験なんでしょ? すっごく話題だよ、『天才少女、宇宙飛行士になる!』って」
「ああ、必ずなるよ」
ここで謙遜なんかしない。だってこれは、百合葉と美綺の譲れない誓いで、「確定した未来」なんだから。
「こうなると、宇宙ライブの計画も、前倒しできそうだね。百合葉、3年後、いけるかい?」
「もっちろん。私を誰だと思ってるの?」
不敵に笑い合う2人。夢はさらに広がる。
「3年後に宇宙ライブなら、次の夢も考えなくちゃね。どうせなら、月まで行っちゃおうか!」
朗らかに笑う百合葉に、美綺はしばらく真剣に考えて、ぽつりと、
「……いっそ火星?」
「マジか」
夢は広がる!
そして、ライブに戻って。百合葉は、星間兵器にも例えられた超音量の歌声を、星々の向こうまで届けと、解き放つ。
師走の夜空を切り裂いて、遠くへ。どこまでも遠くへ。
美綺と2人。2人で見た夢が、いつか世界中を巻き込んで、もっともっと広がっていく。
星の瞳のアイドルと、至高の頭脳の天才少女。
可能性の具現。∞ガールズは、今日も、明日も、星へ手を伸ばし続ける。